九州最大級の演劇専用劇場「博多座」(福岡市博多区)の公式 Twitterアカウントが公開した動画が注目を集めています。客席で前のめりになると、後ろの席の人の視界をどれくらいふさぐのか検証したもの。背もたれにもたれたときと、前のめりになったときの2つのパターンを比較。前列の人が前のめりになると、前の人の後頭部しか見えなくなり、ステージ上の「推し」の存在が消えるという衝撃の結果が明らかになりました。
博多座の宣伝担当者によると、観客からの苦情は「公演期間中はほぼ毎日あります」。前のめりは視界をさえぎることを知らない人が意外と多いーーと感じた同劇場が周知のために動画を作成。Twitterに投稿したところ、約半日で4万超のいいねがつき、「こんなに違うのか」「これ!」「よく分かる」「これで絶望したことがあります」「どの劇場でも」「映画館でもそう」などの声が上がり、拡散は今も続いています。
九州出身の橋本環奈さんと上白石萌音さんのためにも
博多座の宣伝担当者に話を聞きました。
──なぜ動画を作成。
「案内係の日報に、毎日のように『前のめりで見えにくいので注意してほしい』というお客様の声が上がっています。アナウンスや開演前の声掛けもしていますが、なかなかなくならないのが現状で、劇場としてもずっと気にしていたことです。いつか動画をあげようと思っていました」
「5月1日からの舞台『千と千尋の神隠し』は、初めて博多座でご観劇の方も多くて、しかも満席公演です。いつにも増して前のめりの方が多くなることが予想されます。特にお子様が、おそらく博多座始まって以来の数になるので、楽しみにしている親子のお客様をがっかりさせたくないので、このタイミングになりました」
「映画が2001年公開なので、ファンの方からすれば20年越しの熱い思いを持って劇場にいらっしゃいます。しかも主演の橋本環奈さんは福岡県、上白石萌音さんは鹿児島県のご出身。九州の劇場としてもできる限りのことをしたいと思いました」
── Twitterの反響が大きいです。
「『知らなった』『私もそうなっていたかも』という声があったので、動画の意味があったと思ってうれしいです。劇場特有の課題だと思っていましたが、コメントを見ているとバスケやサッカーのスタジアムでも同じようなことが起こっているようです」
「前のめりをされている方はわざとやっているわけではなく、知っているか知らないかだけで、お客様一人一人が劇場の一体感をつくる大切な仲間です。あまり細かくマナー警察のようになると演劇に興味を持ってくれた人が、逆に離れてしまうことになりかねません。でも演劇をずっと支えてくれている昔からのファンの方にも満足していただきたい。私も腰痛持ちなので分かりますが、2〜3時間背中をつけてじっとしているのはとても疲れます。個人個人で事情がある方もいらっしゃいます。どういったお願いの仕方がいいのか、バランスはこれからも考えないといけないと思っています」
「この動画を見て、着席で楽しむエンターテインメントではこういうことが起こりえると少しでも知ってくれたらうれしいです。そして演劇に興味を持っていただき、もっと言えば、博多座で見てみたいというお客様が増えればうれしいです」
博多座は動画をこんな言葉で結んでいます。
「『心の前のめり』は大歓迎。博多座」