助けたつもりが…助けてもらっていたのは私たち 猫が原因不明の病になって気づいた「当たり前」という「幸せ」

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

原因不明の浮腫み(むくみ)に苦しめられている猫がいます。神奈川県に住むK家のモモ太くん5歳です。4月上旬からどんどん浮腫み始め、4月下旬になるとご飯も食べられなくなってしまいました。動物病院で様々な検査をしたものの、原因は分かりません。利尿剤を打つことで徐々に浮腫みは取れてきましたが、食欲は落ちたまま。そのため、K家のお祖父ちゃんお祖母ちゃんは毎日朝晩1回ずつ、モモ太くんを動物病院へ連れていっています。

当たり前の日常が崩れ、K家の人たちは気付いたことがあります。それは「モモ太くんからたくさんの元気をもらっていた」ということ。当初、家族は行き場のなかったモモ太くんを助けたつもりでいました。でも、逆に助けてもらっていたのは家族だったのです。

モモ太くんがK家に迎えられたのは、今から5年前の2017年。めったに来ないお母さんの弟がふらりとやってきて、生後約半年のモモ太くんを置いていったのです。なんでも、弟の友達がもう飼えなくなったとのこと。動物病院で発行された手帳もありました。

そんなことを突然言われたK家は困惑します。すでに家には、ジジちゃんとミクちゃんという高齢猫たちがいたからです。優しいジジちゃんは受け入れてくれるかも知れませんが、ミクちゃんは気難しい性格。波乱の予感がします。

さてどうしたものか…。結論を出す前に、まずはモモ太くんをキャリーバッグから出してやろうということになりました。子猫なので初めての場所を怖がるかと予想されていましたが、お父さんのお膝に一直線!まるで彗星です。

「今日からボクはここで暮らすんでしょ?」

そんなことをお父さんに聞いているかのよう。これでお父さんは陥落。お次はお祖父ちゃんに突進し、スリスリゴロゴロ。こんなことをされたら猫に興味がなかったお祖父ちゃんも、メロメロにならざるを得ません。

男性陣2人を落としたモモ太くんは、晴れてK家の一員に。名前はお父さんが新しくつけてくれました。お父さんの誕生日が3月3日桃の節句なので、それにちなんで「モモ太」です。

とても人懐っこく元気いっぱいのモモ太くんは、一気に家族のアイドルになりました。心配された先住猫たちとの相性は、ジジちゃんとはほどほど。ジジちゃんが嫌だなと感じた時だけ小さく「シャー!」と怒る以外は、モモ太くんを受け入れてくれます。

一方、ミクちゃんとは犬猿の仲。モモ太くんがそばを通るたびに猫パンチが飛びます。それをモモ太くんは構ってくれたと勘違いしじゃれつくと、更に強烈な猫パンチ。最終的には取っ組み合いの喧嘩になっていました。でも、普段寝てばかりいたミクちゃんには良い運動だったようで、落ちていた食欲も戻りました。怪我の功名かな?

モモ太くんが迎えられ約3年後の2020年6月5日、ジジちゃんは悪性腫瘍で虹の橋のたもとへ旅立ちます。16歳でした。16年も一緒に暮らした家族は、悲しみのどん底へ。ミクちゃんも相棒がいなくなったせいか、元気がありません。そんな時、家族に寄り添ってくれたのはモモ太くんです。

「ボクいるから元気だして」

そう言ってくれているかのよう。今まで以上に家族へ笑顔を見せ、仲が悪かったミクちゃんとも肩を寄せ合いました。このおかげで、家族は悲しみの淵から立ち直ったのです。

そのモモ太くんが原因不明の病に倒れ、再びK家から笑顔が消えつつあります。すると今度は、ミクちゃんが立ち上がりました。もう18歳で自分も腎臓病を患い、病院通いが欠かせないミクちゃん。食も細くなっています。それなのに、今まで以上に甘えたり好き嫌いなくご飯を食べたり、これまでにないほどお利口さんです。寝込むモモ太くんのそばで寝ることも増えました。

それはあたかも「わたしがいるから元気をだして」と言っているかのよう。この様子に家族は沈んでばかりはいられないと思い直し、モモ太くんとミクちゃんのために前を向くことにしたのです。

5月からモモ太くんは、高度医療センターへ通院することになります。お父さんお母さんの仕事が休みの土日に診察してもらえる病院で、詳しい検査も可能です。もちろん金銭的負担や拘束時間は、今まで以上になるでしょう。なにより、モモ太くんも検査による身体的負担が大きくなるはずです。

しかし、立ち止まってはいられません。当たり前の日常を取り戻したい、その一心でK家は前進していきます。

どうか、この家族とモモ太くんに「当たり前」という「幸せ」が再び訪れますように。

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