「猫に感情などない!」とまで言っていたお父さんが、ある日一変!? そらくんを猫かわいがりするまで

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

猫や犬は法律上、物扱いです。これもあってか、猫や犬には感情がないと考えている人も残念ながら世の中には少なからず存在します。感情がないから、何をしたって構わないと。この考えが、動物虐待につながっているのではないでしょうか。

福岡県のK家のお父さんも、猫や犬には感情なんてないと考える一人でした。ですから、今から約20年前に中学生の息子が公園で目が開いていない子猫を拾ってきた時には大激怒。捨ててくるように命じます。その場はお母さんがとりなし、子猫はK家で一緒に暮らすことに。

この子猫は「そら」と名付けられ、お父さん以外のK家の人たちに可愛がられ大きくなりました。お父さんはというと、「毛が落ちているぞ!」「猫砂がこんなところまで飛んできている!」とネチネチ。まるで小姑です。お母さんは、そらくんや、そらくんを可愛がっている娘と息子のために掃除を頑張りました。

こんな状態が1年ほど続いたある日のこと。お父さんは真っ赤な顔で仕事から帰ってきました。足元もおぼつかずフラフラです。熱を測ると、なんと38度もあるではありませんか。この日は早めに床に就きました。

次の日も熱は下がらず、仕事を休むことに。病院のあとは、家で休むだけ。いつもは賑やかな家ですが、平日の午前中はシーンと静まり返っています。子供たちは学校、妻は仕事で、家の中にいるのは熱にうなされているお父さんと猫のそらくんだけ。お父さんはいつも通り、そらくんを無視して布団で横になっていました。

普段は亭主関白で、子供たちにも厳しいお父さん。いつも通り強気でいたいと思ったものの、この時ばかりは心細くなったそう。苦しい時に一人きりだなんて…。

そう思った時、そらくんがお父さんの布団に入ってきたではありませんか。お父さんはびっくり。慌てて外に出そうとしましたが、体が動きません。仕方がないので、そのままでいました。

初めて猫とくっついて寝たお父さん、こんな穏やかな気持ちになったのは久しぶりだったのだそう。温かく柔らかな生き物がそばにいるだけで、こんなにも優しい気持ちになれるだなんて。

この日からお父さんは変わりました。自分がつらい時に寄り添ってくれたそらくんを可愛がり始めたのです。酔っぱらって帰ってきた時なんか、「そらー、そらー」と名前を呼びながら部屋の中に入ってきていたんですよ。

そして、そらくんに言うんですって。「あの時はありがとうな」と。

お父さんは笑顔が増え、家族にも優しくなりました。めでたしめでたしのように思えますが、お母さんが言うには、そらくんは心配して寄り添ったのではないと。あの時、お父さんの体温はずいぶんと高かったので、そらくんは暖をとっていただけじゃないか。

どうでしょう?真相はそらくんに聞いてみないと分かりませんね。

でも、もうそらくんに確かめることはできません。2015年2月、腎臓病で虹の橋のたもとに旅立ちました。13歳でした。お母さんは仕事を休んで付きっきりで看病しましたが、力及ばず。そらくんはお父さんが帰ってくるまで頑張って、お父さんの顔を見た直後に息を引き取ったといいます。

思えば、そらくんはK家にたくさんのものをくれました。お父さんの笑顔もそうですし、それまで保護猫に興味がなかったお母さんに保護猫活動を始めるきかっけをつくってくれたのです。

お母さんは今では保護猫団体「ライフリレー博多ねこ」の代表で、今まで新しい家に送り届けた猫は300匹以上。そらくんがいなければ、この300匹の猫たちは路頭に迷ったままだったかもしれません。

ひとつの出会いで大きく変わることがある。これを知れたことが、そらくんがもたらしてくれた最も大きなことです。ありがとう、そらくん。

ふと見上げると、青い”空”がK家の人達の頭上に広がっていました。

▽ライフリレー博多ねこ
http://hakataneko22.g2.xrea.com/

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