20年愛された犬が表紙から消えた?受験生に愛される「英単語ターゲット」 旺文社に聞いた

門倉 早希 門倉 早希

英単語帳の「ターゲット」ってご存じですか、表紙に犬が描かれていて、青い表紙でなかのページを折って使う、あの参考書。ツイッターに「おれよりターゲットの方が垢抜けてて鬱」と、ぱらぱら丸さん(@para_maru0507)が掲載したツイートが話題です。どうやら同書の表紙が刷新されたようで、おしゃれで今風な「エモい」イラストに。もはや犬ですらない。

ターゲットといえば、昨年も「表紙の犬がドヤ顔になった」として話題を呼びました。「ドヤ顔」改定からあまり日数が経っていませんが、なぜ表紙が変わったんでしょうか。ツイッターでは「犬解雇されてて草」「絶対犬の方がいいじゃん」「こっちがよかった」「すげぇエモい表紙になってるやん」など意見が飛び交っています。すでに大学受験を終えた20歳のぱらぱら丸さんと、「英単語ターゲット」シリーズを出版する旺文社に話を聞きました。

ーーツイートの経緯を教えてください。

「ターゲットほど有名な参考書でも、より沢山の受験生に使ってもらうための工夫は惜しまず変わり続けているということに単純に驚きました。大学受験を終えた今では『カバーなんてどうでもよくて、結局内容と個人の努力が全てでしょ』と思ってしまいますが、当時の自分を思い出してみると確かにオシャレなカバーに身を包まれた参考書は大変魅力的に映ったことと思います」

ーー確かに「こっちがよかった」という声もありましたね。ぱらぱら丸さんもターゲットを使っていましたか?

「受験で主に使っていたのは他の単語帳でしたが、ターゲットも学校の教材として定期テストの勉強などでよく使いました。クラスでは、犬を嫌がりカバーを裏返して使っている人もいれば、頑なにそのままの状態で使っている人、カバーは外して使っている人など様々でした。大学生になった今でもターゲットは思い出の一つとして自室に置いてあります」

ーー反響が大きかったですが、今のお気持ちはいかがですか?

「書店で見かけたのを何の気なしに呟いたつもりだったので、このような事となって少し驚いています。頂いた反応は本当に様々で、基本的にはこれから受験を迎えられる高校生の方々はスタイリッシュになった今回のものに好感をお持ちで、既に受験を終えられた大学生や大人の方々は例の犬じゃなくなったことに悲しんでいらっしゃるといった印象です。

何にせよ賛否両論ある時点で十分話題にはなっており、多少なりともこの参考書の広報に貢献してしまったという意味では自分もまたターゲットの『犬』なのかも知れません。受験生のみなさん、ご自分の選んだ参考書を信じて最後まで頑張ってみてください!」

やはり「ターゲット」といえば犬。トレードマークの犬は本当に引退したのか、「英単語ターゲット1900」を出版する旺文社さんに聞きました。

流行りの「エモい」絵だからカバーに?

ーー「ターゲット」の歴史を教えてください。

「『英単語ターゲット1900』は1984年に初版発行となり、表紙に犬が登場したのは約20年前に刊行された3 訂版からです」

ーーなぜ犬から変わったんでしょうか。

「ツイッターで話題となったデザインは、 数量限定で刊行している特別カバーデザイン版です。 お馴染みの『犬』のデザインも引き続き刊行しています」

ーー犬は引退してなかった!特別カバーデザインとは?

「特別カバーデザイン版は、 社内の企画コンテストで、若手社員(当時)の『犬のデザインではない『英単語ターゲット 1900』があってもいいよね!』というアイデアがきっかけで2012年から始まりました。これまでに『COOL』&『SWEET』、『EARTH』『MOON』などのコンセプトによるデザインで刊行してきました。

2022年度はシリーズ初の公募デザイン『Believe』&『Dream』として刊行しました。 2021年に旺文社の創業90周年を記念した特別企画『学びを変える!未来の『学参』企画大賞』の〈『英単語ターゲット』表紙デザイン大賞 〉における大賞受賞作品となります」

ーー「Believe」&「Dream」の表紙は「エモい」と話題のようです。

「弊社では、『学ぶ人は、変えてゆく人だ。』をブランドスローガンに掲げて、この先もずっと、学ぶ人を応援し続けるとともに、私たち自身も学び続け、変わり続けなくてはならないと考えています。そこで、旺文社創業90周年を記念した特別企画『学びを変える!未来の『学参』企画大賞』にて、『英単語ターゲット』の表紙デザインを公募するという新しいチャレンジに取り組みました。

『Believe』&『Dream』は、『エモい』絵だから大賞を受賞したのではなく、
・自分を信じて、夢に向かってがんばる高校生を応援する気持ちを込めたメッセージ性
・縦向きの書籍にイラストを横向きに配置するという冒険心に富んだカバーデザイン
とコンセプトが優れており、ブランドスローガンにも合致していると高く評価されて大賞を受賞。2022年度の特別カバーデザイン版に採用されました。

大賞を受賞された鴻谷ユキさんのコメントも、ぜひ読んでいただきたいです。
『イラストの主人公たちは、大学受験を経て1人暮らしをしている想定です。学生の皆さんは、受験勉強の苦労の先に自分が望む未来が待っていることを信じて突き進んでほしいと思い、エールの気持ちを込めて描きました。また、最近はスマホで動画等を見ることに慣れている若者も多いため、あえて横向きで描き、彼らの髪型や見た目も、世間の目を気にせず、自分らしい姿でいてほしいという思いを込めました(まいどなニュース編集部で一部抜粋)」

ーー発売後、「Believe」&「Dream」の反響はいかがですか。

「社内では、縦向きの書籍にイラストを横向きに配置するデザインは学習参考書には珍しく、おそらく弊社でははじめての試みだったため『新鮮』『今までの特別カバーデザイン版とずいぶん違うね』などの反響がありました。書店員さんからも表紙に描かれた人物像を深堀りして考察するようなご意見を色々と頂戴したりと、『あれ?なんだか反応が違うな?』と思っていました」

ーーツイッターでも7万いいねがついていました。

「実際に書店店頭で並び始めた直後から、例年以上にSNS 上での反応があるのは気づいておりました。今年の特別カバーデザイン版が話題になり、受け入れられていることをありがたく感じつつ、一方で『英単語ターゲット』シリーズは、やはり『犬の単語集』として覚えていただいていると、改めて実感いたしました。実は2020年1月に刊行した『英単語ターゲット1900 6訂版』の企画段階では、他の動物案も出てきたりしました。ですが、『犬の単語集』として広く長く認知されていると判断して、犬を継続して表紙に起用したという経緯があります」

ーー他の動物にならなくてうれしいです。ユーザーの方へメッセージがあればお願いします。

「▼営業部より
一般的に、本は新刊で出た時が1番売れて、そこから販売部数は右肩下がりになります。しかし、『英単語ターゲット』シリーズは改訂するたびに、そして年を経るほどに販売部数を伸ばし続けています。先輩から後輩へ、先生から生徒へと、信頼できる大学受験参考書として長らくご利用・ご推薦いただいていることが理由だと考えています。今、『英単語ターゲット』を使っている生徒さんが、将来、後輩に・生徒に、あるいはお子さんにも『やっぱり犬の単語集だよね』『実は犬じゃない限定デザインを使っていたんだよ』とオススメし続けていただけるよう、良い参考書を作り続けていければと思います。

▼編集部より
単語学習が苦手、なかなか続けられないという受験生の方は多いかと思います。『英単語ターゲット』シリーズは『でる順』『でる意味』『一語一義』といった学習の効率性とアプリ『ターゲットの友』や充実した音声などの様々な学習ツールを提供することよって、なるべく学習が楽しく、また単語が覚えやすくなるように作られた単語集です。ぜひこの1冊をとことん使い倒して、希望する大学の合格を掴んでいただければと思います」

ーーありがとうございました。

◇ ◇

「英単語ターゲット」の表紙に犬が起用されている理由ですが、旺文社内でも諸説あるそうです。「犬には標的(=ターゲット)を忠実に追いかけるイメージがあるから」「好きな動物として、犬の人気が高かったから」「種類や毛色が豊富で、ペーパークラフトに向いているから」…などなど。

ほかにも、犬の選定基準については、
■これまで使用していない犬種を選ぶ
■書籍レベルに応じて大型犬/中型犬/小型犬を選び、シリーズ全体のバランスを見て選ぶ
と、旺文社の広報さん。
豆知識として、「『英単語ターゲット1400 5 訂版』の犬種がシェットランドシープドッグなんですが、犬種が決まったエピソードとしまして、営業部の担当者が森博嗣さんの小説のファンで、小説内に登場する犬種かつ上記の選定基準も満たしていたので強く推した結果、シェットランドシープドックが採用されました」と決定秘話も教えてくれました。

また、書店では「Believe」&「Dream」デザインのターゲットが売っているほか、「旺文社学びストア」では特別カバーデザイン版で好評だった2020年度の「EARTH」&「MOON」デザインが限定販売中。もちろん、犬が表紙の「ターゲット」も売ってますよ。

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