「おいしかった。一度も残したことなかったよ」お弁当最後の日、息子から母へ手紙 9年間の物語に16万人が涙

竹内 章 竹内 章

始まりがあれば終わりがあります。わが子へのお弁当づくりもそうかもしれません。お弁当に長男の成長や独立を重ね合わせたTwitterユーザーの空気(@kosodate_1ban)さんの投稿が16万近いいいねを集めています。慌ただしい朝が少し楽になることへの安堵、子育てが完全に終わった寂しさ、そして所帯を構えた息子さんへの祝福。もう使うことのないお弁当箱が物語る万感の思いに、お弁当を作った人、作ってもらった人、共感が止まりません。かくも母の愛は…。「最後のお弁当」について話を聞きました。

「長男高3弁当最終日、もう作る事ないんだと涙。が、社会人初日前日「明日弁当!」なんだよ、まだ続くんかいっ!涙返せ!期限もないし、永遠に作るのかな…なんて思ってたが。最終日は案外早くやってきた。結婚のため家を出る。今日出勤して、帰る所はお嫁さんと住む家。使い捨て弁当箱に25年の愛を込めて…」

空気さんと長男さんのお弁当物語が凝縮されたツイートに16万人が涙しました。

「うちは4年前に学校から帰ってきた息子から花束を貰いました。『6年間毎日弁当ありがとうございました』と…その日が最後のお弁当の日だと花束を貰ってから知りました。嬉しくて寂しくて号泣しました。ご結婚までのお弁当、お疲れ様でした」
「まだ子どもは0歳と2歳ですが、将来想像して泣いてしまいました 幼稚園とか小学校とかお弁当作りやだな…と思っていたけど頑張れる気がします!」
「子供の成長は嬉しいけど、そんな日が来るんですね」

と子育て中の人、子育てを終えた人がコメントしています。空気さんに話を聞きました。

ー投稿に温かいものがこみ上げました

「長男にとってわが家での最後の晩ご飯の日、リクエストに応えて大量のから揚げを作りました。ちょっと余ってしまったので、高校の遠足の際に買った使い捨て弁当箱が残っていたこともあり、『せっかくだから持ってく?』と。いつもは少しずついろんなおかずをを入れていますが、水気が出ないように、手作り唐揚げとブロッコリーとおにぎりを入れました。大好きなから揚げ尽くしでうれしそうでした」

ーお母さんの最後のお弁当に息子さんは…

「いつも通りでした。この日は昼からの出勤だったのですが、新居に持っていく荷物があったので、慌ただしくしていました。『最後のお茶飲んでるところ』『最後の昼ご飯食べてるところ』と私が何枚か写真撮ってるうちに遅れそうになってしまい、『いろいろありがとーな』とにこやかに手を振って出勤していきました。家を出るシーンを撮影したかったのですが、『電車に遅れるから』と大慌てで行ってしまいました。撮影できなかったことが少し心残りです」

ー照れもあったんでしょうね

「夫と私宛にミニレター、次男にはお小遣いとミニレターが置いてあることに、しばらくしてから気が付きました。夫には『いつも僕の買い物や病院のために車で送迎してくれてありがとう』、私には『いつもお弁当作ってくれてありがとう。おいしかったよ。一度も残したことなかったよ』、次男には『これからはお前が俺の代わりに父と母の面倒みるんやで』といったことが書かれてました」

 ー……お話を聞いているこちらが泣きそうです

「長男は素直で温厚です。子どもの頃から大声を出したり怒鳴ったことがありませんでした。料理は苦手だけど、掃除、洗濯、アイロン掛けなどは全部やってました。卵焼きが嫌いで、辛うじて食べられるゆで卵を毎日入れてました。野菜も苦手で高校生の頃はおひたしやブロッコリーも嫌がってましたが、毎日少しずつ入れて慣れさせました。社会人になってからは健康に気をつかうようになり、好き嫌いもなくなりました。よくリクエストされたのは、牛肉の吉野煮、ハンバーグ、サバのみぞれ煮、鮭の塩焼き、ポテトサラダです」

 ーそんなお弁当づくりが9年間

「社会人になっても作り続けたのは、長男が家に6万円を入れてくれることもありますが、勤務時間が不規則だったことがあります。作ったお弁当も昼食用だったり、夕食用だったり。息子が始発出勤の際は4時に起きていました。もちろん息子は前夜に『明日は弁当いいで』と言ってくれましたが、起きて作ってました」

9年間のお弁当に込めたものについて、空気さんは「ささやかなお弁当を通して息子たちに温かい心が育てばいいな、と思ってました。親バカですが、温かい心は育ってくれたと感じてます。私の夫がそうだったように、息子もその温かい心でお嫁さんを大切にしてくれると信じてます」と話します。

2021年12月初めのこと。たいていの家事はしても料理だけは避けていた長男さんが突然、「料理教えて」と言い出しました。「将来、一人暮らしの時、コンビニ弁当ばかりじゃ栄養偏るし」と、簡単にできる料理を空気さんから教わり、熱心にメモを取っていました。「どうしたんだろ、急に」と不思議に思っていると、クリスマスを前に、家族に結婚の決意を報告してくれたそうです。

「今思えば、結婚後は料理もしなければと、大慌てで準備したんだろうなと思います。わが家の料理が少しは役立ってたらいいなあと思ってます」

長男さん、末永くお幸せに。そして空気さん、9年間のお弁当づくり、お疲れさまでした。

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