新型コロナウイルス禍の影響で苦境に立たされている神戸のライブハウスが、「密閉、密集、密接がダメなら屋外だ!」とばかりに、自然の中で存分に音楽が楽しめるキャンプ場をつくろうと動き始めた。目指すのは、バンドが音楽練習に励んだり、フェス形式のイベントを企画したりできる、かつてないアウトドア音楽施設。神戸を代表するライブハウスのひとつ「神戸VARIT.」代表にして、企画の首謀者である南出渉さんに聞いた。
ライブ・エンタメ業界は今もコロナ禍によるダメージが深刻だ。神戸VARIT.も稼働率が低下する中でも収容人数を50%以下に制限するなどの感染症対策を続けており、売り上げはコロナ禍前の30%程度と低迷。「壊滅的な打撃を受けており、非常に厳しい状況」(南出さん)が常態化している。現在は、新たに立ち上げた映像配信部門の仕事と、国や県、市からの助成金、補助金などで赤字を補填しながら「なんとか持ち堪えている状態」という。
先が見えない日々に、「このまま元通りになるのを期待するばかりではなく、ライブハウスを窓口とした新規事業を展開できないだろうか」と考え方をがらりと変え、思いついたのがアウトドア音楽施設。音楽とアウトドアの相性の良さ・親和性の高さを誰でも享受できる場所、仕組みをつくることで、ライブハウス経営とは全く異なったサービスを提供できる可能性に気づいたという。
フェスもできる!? コンテナハウスの練習スタジオ
アウトドア音楽施設「BEATCAMP(ビートキャンプ)」は、京丹後森林公園スイス村(京都府京丹後市)の旧スキー場ゲレンデエリアにある平地部分(50m×35m)に構築。ここに、輸送用コンテナをベースとした練習スタジオ2棟と、ドリンクカウンターとDJブースを備えた管理棟1棟を設置する計画だ。
練習スタジオにはバンド練習機材と設備を導入。前面は開口できるため、大自然の中で開放的な気分を味わいながら音楽練習を楽しめる。また開口部分に備えたウッドデッキをステージとして使えば、2ステージ制の音楽フェス(おおむね200人規模)も開催可能。周囲に民家はなく、好きなだけ音を鳴らすことができる。
「コロナ禍の新たなエンタテインメントとして、アウトドア、特にキャンプ人気はすごいですよね。僕自身、コロナ禍で初めてキャンプに行ったのですが、その楽しさに今さら衝撃を受けました(笑)。でも音楽をいつでも自由に奏でられるキャンプ場って少ないんですよ。ならば、音響や照明などのライブハウス的インフラを整えたキャンプ場をつくってみようというのが企画の発端です」(南出さん)
プロアマ問わず場を提供「音楽好きの天国に」
BEATCAMPは、プロのミュージシャンだけでなく、アマチュアやインディーズ、学生の軽音楽団体にも使ってもらいたいと南出さんは言う。特に神戸VARIT.で毎年ステージに立ってきた地元の大学生たちは、コロナ禍の影響で思うようにライブができていない。「そんな人たちが自然の中で心置きなく練習し、仲間と思い出をつくり、フェス企画を楽しめる施設にしていきたいと思っています」
2022年5月末に大学の軽音団体による合同フェスをプレイベントとして、6月のグランドオープンを目指す。利用料は、スタジオ1棟貸切が平日(11時から20時)5万円、施設全部貸切が15万円などを想定(変更の可能性あり)。キャンプ用品、別音響システムのレンタルも用意する。当面はデイキャンプ利用のみで運営。宿泊施設は森林公園スイス村にある(要相談)。
南出さんは「快く歓迎してくださった京丹後の皆さんにも感謝したい」と笑顔を見せつつ、「これからは中(ライブハウス)と外(アウトドア音楽施設)の両輪でやっていきます。音楽を楽しみたい人たちにとっての“天国”となるよう、アイデアを膨らませて実現していければ」と熱く語る。
プレイベントとなる大学軽音合同フェスの開催費用や、施設をつくるために必要な資金を募るクラウドファンディングも実施中。4月27日まで。
【クラウドファンディング】https://camp-fire.jp/projects/view/501420
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