保護した子猫は、難病だった!? 動くだけで骨折…投薬から1年、ついに歩いた!

渡辺 晴子 渡辺 晴子

少し動くだけで骨が折れてしまうという原因不明の病を抱えた元保護猫チャッピーくん。2月で1歳9カ月になりました。2020年10月、大学病院での検査結果で人間でいう難病の「骨形成不全症(こつけいせいふぜんしょう)」と症状が似ていると言われてから1年が経過。これまで人間用の骨粗しょう症の薬(ビスホスホネート製剤)を飲み続けたところ、今では少しずつ骨折の頻度も減り、歩くこともできるようになったといいます。

ただ、その薬の効果なのかどうかは担当医も断定はできないそうです。そんなチャッピーくんに寄り添い看病してきた飼い主の「ならまる~骨形成不全症のチャッピーの記録~」(@NyanNekoneko2)さんにこれまでの闘病生活や歩けるようになったときのことなどお話を伺いました。

骨折が減ったのは、骨粗しょう症の薬の効果か・・・成長過程で骨が強くなった?

――2020年10月、「骨形成不全症(こつけいせいふぜんしょう)」と症状が似ていると言われたチャッピーくん。今では歩けるようにもなったとのこと。現在の病状や治療法などをお聞かせください

「骨折の頻度は確実に減り折れ方も全く変わりました。うちに来た半年は、寝ている間に動いてなくてもいつの間にか折れていて痛がることがしょっちゅうでしたが、今はもうそこまでひどい折れ方はしなくなりました。むしろ、動けるようになってうれしくてちょろちょろしすぎた結果折れてしまったことも。

チャッピーは骨形成不全症のようなものと診断されたあと、猫で似た症例が世界的にもほぼなく治療をした話も出てきませんでした。担当医に勧められて人間用の骨粗しょう症の薬を飲むことになったときは期待と不安が入り混じっていました。

ただ、薬を飲んでいて骨折が落ち着いているのは確かですので、薬はずっと止めずに飲ませています。歩けるようになったのは、薬の効果なのか、あるいはチャッピーの成長に伴い骨も自然と強くなったのか・・・どちらかは担当医も分からないそうです」

――チャッピーくんが初めて歩けるようになったのは?

「今は両手両足を使って歩いてますがここにたどり着くまで段階がありました。初めて変化が見られたのは2021年4月22日。絶対忘れません。突然暴れだしたかと思ったら起き上がったんです!本当に突然でした。

そのときは歩いたりはしなかったものの、自分の力だけで体を起き上がらせて数秒間じっとしたあとコロン。もちろんうれしくなって泣きました。あきらめなくて良かったと思いました。その2日後の検査では初めて骨折頻度が落ちていることが分かり家族全員大喜びです。このままもっと良くなっていくんだろうなとワクワクでした。

そのあとも何度か四つんばいの体勢になって動かそうとしていましたがなかなか難しくて疲れて寝てしまうことがありました。移動できるようになったのは、起き上がった日から1カ月過ぎた6月2日です。腕だけを使ったほふく前進の状態で前へ前へ進みました。骨の折れすぎで変形がひどい後脚はまだ動きませんでしたが日に日に成長していく姿を見せてくれるので私も生きるのが楽しくなりました。

そしてついに4本の脚を使って歩けるようになったのは、起き上がれるようになって半年経った10月26日。これも突然で、何か思い立ったかのように勢いよく起き上がって、足踏みし出して・・・一度はコロンしちゃいましたがまたすぐ起き上がったと思ったら真っ直ぐ歩き出したんです!

このときは私の理解が目の前の状況に追いつかず・・・移動した先で固まってるチャッピーの姿を見て、『あ!動いたんだ!』と理解しました。すぐ家族に動画を送りました。『歩いてるよな?!すごいやろ!』と。この日からほぼ毎日歩くようになりました。それでも普段は寝たきりが当たり前です。でも歩き出すと筋力もついたのか移動距離も延びて、目を離したすきに部屋のあちこちを探検しては疲れて『戻れなくなったにゃー!』と呼ばれます(笑)」

歩けるようになったが、目が離せない

――いったん歩けるようになったあとも、ご苦労があるかと。

「はい。動き出すようになってからは寝たきりのころより目が離せなくなってそれはそれで大変なんです。普段は寝たきりの状態でおとなしくしてくれているのですが、ちょっと目を離した隙に移動してかくれんぼしていたり、特に人が寝静まった頃に部屋を探検しだすんです。

目が覚めたら隣で寝ていたはずのチャッピーが足下にいたり、『ピャー!』の大声で目が覚めたら遠くの方で戻れなくて力尽きて助けを求めたり・・・チャッピーは日中は家に置いておけないので母と一緒に会社に出勤しているのですが、そこでも一度失踪事件を起こしたことがあって従業員全員で捜したこともあるそうです。そのときは社長室のソファの下で発見されました。

またチャッピーは移動しながらいたる所におしっこやうんちをするので毎朝掃除から始まります。ケージに入れたこともありますが、嫌だったみたいで怒るし暴れるし。それは危険だったのであきらめました。動くようになった分、エネルギーも消費しやすくなったのか食べる頻度も以前より高くなりました。夜中は必ず3時間おきに起こされてご飯をおねだりしてきます。ちゃんと食べて出して元気にしてくれているのでうれしいのですが、夜だけはみんなと寝て欲しいです・・・」

――歩けるようになったチャッピーくんに変化はありましたか。

「歩けなかった子猫時代を取り戻すかのように毎日楽しそうに歩いて遊んでいます。まだ完治したわけじゃないので、歩き過ぎたら元の場所に戻すんですけど、それでもまたすぐにどっか行っちゃいます。

私たちにバレたら戻されるのを知っているので、人目があるときはそんなに動きません。ちょっと目を離した隙にいなくなってることが多いです。お互い必死の攻防戦。性格は子猫のときから変わらず、まだまだ子猫のようにやんちゃで甘えんぼうさんです!」

同じ病で姉猫の死、同居猫のFIP感染、そしてつらい闘病生活を乗り越えて

――これまでつらかったことや乗り越えられたことは?

「チャッピーの姉猫のめいちゃんがお空に旅立ったことを聞いたときは突然すぎて信じられませんでした。同じ日に生まれたサビ猫のめいちゃんはチャッピーより一足早く別のおうちで保護され同じ病気で闘っていました。めいちゃんと一緒に頑張っていたのですが2021年9月にはっきりとした原因は分からないまま旅立ってしまいました。おそらく病気が関係してるようで・・・やるせない気持ちでした。

またチャッピーが良くなっていく一方で、長男猫のなろが21年7月にFIP(猫伝染性腹膜炎)だと診断され余命宣告されたときもつらかったです。うちにいる子たち4匹はみんな優しいなろのことをとても慕っていて、私が保護活動を始めるようになったのはなろの存在があったからなので絶対に死なせたくないと、たくさんの方からご支援を賜りながらなろの治療とチャッピーの治療を行いました。

なろの84日間の治療中はチャッピーが毎日そばで『ニャー!ニャー!』と鳴いて応援してくれていました。たくさんの方の応援とチャッピーの応援があったからこそ、なろも無事今年の1月7日に寛解。今は家族みんなそろって平和に暮らせています」

投薬継続へ 同じ病で闘う猫の飼い主に向けてSNSで情報発信中

――今後のチャッピーくんの今後の治療方針や期待することをお聞かせください。

「生後1年経たずに両腕、両脚はもちろん、大腿骨、肋骨、顎や指などの全身をレントゲンで確認できるだけでも40カ所以上骨折しました。本当に苦しかったときに比べると、投薬を始めるようになって頻度も減ってきているのを見ると、今はビスホスホネート製剤が唯一の治療法なのかなと思います。

幸い副作用もなく穏やかに過ごしてくれていますしどんどん良くなってきているので、なろたちと遊べるようになる日も遠くないんじゃないかと。歩けるようになったといってもまだ普段はほとんど寝たきりなので・・・同じ病気の疑いのあるお友だちの黒猫ちゃん(玄ちゃん)は同じ治療でもうほぼ骨折はなくなりました。症状の重さに違いはありますが、実際に骨折が治まっている子もいるわけなのでチャッピーも期待しています。

とはいってももうチャッピーにはここまでたくさん頑張ってもらったので正直もう頑張ってくれなくてもいいよ…という気持ちもあります。痛みなく穏やかに暮らしてくれたらそれでいいです。あとはチャッピーにはつらい思いをさせてしまっていますが、この経験が同じつらい思いをされている飼い主さんのお役に立てればと思いますので、これからもSNSでの発信を続けていくとともに、情報収集もしていけたらと思います」

  ◇   ◇

チャッピーくんは2020年6月下旬、公園で生後2カ月くらいのときに保護された茶トラの男の子。保護された当初は数カ所以上の骨折やまひなどの重傷を負っていました。しかし、けがが改善してもまた別のところを骨折してしまうという原因不明の症状が続き、いくつもの動物病院を経たあと、同年9月に大学病院を受診。難病の一つ「骨形成不全症」の症状に非常に酷似していると獣医師から告げられました。

■Twitter:「ならまる~骨形成不全症のチャッピーの記録~」(@NyanNekoneko2)
https://twitter.com/NyanNekoneko2/media

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