猿ぐつわ、ベルト打ち…芸能生活30周年の村上淳がR-18映画で主演 監督は緊張で眠れぬ巨匠、強烈かつ濃厚な仕上がりに手応え

石井 隼人 石井 隼人

芸能生活30周年。そんな節目を迎えた俳優の村上淳(48)が体を縛られ、荒波の海中を漂っている。ヤクザ映画か!?と思いきや、その口には猿ぐつわ。目線の先の浜辺に立つのは女王様。なんとドM男の過激プレイの一環だった。2月4日公開の映画『夕方のおともだち』は、そんな衝撃的かつ引き込まれるワンシーンから幕を開ける。

映画『ヴァイブレータ』『ノイズ』などで知られる廣木隆一監督が、エロス漫画界の巨匠・山本直樹による同名コミックを赤裸々に映画化。ドM男とSM嬢の究極の愛と癒しへの道行きを、ハードな表現を交えて描き出す。

本物のベルトで背中をムチ打ち

実際に縛られて猿ぐつわをはめられた状態で海中を漂うシーンは、芝居の領域を超えているように見える。「猿ぐつわってしたことある?ないでしょう?あれをはめて海中に入るとね、もろに肺に水が入って来るの。だって口が閉じられないから」。満面の笑みを浮かべて、村上は何故か嬉しそうだ。

長回しのワンカットで背中を鞭で打たれる場面ではミミズ腫れが痛々しい。「特にベルトで背中を打たれるシーンは撮影用に加工したものではなく、本物のベルト。しかも撮影は長回し。僕のことをベルトで打つ鮎川桃果さんには本番前にこう言った。『こればかりは逃げられないから、思い切り背中にいいのが入らないと次のセリフを言わないからね』って」と自らも、そして対峙する共演者も追い込んでの撮影となった。

ここで言う村上の「いいの」とは「ものすごく痛い」ということ。相手役の鮎川はかなり緊張していたそうだが「三発目くらいにメチャクチャいいのが入って嬉しくて…。痛すぎてセリフが飛ばないかって?別に痛くたって死ぬわけじゃないし、アドレナリンもかなり出ていたから」とやはり嬉しそうだ。まさか演じたヨシダヨシオ同様に村上もドMなのか!?

芸歴30年でもなお怖くて眠れず

「クランクイン前夜は『怒られたらどうしよう』『恥ずかしかったらどうしよう』『上手くいかなかったらどうしよう』。この3つの考えが入り乱れて最後に『期待に応えられなかったらどうしよう』と怖くなって眠れなくなるんだよね」

それはハードな描写に対する躊躇ではなく、廣木監督作初主演というプレシャーからくる恐怖。俳優を始めた16歳の頃から知る廣木監督に対しては、強い畏敬の念を抱いているという。「廣木さんと現場で対峙したときに感じるのは、厳しさ、冷酷さ、そして優しさ。これが同時に迫ってくる。出会って30年以上になるけれど、お互いに現場で手加減をしたことは一度もない」とリスペクトする。「嬉しそう」なのにはやはり理由があった。

女優が脱がなくなった理由とは

撮影を振り返る村上の表情には恍惚感が漂う。「廣木さん含め、スタッフ・キャスト全員で思い切り遊んだ感覚。イヤイヤやっているような人は誰一人いなかった。しかもこの映画はR-18だけれど、六本木のシネコン(TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)で上映される。そこに僕は時代の変化を感じる。『スクリーンはそこまで安全地帯ではないぞ!』ということを観客の皆さんと共有できるのではないか」と映画俳優ならではの醍醐味を感じている。

ATGや日活ロマンポルノ、先鋭的なピンク映画に愛着を持つ村上。大人の鑑賞に堪えうる、濃密な映画が生まれたとの自負がある。女王様ミホ役の菜葉菜とのからみは近年の邦画では珍しいくらい、強烈かつ濃厚だ。

「女優さんが脱がなくなったのではなく、女優さんに『脱いでもいいです!』と言わしめる監督や俳優が少なくなっただけ。勝新さんに優作さん、ショーケンさん。僕もいつかは『村上淳が相手ならば脱ぎます』と言ってもらえるようなスケールの大きな俳優になりたいね」。芸能生活30周年作封切りを前に、新たなる誓いを立てている。

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