大衆魚は神経質だった!サンマの長期飼育と繁殖を継続中のアクアマリンふくしま 担当者の悩みは?

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「水族館で生きたサンマを見たことがある人は少ないはず
なぜならサンマの長期飼育と繁殖に成功しているのは世界でもアクアマリンふくしまだけだから
食べることは簡単でも、この輝きを見られるのは実はとても貴重なこと」

α-🦈 (アルファシャーク@alphasharkphoto)さんが、このような文面とともにTwitterに投稿した写真が話題になっています。

現在、大学生というα-🦈さんは、さまざまな水族館を訪れ、展示されている生き物の写真を撮影し、Twitterで紹介しています。今回のツイートでは、福島県いわき市にある「ふくしま海洋科学館」(通称・アクアマリンふくしま)で展示されているサンマを紹介。

サンマは非常に神経質で、飼育がとても難しい生き物だといわれています。しかし、アクアマリンふくしまは試行錯誤の末に世界ではじめてサンマの飼育に成功、東日本大震災での危機も乗り越えつつ、2000年7月の開館から現在に至るまでサンマの展示を行っています。

努力の賜物といえるサンマの飼育展示。α-🦈さんの写真からは、そんなサンマの生き生きとした躍動感が伝わってくるようです。

リプ欄にも反響が多数。

「凛々しい姿ですね」
「本当にそういわれてみるとサンマを水族館で見た記憶ないですね」
「実際に傷のないきれいな体で泳ぐ姿を見てみたいです」
「生きたサンマは感動しますよね。私は体全体をくねらせて泳ぐ泳ぎ方に驚きました」
「大変な苦労をして、食卓では身近な魚を鑑賞できるのは素晴らしいですよね」
「初めて最寄りがアクアマリンふくしまで良かったって思った」
「さんまは目黒に限ると思うておったが、これより福島から取り寄せるがよい」

など、実際に見たことがある人、これから見てみたいと思う人、落語のネタをモチーフに洒落の効いたコメントをする人など、さまざまな方からの声が寄せられました。

魚や水族館への愛が溢れるα-🦈さんに聞きました。

――実際に泳いでいるサンマの様子を見たご感想は?

α-🦈さん:尾ひれだけを使って泳ぐのではなく、体全体をくねらせるようにして泳いでいたことが印象的でした。そして、体をくねらせる時に水槽の照明や通路の光などを反射させている輝きが綺麗だったので、それを表現できるように写真に収めました。このような発見は実際に生きているサンマを見なければ気づけなかったことだと思ったので、はるばる見に来た甲斐があったな〜と思いました。

――とても感動されたのですね。α-🦈さんは色々な水族館で写真を撮られていますが、魚や水族館の魅力とはズバリどのようなところだと思いますか?

α-🦈さん:魚の魅力は、私達が普通に陸上で暮らしている中では出会えないような面白い姿や生態をした種類が多くいることだと思います。水族館の魅力は、そういった魅力的な生き物たちに出会える機会を与えてくれるところ。さらに、生きている姿を見るからこそ色々な発見があったり、生命力や躍動感をダイレクトに感じられたりすることだと思います。

――撮影されている写真からも、生命が感じられますね。カメラや撮り方へのこだわりなどありますか?

α-🦈さん:カメラはソニーのα6400というものを使用しています。撮り方でこだわっているポイントは、必ずアクリル面と垂直になるように撮ることです。水族館のアクリルは分厚いので、斜めに撮ると被写体の魚がボヤけてしまうからです。それと、生き物を撮る時に自分の姿がアクリルに反射して写り込まないように、黒い服を着て撮影しています。あとは、生きていることが伝わるように、動きがある場面や魚の体表に光が反射した瞬間などを切り取るように心がけています。

――撮影方法からも魚への想いが感じられます。現在大学生とのことですが、専攻は?

α-🦈さん:大学では今は水生生物について広く勉強しています。来年研究室に配属されてからはより専門的なことを学んでいく予定です。

アクアマリンふくしまの飼育担当者に話を聞いた

今回のツイートで、サンマの展示が多くの人々から注目を集めたことについて、アクアマリンふくしまの方々はどのように感じていらっしゃるのでしょうか。同館のサンマ飼育担当者に、話をうかがいました。

――今回話題になったご感想は?

担当者:素直にうれしく思います。サンマは長期飼育が難しく、近年はサンマの不漁が話題になっているように、新規にサンマやサンマの卵を入手することが困難な状況でもあります。そんな中で、労力の割にあまり注目されないのであれば…と、展示の継続に疑問を感じることもありました。しかし、今回注目していただけていることが実感でき、励みになりました。当館にサンマを観に来てくれる人が少しでもいらっしゃるなら、頑張って展示を継続していきたいと思います。ありがとうございます。

――話題になったことで、来場者数やサンマを鑑賞する人数に変化はありましたか?

担当者:新型コロナウイルス・オミクロン株の感染が拡大している風潮もあり、今のところはあまり感じておりません。

――そうなのですね。いつかは活気を取り戻せると信じています!日々のサンマの飼育で心がけていることは?

担当者:サンマは神経質な魚なので、なるべく驚かせてストレスを与えないように気を付けています。また、サンマは成長が速いうえに、胃が無いため頻繁に餌を食べないと痩せて死んでしまいます。そのため、卵から孵化させて育てる段階から痩せないように成長段階に合わせて餌量を随時調整しています。また、水槽内で産卵させているので良質な卵を産んでもらえるよう、繁殖期は栄養価の高い餌料を与えるようにしています。他の魚種よりも頻繁に観察して健康状態を確認することが一番重要です。

――色々なことに気を遣って飼育をされているのですね。また、以前には「産卵の展示が目標」と話されていましたが。

担当者:繁殖している期間(3~6カ月)だけですが、2年前から展示水槽でサンマの産卵を見せることが出来るようになりました。今年も4世代目のサンマを育てるために展示水槽で産卵させる予定です。

――着実に飼育や展示の内容も発展されているのですね。これからの目標は?

担当者:現在の当館の記録である最長8世代の継代繁殖記録を更新すること、外部機関との共同研究でサンマの新たな知見を得ることです。

――サンマの他にオススメの生き物や展示は?

担当者:ユーラシアカワウソやフェネック、クラカケアザラシなどの哺乳類は人気がありますね。しかし、根っからの魚好きである私がお勧めしたいのは、まず「サンゴ礁の海」大水槽です。来館者はもちろん、スタッフにも人気が高いです。北方系の深海生物の新種が当館で続々と発見、展示されているのも目玉といえます。今年の1月からは、ホカケコオリカジカが新種として世界初展示され、ニュースにもなりました。他にも、アクアマリンふくしまでしか観られない深海生物が数多く展示されており、世界一の深海生物展示といえると思います。

――皆さまにメッセージを!

担当者:Twitterをきっかけに、アクアマリンふくしまでサンマが展示されていることを知ってもらい本当に有難いです。オープンから20年以上サンマの展示を継続してきましたが、これからも出来る限り、日本の大衆魚「サンマ」の展示を続けていきたいと思います。皆さんに観に来ていただけることを願っています!

  ◇  ◇

■α-🦈(アルファシャーク)さんのTwitter→https://twitter.com/alphasharkphoto

■公益財団法人ふくしま海洋科学館・アクアマリンふくしま公式サイト→https://www.aquamarine.or.jp/

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