「そーっと静かに見て」動物園がカンガルーと仲良くなれる“秘密”を伝授「ペットじゃない。野生の生き方尊重して」

茶良野 くま子 茶良野 くま子

「動物園の動物たちは皆さんの家で一緒に暮らす伴侶動物と違い、賑やかな環境があまり得意ではありません。大きな声で『カンガルーさーん!』と呼んだり、気を引こうと手を叩いたりすると、かえって怖がって離れていきます」

「どうか、静かに歩いて、そーっと観察してみてください。じーっとしていると、カンガルーの方から興味を示してくれるかもしれません!」 

穏やかだけど、警戒心の強い動物

オオカンガルー63頭を飼育し、「ウォークスルー形式」の展示を取り入れている神奈川県横浜市の市立金沢動物園の公式ブログが、「カンガルーと仲良くなるための『大人の方へのお願い』」を発信し、園内にも掲示。「『動物たちには優しく静かに接するんだよ』とお子さんたちにお伝えください」と保護者や遠足の引率者に呼びかけました。動物園では、「お静かに」や、「~しないで」などと注意を促す掲示物はよく見かけますが、「仲良くなるために」って? ブログの筆者で飼育担当の柴田さんに思いを聞きました。

柴田さんによると、「カンガルーは普段は比較的穏やかな動物ですが、警戒心が強い面もあり、遠足などで人が多い時間帯や、週末など来園者が多い日は、物音や大きな声で驚くことがある」とのこと。同園では、カンガルーが走りまわってしまったり警戒心が解けなかったりする場合などは通行中止にすることもあるそう。一方で、静かに見ている人に対しては、カンガルーの方から近寄ってくる光景もよく見られるそうです。

「動物たちにも人と同じように意思や考えがあります。見るときは、自分の欲求を通すだけでなく思いやりの気持ちを持って接してほしいなと。そうすれば、カンガルーの警戒したキツイ表情ではなく、穏やかにくつろいでいる姿をご覧いただけるようになります」と柴田さん。大人に向けたお願いとした理由を「『カンガルーも来園者も楽しめること』が動物園にとっても良い形。みなさんに、より気持ちよく参加してもらいたいと思い、『仲良くなるために』としました。注意看板も掲示していましたが、動物は大きな音が嫌いで、そのような行動のために動物から嫌われてしまうということに、多くの方が気づいていない、と感じていました」と話します。

動物たちが安心して幸せに過ごすために

1カ月後、「ご協力に感謝」とブログを更新。声や、手を叩いて気を引こうとする姿は少しずつ減っているとし、「多くの方がこの取り組みに参加し、優しく接してくださる姿をこれまで以上に多く見かけるようになりました」と報告。「動物園の動物はある程度の刺激には慣れてもらう必要がありますが、彼らが、より安心して幸せに過ごすための努力をする必要が、私たちにはあります。動物をただ『かわいい』で消費することなく、身近な生き物や世界の環境へ目を向けるきっかけにしてもらえたら」と飼育員としての思いもつづりました。

「飼育員に『静かにね』と言われるよりも、保護者の方が物知り顔(重要!)で『いいことを教えてあげよう!仲良くなる秘密はね、そーっとじーっとしていることなんだ(コソっ)』の方が格段に思い出に残る楽しい一日になります」。そして、カンガルーと仲良くなれたら、「無言になる必要はありません!大声にならない程度で、発見や感想などおしゃべりして共有して」と呼びかけました。

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