【事件発生】電車内で刃物を振り回している人が!→身を守る基本は「乗務員に知らせて、その場から速やかに離れる」

平藤 清刀 平藤 清刀

電車内で刃物を振り回して切りつけてきたり、油をまいて火をつけようとしたりする事件が立て続けに起こった。走る密室で命を脅かされる事件に遭遇したら、どうやって身を守ればいいのか。

無差別な犯行は自分もターゲットにされる危険が

2021年10月31日午後8時ごろ、東京都調布市を走行中だった京王線の車内で、24歳の男が刃渡り約30センチの刃物で乗客に切りつけ、17人が負傷。車内にオイルライター用のオイル3リットルをまいて放火。車輛の内部を焼損させた。殺人未遂容疑で現行犯逮捕された男は、警察の取り調べに対し「誰も死なず、非常に残念な気持ちで落ち込んでいる」と話しているという。

この事件から8日後の11月8日午前8時45分頃、熊本~新八代間を走行中の九州新幹線「さくら401号」の車内で69歳の男が床に液体を撒き、紙に火をつけて投げ込むという事件が起こった。火はすぐ消し止められ、男は現行犯逮捕された。犯行動機は「京王線の事件を真似しようとした」という。

また、2015年には、東海道新幹線の走行中の車内で焼身自殺を図り、乗客の女性が巻き込まれて亡くなるという事件もあった。

連結部に置かれたスポーツバッグが、警察沙汰の「不審物」に

電車で起こった凶悪犯罪で強烈なインパクトを残した事件といえば、1995年3月20日の朝に東京の地下鉄で起こった地下鉄サリン事件だ。リアルタイムで報道を見ていない人でも、事件名ぐらいはご存じだろう。

走行中の地下鉄車内で、化学兵器「サリン」が散布され13人が死亡、約5800人が負傷するという、日本の鉄道史上最悪の無差別テロ事件だった。サリンは液体でビニール袋に入れられ、新聞紙で包まれていた。実行犯はそれを足元に置いて傘の先端で穴をあけ、サリンが気化する前に逃亡した。

この事件以降、各鉄道会社は「車内に不審なものをお見かけした場合は手を触れず乗務員か駅係員にお知らせください」とアナウンスするようになり、26年経った今でも続いている。

では「不審なもの」とは何だろう? そして「不審な人物」とは? 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)コーポレートコミュニケーション部に尋ねた。

「一概に言えるものではないと思いますので、当社からお答えできる事柄はありません」

つまり、非常に判別しづらいのである。

だが、ひとつの指標になり得る事案があった。2011年、東京の電車内に置き忘れられたスポーツバッグのせいで、警察の爆発物処理班が出動する騒ぎがあった。

実際の中身は着替えやハンガーだったが、それは開けてみて分かったこと。不審物とみられた理由は、そのバッグが連結部に置かれていたからだった。一般的に、スポーツバッグが置かれる場所として不自然だったため、外見は何の変哲もないスポーツバッグでも不審物とみられてしまったのだ。

では「不審者」はどう見分ければいいのか。セキュリティ業界の大手SECOMが公開している月水金フラッシュニュースの2010年12月20日付「不審者はなぜ不審なのか」に、こんな記述がある。

〔色々な考え方があると思いますが、ここでは「その場所にいる人が、おかしいと感じ、そのおかしい感じ(不審感)のために、なんらかのアクションをとりたくなる恰好や挙動をしている人物」として考えます。〕

極端な例をいえば、真夏に厚手のコートを着て目出し帽をかぶって歩いてくる人がいたら、なるべく避けたいと思うはずだ。これが「なんらかのアクションをとりたくなる恰好や挙動」ということ。

刃物を振り回す犯人を取り押さえるのはムリ

走る密室と化した電車の中で、もし凶悪な事件に巻き込まれたとき、身を守る術はないのだろうか。

「車内で非常事態の発生を確認した際には、非常通報装置(SOSボタン)を押していただくようにお願いをしております」(JR西日本コーポレートコミュニケーション部)

ただし、SOSボタンが押された際、京王線の事件では次の駅まで走ったが、鉄道会社によって対応が異なるようだ。国土交通省が2010年3月に作成した「鉄道の安全利用に関する手引き」には、こう記述されている。

〔(SOSボタンは)乗務員と通話可能なタイプと乗務員室に表示が出るのみで通話ができないタイプとがあります。装置のタイプがいずれであるかにかかわらず、これが使用されたときには、トンネルや橋りょう区間を除き列車を直ちに停止させることとしている事業者が多いです。しかし、装置のタイプがいずれであるかにかかわらず、次駅まで走行してから対応するという事業者や、通話機能がある場合には通話によって内容を確認した後に対応を決めることとしている事業者もあります。〕

次の駅まで走行する場合、都会なら駅と駅の間はせいぜい1~2分。かつて警備業界で働いていた筆者の経験をいえば、犯行現場からなるべく速やかに、そして遠くへ離れること。電車だと別の車輌へ移動するしかできないが、その場にとどまるより安全だ。難しいかもしれないが、冷静に行動すること。

10月に起こった京王線の事件では、パニックに陥って逃げ惑う人で車輌の連結部に渋滞が発生して、後ろから押された人が転んでしまい、ますます渋滞が大きくなっていた。

この事件の後、SNS上には「5~6人で協力して取り押さえればいい」とか、座席の座面を取り外して盾にする方法を紹介する記事やコラムなどを目にすることがあった。前出のJR西日本コーポレートコミュニケーション部によると「(座面が)簡単に外せる車輌と外すことにコツがいる車輌があります。また、外すことができない車輌もあります。社員がお客様を逃がす、身を守るための訓練で使用していますが、お客様へ推奨はできません」とのこと。

電車内で不審物を見つけたり不審者に遭遇したりしたときは、まず乗務員か駅員に知らせる。そして、なるべく速やかにその場から離れることが、身を守るための基本といえる。

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