助けを求めて鳴いていた子猫
ポポネちゃん(4歳・メス)は、2017年9月18日、東京都に住む森口さんの夫に保護された。
森口さんの夫は、たまたま通りかかった通りで子猫の鳴き声がするのに気がついた。最初は「子猫がいるな」と思っただけで通り過ぎたが、数時間後、同じ所を通ると、まだ子猫が鳴いていた。その通りは裏通りだが、結構車が通る。母猫は見当たらないし、このままだと危ないと思い、次男を引き連れて捕まえることにしたのだという。
子猫は段差解消のために置いてある鉄板の下にいたので、片側から追い立てて逃げ出したところを虫網で捕獲した。
「当時夫は既に一杯入っていたらしく、今では聞いてもうろ覚えです(笑)。ただ、その時、手を噛まれて、更にびっくりした子猫に粗相をされて『うわーっ!!』となったのは覚えているようです」
箱から逃げ出し、家の中で2度目の捕獲
森口さんはその時まだ仕事中だったので、LINEで「猫飼ってもいい?」という連絡を受けた。
「帰ってみたら小さな箱の中にそれはそれは小さな可愛い子猫が入っていました。そんな可愛い子を見ちゃったら、元来猫好きなのでダメと言う選択肢はありませんでした」
猫を飼うのは子供の時以来30数年ぶり。何をどうしていいか分からずあたふたしているうちに、家の中で箱から逃げてしまって大変なことに!
「まずチェストの下、更に固定されている大きなファンヒーターと壁の間、最後に大きな食洗機の裏側に入り込んで、がんとして出て来ません。子猫ってこんなところに入れるのかというところに入れるんです」
手が届く場所でもなくどうしたものか。お腹も減っているだろうから何か食べ物をと思っても、猫用の餌の用意ももちろんなかった。仕方がないので焼き鳥のタレを落として細かくしてお皿に置いておくと、ポポネちゃんはそーっと出てきて一生懸命食べた。
「お腹が減っていたんですね。あー良かったとホッとしたのを覚えています。でも私たちが近づくとすぐに奥へ入ってしまいました」
翌日、慌てて子猫用のミルクとキャットフードを買って来たが、小さいのに大変用心深い子で、食べる時以外は出てこないし近づくと逃げた。ただ、夜になるとポポネちゃんは大きな声で鳴いた。
「多分お母さんか兄弟を呼んでいたんだと思います。切なかったです。お母さんがいればリリースしていたかもしれませんが、今はしなくて正解だったと思っています。夜中は食洗機の下から這い出して部屋中お母さんを探してるみたいだと娘が言うので、夜電気を消して子猫が出てくるまでじっと寝たふりして待ち、近づいたところで布を被せて急いで用意したケージに入れました。2度目の捕獲成功です!」
小さな身体に大量のノミ
ポポネちゃんは、小さな身体だがものすごい勢いでシャーシャーした。更に、捕獲した時夫が手を噛まれたので、皆怖くてなかなか手を出せず、動物病院に連れて行くのが遅れてノミに悩まされることになった。
やっと獣医さんに診てもらい、ノミ駆除と白癬、お腹の虫下しの薬をもらって治療を始めた。生後1カ月半くらいだと言われた。白癬で少し禿げていた耳と尻尾は徐々にきれいになったがノミはなかなか退治できず、薬を与えた後も白癬用のシャンプーをする度にうごめいているのが見つかった。3種類目の薬でやっと根絶することが出来ました。
「小さな身体にこんなにも沢山のノミがついていて、お外は本当に過酷だなと思いました。さぞかゆかったでしょうね。私も最初のノミの薬で安心して一緒に寝てしまい、しばらくかゆみに悩まされたので、辛さはよく分かります。ノミのかゆさは蚊よりずっと強烈ですし、ぶり返します」
名前はあれこれ悩んだあげくポポネちゃんにした。名付け親の夫によると、French nameなんだという。それからは家族みんな明けても暮れてもポポちゃんポポちゃん!だんだん慣れて膝に乗って来ると更に可愛さ増し増しだった。
離れて住む長男に懐かない問題
主にポポネのお世話は森口さんがしたので、ポポネちゃんはすっかりママっ子に。一番懐いているという。
「たぶんママだと思ってくれているのでしょう。私にだけゴロゴロ音を出したりフミフミをするのでみんなうらやんでいました。お膝選ばれる率もNo. 1でした」
森口さん一家は、ポポネちゃんの成長に連れて、いたるところにDIYでキャットウォークを設置した。
「親バカ全開です。会話もポポネの話題でもちきりで、夫婦喧嘩も減ったねと子供に言われる始末。もともと夫婦で仲良しだと思っていたのに、子供にそう言われてびっくりでした(笑)」
ポポネちゃんは、森口さんによると異常なほどの怖がりなんだという。インターホンのピンポンが鳴るとダッシュで隠れて出て来ない。「猫飼ってるよ詐欺」だと思われるかもしれないほど。そのため大学入学以来北海道に住む長男はいつまで経っても怖い人。帰省する度押し入れ生活が始まってしまう。
「長男が帰って来ると嬉しいのですが、ポポネのことを思うと複雑なんです。家族以外の人には慣れないポポネですが同じ猫なら仲良くできるかなと、お留守番の時にも寂しくないようにと、奄美大島でノネコとして捕獲されたヴィヴォンを迎えました。相性が良くないのか、ポポネが怖がりすぎるのか、思い描いたような仲睦まじい光景は今だに見られないお二猫さんですが、折り合いを付けて一緒に生活できるようになりました。どちらも可愛くて可愛くて、毎日進んで下僕となっています!」
毛皮を着替えて帰ってきた?
森口さんは子供の頃買っていた猫のちびちゃんが歳をとって、膝の上で息を引き取って以来、別れを思うと猫を飼うのをためらっていた。しかし、インスタで知り合った人が、「猫は天国で毛皮を着替えて戻って来る」という話を教えてくれた。
「あぁ、きっとポポネはチビの生まれ変わりなんだと、縁だったんだなとストンと腑に落ちました。そしてきっとヴィヴォンは夫が飼っていた『ねこ』という名の猫なのではないかと思っています」