気圧の変動が体調を崩すきっかけになることを知っていますか? 頭痛やめまいなどの症状、さらには脳卒中のリスクにも関係すると言われています。吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――台風シーズンなど「気圧が低くなると頭が痛くなる」という人がいます。気圧と頭痛に何か関係はあるのでしょうか?
はい、実は「気象病」という言葉もあるほど、天気の変化で体の不調を感じる人は多いようです。昔から「天気が悪くなると古傷が痛む」と言いますよね。その中でよく起こるのが頭痛やめまいといった症状です。
――気圧の変化は体のどのような場所に影響を与えるのでしょうか?
交感神経です。気圧の変化を感じ取るセンサーが耳の奥の内耳にあり、脳の中枢にある自律神経に働きかけます。すると、慢性の痛みを持っている人は痛みが強くなるほか、耳の奥には三半規管があるため、そこからめまいが起こると言われています。
――片頭痛などを持っている人は辛そうですね。どのような痛みが多いのでしょうか?
片頭痛は、気圧の変化をきっかけに発作が起こりやすくなると考えられています。頭の片側にズキンズキンと脈動性の強い痛みを感じ、多くの人が吐き気を伴います。
――片頭痛は、専門外来がありますか?
頭痛専門医がいます。脳神経外科や脳神経内科の医師に診てもらうのが良いと思います。
――頭の痛みということで、気になるのは脳卒中との関係です。気圧が低くなると脳卒中のリスクも上がるのでしょうか?
色々な調査がありますが、気圧が上がったり下がったりすると、脳出血やくも膜下出血のリスクが高まると言われています。また、最も関係するのは「温度差」です。
――それは朝と昼の気温差でしょうか?
そうです、特に季節の変わり目ですね。急に寒くなったり暑くなったりする時、脳卒中のリスクは高まると考えられています。特に、寒くなる時期は血圧が徐々に上がりますので、出血性の脳卒中である脳出血やくも膜下出血の患者さんが増えると言われています。
――気温の変化にも注意が必要ですね。ただ「気圧の変化に備える」というのはなかなか難しいですね。
はい。「片頭痛が来るかもしれない」と考え、備えておくことはできますが、一番大切なのは規則正しい生活を送ること。気圧の変化は、うつ病などの精神的な不調に繋がる場合もあります。日頃から体調の変化に気を配り、心身の健康を保つように心がけてください。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科