明石海峡大橋の開通で、一時は「原付の孤島」だった淡路島 バイク積載可能になった高速船に乗ってきた

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 淡路島は、阪神エリアでは昔から馴染みの深い島です。兵庫県明石市から、明石海峡を隔てて南へ。渦潮で有名な鳴門海峡を挟んで徳島県の手前まで続いています。かつて淡路島へは阪神間から3本、泉南郡岬町の深日港から1本、徳島からも1本のフェリーが就航していましたが、明石海峡大橋の影響などで、いまはもうどれも残っていません。

最後まで残っていた「たこフェリー」が撤退、原付の孤島に

 阪神間からの航路は、東から順に、西宮と津名を結んでいた甲子園フェリー、須磨と大磯を結んでいた淡路フェリー、そして明石と岩屋を結んでいた明石淡路フェリー(たこフェリー)がありました。甲子園フェリーは95分、淡路フェリーは45分、たこフェリーは20分と、西へ行くほど所要時間が短くなって、その分料金もだいたい半分、半分と安くなっていました。

 徳島から淡路島へ鳴門海峡を渡っていたフェリーは1995年に、深日からの航路と淡路フェリー、甲子園フェリーの3つの航路は明石海峡大橋が開通した1998年に相次いで廃止になって、最後に残っていたたこフェリーも2010年で撤退。この時をもって、淡路島を発着するフェリー航路は全て無くなってしまったのです。

 橋の開通と、その後の通行料の値下げにとどめを刺された格好です。乗客が居なくなって、経営が悪くなったのですね。時間のかかる船よりも橋を渡った方が早い、ということです。時代の流れですね。

 しかしここで一つ問題があります。大鳴門橋も明石海峡大橋も自動車専用道路なので、125cc以下のバイクが通れないのです。そうです、このたこフェリーが無くなった時点で、淡路島の原付(一種、二種含む)は島から出られなくなってしまったのです。また、四国や本州からも原付は淡路島へは渡れなくなってしまいました。

 フェリーがあった頃には、カブの荷台にクーラーボックスと釣り竿をくくりつけたおじさん達がよく淡路島に渡ってはりましたが、そういうこともできなくなってしまったのですね。

 あと、これはあまり知られていないかもしれませんが、自動車の強制賠償保険、いわゆる自賠責保険は、本土と橋やトンネルで繋がっていない島(人工島を除く)は「離島」の扱いになって、保険料が安くなります。1985年に大鳴門橋が開通したことで離島ではなくなりましたが、125cc以下のバイクだけは、淡路島はいまも離島の扱いです。

2015年、ジェノバラインで原付が行き来できるように

 そんななか、それまで旅客だけを運んでいたジェノバラインという航路が、2015年から「125cc以下のバイクに限って乗船可能」という高速船を運航するようになりました。まりん・あわじという118総トンのスマートな双胴船です。船の後部にバイクを8台、自転車を20台積むことができます。

 いまの時点で、このジェノバラインが原付で淡路島に渡る唯一のルートです。明石から淡路島に渡る航路はもともと国道28号ですから、原付については「ようやくこの区間の国道が復旧した」とも言えます。鳴門海峡は相変わらず点線国道ですが。

 さて、ある晴れた秋の日に、125ccのスクーターで、そんなジェノバラインに実際に乗ってみました。

 明石側の乗り場は「たこフェリー」があったところから西に400メートルくらいの場所です。「バイク」と書かれた場所にバイクを止めて、待ちの順番取りをしてから券売機でチケットを買います。この日は平日でしたので大丈夫でしたが、週末は積み残しが出ることも多いようです。運賃は大人1人530円、バイク1台480円、合計1010円。

 船が入ってきて乗客が降りると改札が始まります。チケットを渡して、バイクを押して桟橋に入ります。桟橋の上はエンジンを掛けて走るの禁止なんですね。船の後部のスロープを押し上げて乗船すると、係の人がバイクをラックに固定してくれます。このラックの仕組み上、前輪が二輪の三輪車は固定できないので乗れません。そうです、たとえばヤマハのトリシティ125などはいまも淡路島に渡ることができないのですね。

 バイクの固定が済むと、キャビンに入って片道およそ13分の船の旅です。たこフェリーはだいたい20分くらいでしたから、この船はかなり船足が速いです。この日はけっこう波が高かったのですが、ほとんど揺れることもなく快適な乗り心地でした。

 筆者は甲子園フェリーの西宮港から2kmほどのところに住んでいるので、航路があった頃は小さいバイクでよく淡路島に渡っていました。走る距離に関しては、淡路島はとても近いところだったのです。二十数年前までは。

 125ccで走る、懐かしい淡路島。気分がよかったので、ついついぐるっと一周してしまいました。

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