今年3月23日、北海道旭川市内に住む当時中学2年の廣瀬爽彩(さあや)さんが同市内の公園で凍死した姿で発見され、2年以上前からせい惨ないじめに遭っていたことが報じられた。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は、旭川市長選(9月26日投開票)で「いじめ対策」を公約に掲げて初当選した今津寛介市長(44)にインタビューし、真相解明への具体的な対策を聞き出した。
事件発生時の旭川市長だった西川将人氏(52)が衆議院議員総選挙出馬のため8月で辞職したことを受けて行われた市長選。小川氏は自身のYouTubeチャンネル「小川泰平の事件考察室」で、告示前の9月4日に今津氏と対立候補の双方にインタビューした。その上で、当確が出た夜に今津氏に電話で「いじめ問題」への対応について取材要請をし、YouTubeの視聴者に公開された形で本人から承諾を得た。今月、現地に飛んだ小川氏による新市長への直撃インタビューが実現した。
当選した喜びに沸く陣営の中、今津氏は険しい表情だった。小川氏がそのことを指摘すると、今津市長は「これからの重責を考えると、とても笑顔になる状態ではなかった」と打ち明けた上で「全国から注目されている最重要課題として『いじめ問題』に取り組んでいきたい」と決意表明した。
新市長として「旭川総合教育会議」を今月上旬に開催。教育委員らを対象に、前市長の時にも開催されてきた会議だが、今回は次の「5点」について確認したという。今津市長は「(1)スピード感を持って第三者委員会を進める。(2)遺族側の弁護団とも連携して中間報告をする。(3)関係したとされる中学の生徒、その保護者、当時の教師らにヒアリングをする。(4)第三者委の中間報告は10月中に、最終報告は年内か、遅くとも来年3月の年度内に。(5)当時の教頭先生が現在も中学にいるので現状の改善を要望する。以上を教育長や教育委員に要請した」と語った。
小川氏はその中で(5)の内容に注目。「当時の教頭先生が現在も中学に勤務しているということですが、この教頭先生は(爽彩さんの母親に対して発言した…と遺族の手記で明かされた)『10人の加害者の未来が大切』といった言葉が報じられています。実際に話したのですか」と問うと、今津市長は「(教頭の発言が)事実かどうかは私の所に報告はきていません」と返した。
また、遺族側が違和感を示している第三者委員会のメンバーについては「市長の権限で変えられない」としつつ、「ご遺族と第三者委の話に食い違いがあれば、面談の準備がある」と明言。さらに、公約とした「いじめ110番SOS」の設置については「大阪・寝屋川市の制度を参考にして、そうした機関を作れるように打ち合わせしている」と明かした。
小川氏は「いじめが学校内で起きても、先生が保身に走って隠蔽する体質が問題」と指摘すると、今津市長は「3点」の対策を挙げた。
今津市長は「(1)いじめについて報告したことが評価される制度を作る。(2)第三者委の結論はいつまでに出すということを法律に明記する。(3)イジメを隠蔽したことへの罰則を設ける」とした上で、「国政において法改正する必要があると旭川から伝えたい」と訴えた。小川氏は「旭川だけの問題でなく、全国に『旭川モデル』として浸透していって欲しい。隠蔽して保身に入る教師を守るのではなく、オープンにする人を守るようにできるか。今後も注目したい」と期待を込めた。
10月28日には大きな進展があった。今津市長は市議会代表質問や記者団の質問に対して「いじめはあったと判断した」と初めて公の立場で「いじめ」があった事実を認める発言をしたのだ。この言葉に対し、小川氏は「第三者委員会の調査に対する、今津市長流のプレッシャーでは…と受け取りました。今後の第三者委の調査に注視していく方針がうかがえた」と指摘した。