京都にある国内唯一の「スロベニア料理店」が20周年「スロバキア」と間違われても「ドキドキを笑顔に」

辻 智也 辻 智也

 国内唯一のスロベニア料理店「ピカポロンツァ」(京都市右京区)が、10月で開店20年を迎えた。彩り豊かな母国の味を届けてきたスロベニア人店主は「日本ではなじみの薄い国の料理だったが、お客さんが店を育ててくれた」と感謝する。記念月の10月は、20年間で特に人気が高かった歴代のメニューを振る舞っている。

 ピカポロンツァは、天神川通沿いにある20席ほどの小さな店だ。店主のイゴール・ライラさん(73)が調理し、妻の智恵さん(57)が接客を担う。

 イゴールさんは、スロベニアの首都リュブリャナ出身。1978年に京都大大学院に留学し、数理生態学の研究で博士号を取得した。その後、ゲームソフト開発に挑むが、うまくいかず断念。既に50歳で「この先どうしよう」と途方に暮れた。

 思いついたのは、幼い頃から趣味だった料理。母国の料理を勉強し直し、自宅を改装して2001年10月1日、ピカポロンツァを開店した。店名は、母国で幸運の象徴とされる「テントウムシ」から付けた。

 日本でスロベニアはなじみが薄いためか、当初はスロバキアと間違えられるほどで、料理が広く受け入れられるかどうか未知数だった。それでも、無理に日本風にせず、自分がおいしいと思う母国の味を心がけた。

 スロベニアは、山岳地帯や地中海沿岸などの地方ごとに料理が大きく異なる。毎月メニューを変え、各地方の代表的な料理を出していくと、徐々に常連が増えていった。

 特に人気が出たのは「ボグラチ」。日本語で「鍋」の意味で、数種の肉や野菜が入ったシチューだ。スロベニア風のパイ「ギバニッツァ」やレモンスープ、日本より種類が豊富なソバ料理も「次はいつ出すの」とリクエストが相次いだ。

 生産・流通が少ないものの高品質で知られるスロベニア産ワインや、南丹市美山町の畑で自ら育てた無農薬野菜も、店の人気を支えている。

 イゴールさんは「料理への質問や食べ方に迷う姿を見て、こちらも工夫を重ねた。お客さんが店を育ててくれた」と20年間を振り返り、「今もスロベニア料理はなじみが薄いので、ドキドキで来られて、笑顔で帰ってもらえるのが一番の喜び。元気な限りずっと続けたい」と話す。

 今月は「ボグラチ」やソバ料理など歴代の人気メニューを提供。ランチ1720円~、ディナーは5720円と7320円のコースがある。

 月、火曜定休。ランチは日曜要予約、ディナーは要予約。ピカポロンツァ075(871)0146。

≪スロベニア≫

 ヨーロッパ中部のアルプス山脈東端に位置し、四国よりやや広い国土に、約200万人が暮らす。1991年6月にユーゴスラビア連邦から独立し、現在はEUに加盟。スキーなどのスポーツが盛んで、鍾乳洞や温泉も豊富にある。

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