少年野球チーム10年で半減の衝撃 少子化の影響?野球人気の低迷?部員が足りず合併の動きも

黒川 裕生 黒川 裕生

10月のある週末。兵庫県西宮市の小学校のグラウンドで、違うユニフォームを着た2つの少年軟式野球チームが一緒になって練習に励んでいた。「苦楽園オールヒーローズ」と「神原スピリッツ」。いずれも別々の小学校を拠点に活動する小学生のチームだ。実は来年度から、2チームは合併して新しいチーム「神原苦楽園ツインスターズ」になる予定。両チームとも少子化や野球人口の減少で部員が増えず、チーム運営が危機的な状況に陥っているという。そしてこれは、この2チームに限った話ではない。

部員が増えず、試合もできない

この日、合同練習していたのは両チームの小学5年生、計9人。今は新チーム誕生を前に、交流する機会を徐々に増やしている段階という。ちなみに10月現在、「苦楽園」の部員数は23人で、「神原」は26人。特に低学年が少なく、神原は人数が足りないためC級(4年生以下)の試合ができなくなっている。

「このままではチームの存続が危うい」

部員数が最も多かった2014年度の46人から7年で半減した苦楽園。2年ほど前、同じく部員減に悩む隣接チームの神原に合併を打診し、両チームの文化を尊重しながら、規約や体制、送迎の細かなルールなどを協議してきた。

苦楽園の総監督で、新チームでも総監督を務める予定の野村努さんは「私自身、子供の頃から野球に打ち込んできたので、地域から野球チームがなくなるのは寂しい。中学の野球部と連携したり、OBや保護者も巻き込んだりしながら、地域一丸となってチームを運営していければ」と力を込める。

高校野球人口、硬式は7年で2割減

かつて日本ではスポーツの中でも抜群の人気を誇っていた野球だが、少子化の影響もあって競技人口は確実に減っている。

ひとつの指標として参考になるのが、日本高校野球連盟が毎年発表している統計だ。

高校の硬式野球部員は2014年の17万312人をピークにここ数年で激減。2021年は13万4282人で、7年間で実に2割以上減ったことになる。軟式に至っては、最も多かった1990年の1万9915人に対して2021年は7898人。前年の2020年からは100人ほど微増しているとはいえ、30年間でほぼ6割も減っている。

一方、小学生の軟式野球チームは、地域ごとにある連盟や協会など、所属するリーグが統一されておらず意外とややこしい。ちなみに苦楽園と神原は西宮市内の小学校区単位で活動する組織「スポーツクラブ(SC)21」内のチームである。

西宮市スポーツ推進課によると、数年前まではSC21には少年軟式野球チームが37あったが、2020年度末時点では34に。苦楽園と神原が合併する2022年度には33になる。しかもこの中には、試合に必要な人数が揃わないチームも含まれるという。

神戸市の少年団野球リーグ、10年でチーム半減の衝撃

「うちのリーグも減ってるで」と語るのは、神戸市内の少年軟式野球チームでコーチを務める40代の男性Sさん。やはりここ数年で消滅したチーム、合併したチームが目立つそうだ。

神戸市の「少年団野球リーグ」を管轄する神戸市スポーツ企画課によると、2009年度には市内に190チーム(部員数は2814人)あったのが、なんと2021年度には94チーム(同1251人)と半減。担当者が言うには「別のリーグに移るなどしたケースもあるので、この数字通り地域からチームが消滅したわけではない」そうだが、なかなか衝撃的なデータだ。チーム数の減少は、もちろん少子化だけでなく、サッカーなど他競技の人気の高まりも影響している。

お茶当番や送迎、会計…保護者の負担も課題

部員数の減少について、Sさんは「保護者の負担」も懸念。チームでは会計や送迎、お茶の用意など、様々な業務を保護者がこなす必要があるが、これを敬遠してチームに入らない人も少なくないという。

「せめてお茶当番なんかは撤廃したいねんけど、毎年すごく『やりたがる』お母さんがいるわけ。無理にやめさせるのも角が立つから、チームの体質を変えられないままずるずる続いてしまっている。負担を嫌う保護者が子供を入れさせたがらないのもわかってんねんけど、これがなかなか難しい問題なのよ…」

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