井之脇海、初主演映画の舞台挨拶で「感無量」 オール京都ロケ「ミュジコフィリア」完成披露

黒川 裕生 黒川 裕生

音楽に情熱を注ぐ若者たちの青春を描いた映画「ミュジコフィリア」が11月、全国で公開される。天性の才能がありながら、偉大な父と兄へのコンプレックスから音楽を遠ざけて生きてきた主人公が、京都の芸術大学で現代音楽の世界に触れることで、自分の音楽や人生と向き合っていく物語。1年前にロケが行われた京都でこのほど、プレミア上映イベントが開催され、主演の井之脇海さんや松本穂香さん、山崎育三郎さんらが撮影時の思い出を振り返った。

漫画家さそうあきらさんの同名コミックが原作。「神童」「マエストロ」に続く<音楽シリーズ3部作>の完結作に位置づけられている。

9月30日にTOHOシネマズ二条であった舞台挨拶には、主人公の漆原朔(うるしばら・さく)を演じた井之脇さん、朔に思いを寄せる浪花凪(なにわ・なぎ)役の松本さん、朔の異母兄で天才作曲家として将来を期待される貴志野大成(きしの・たいせい)役の山崎さん、そして谷口正晃監督が登壇。経費削減のため、MCはプロデューサー・脚本の大野裕之さんが務めた。

井之脇さん初主演作に「感無量」

映画「夕凪の街 桜の国」(2007年)で映画デビューして以降、数々の作品に出演してきた井之脇さんは、本作が初主演作ということで思い入れもひとしお。「現場ではあまり言わないようにしていましたが、やはり不安やプレッシャーもありました。それでもこんなにも素敵なキャスト、監督と一緒に作品を完成させることができた。感無量です」と話した。

12歳のときに出演した黒沢清監督の映画「トウキョウソナタ」(2008年)が、俳優としてのターニングポイントだという井之脇さん。「当時はまだ、どこか習いごと感覚でお仕事をしてしまっていたのですが、『トウキョウソナタ』でプロの現場の厳しさを目の当たりにして、自分のできなさ、不甲斐なさを痛感しました。それで、この仕事をもっと極めてみたいと思うようになった。自分にとっては大きな作品です」

「トウキョウソナタ」でも、「ミュジコフィリア」でも、井之脇さんはピアノを演奏する役。「僕の人生において、ピアノは切っても切れないものなんだなと深い縁を感じました。特に今回は主演のプレッシャーもありましたが、ピアノが一緒だったから乗り越えることができたと思います」と笑顔を見せた。

大阪出身の松本さん「京都の新しい魅力に触れられた」

大阪出身の松本さんにとって、京都は身近な存在。それでも本作のロケで「観光地」ではない京都の新しい魅力に触れられたことに、感動したという。特に賀茂川の中洲で歌や芝居をできたことが「とてもいい経験になった」と振り返る。

演じた凪のキャラクターについては、「ちょっと変わった女の子で、いろんなことに巻き込まれながら、ギターを弾いたり、ダンスをしたり。周りの人に助けていただいて、あとは井之脇さんに愚痴もこぼしたりしながら(笑)、楽しく演じることができました」と笑顔を見せ、「皆さまにも面白がってもらえたら嬉しいです」と話した。

天才作曲家役の山崎さん、役づくり必要なし?

山崎さんが演じる大成は天才作曲家という役どころ。MCから「どう演じようと思いましたか」と問われ、「そのままやればいいと思いました」と胸を張って見せるも、客席から拍手が起こると慌てて「嘘です、嘘です。ごめんなさい、僕は天才ではないです」と打ち消して笑いを誘った。

「大成くんは自分の中にいろんな気持ちを押し込めて、笑わない人。朝ドラ『エール』の明るいプリンス役の次がこの作品だったので、笑わないように頑張りました」

「共感できない部分は多いんですが、彼の音楽家としての葛藤みたいなところは僕も音楽をやってきたのでわかる気がします。大成くんは自分だけの音楽を追究しすぎるあまり、観客や指揮者、周りの奏者と共感する音楽の楽しさを忘れているんです。『ミュジコフィリア』は、それを見つける旅だったんじゃないでしょうか」

「ミュジコフィリア」は11月12日から京都先行上映。19日から全国公開。

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