「もしかして離婚?恥ずかしいわねー」うわさ好きなご近所さんも我がコトになれば…必殺・手のひら返し!

島田 志麻 島田 志麻

これは、私の実家の隣に住む60代のうわさが大好きな女性Aさんの話です。

私は離婚をする前の数カ月、子どもと一緒に実家で暮らしていました。実家は私が生まれる前から引っ越しをせず同じ場所にあるため、ご近所さんは私を赤ちゃんの頃からよく知っている方たちばかりです。

Aさんは、私が嫁いだことはもちろん知っています。

そんな私が子どもを連れて実家に数日いることに気付いたAさんは、私の車の音が聞こえる度に、いつも窓の隙間からなにかを確認するように、私と子どものことを見ていました。

その視線にあえて気付いていないふりをして、過ごしていた数日後。ついに嫌味な言葉をかけられてしまいました。

「あ~ら、どうしたの?お母さん、具合悪いの? こんな小さな子を連れて、旦那さんと別々に住むなんて。でも、見た感じお母さんは具合悪そうじゃないけどね」

この言葉に私は、小さい頃の記憶がよみがえりました。

「そうだ、Aさんは昔から嫌味ばかり言う人だった」

しかし子どもと一緒にいるため、嫌な顔をするのはやめようと心に決めた私は「お気遣いありがとうございます!母は元気ですよ」とだけ言って、作り笑顔で車に乗り込みました。

Aさんの次なるターゲットは私の母です。

母には「娘さん、もしかして離婚したの?大変ねぇ。離婚でしょ? 恥ずかしいかもしれないけど、隠しきれないわよ」と言ってきたのです。

母はまだ私の離婚が成立していないことから「離婚はしていないけど」と笑ってやり過ごしたようです。

しかし、Aさんは他のご近所さんに「絶対離婚よ。恥ずかしいわよね」「離婚したっぽいわよ」「子どもがかわいそうよね」などと言っていました。

私が実家で生活をしてから約2カ月が経った頃、Aさん宅の駐車スペースにはAさんと旦那さんの車以外にもう1台増えていました。

私がAさんに「車1台増えたんですね」と声をかけると、「そうそう。余分に買ったのよ」と。

それ以上、私は車のことを話題にすることはしませんでした。

ある日、別のご近所さんであるBさんが私に「もしかして大変なんじゃないの?大丈夫?」と心配して声をかけてくれました。

私は正直に離婚調停中であることを伝えました。

その話を聞いていたAさんは「ほーら、やっぱりね」と得意気な表情になったのです。

するとBさんはAさんに「あなたのところの息子さんもおうちに戻ってきているんじゃない?」と増えた車を指して聞くと、一瞬Aさんの表情が強張ったのですが、「そんなことないわよ。うちの息子に限ってあるわけない、ない。そんなことがあったら恥ずかしいわ」と大声で言いました。

直後、Aさんの家から息子さんが出てきて話しだしたのです。

「俺が離婚したことがそんなに恥ずかしいなら、家から出ていくよ。近所でうわさ話ばかりしている自分のほうが恥ずかしいと思うけど。みなさん、すみません、母がいつも不快な思いをさせてしまって…」

息子さんのこの言葉に、Aさんは「離婚って勇気がいることよね。子どもを自分で育てようと決心したのはすごいわ。頑張ってね」と私の手を握り、手のひらを返したように励ましの言葉をかけてきたのです。

私は驚くと同時に、心のなかで「ウケる」と思ってしまいました。

その後、私は離婚が成立し実家の近くのアパートに引っ越したのですが、近所でAさんと顔を合わせると今でも「離婚は悪いことではないわ。相手と合わなかっただけよ」と、とてもやさしく言葉をかけてくれます。

私はその言葉にいつも心のなかで、くすっと笑ってしまうのでした。

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