2000年代に数々のサスペンスドラマに出演し「サスペンスドラマの名わき役」と称された俳優の三枝雄子さん。
しばらくテレビから遠ざかった時期があったが、2016年放送のテレビ番組「爆報!THE フライデー」(TBS)が大阪・堂山で飲食店を経営しながら関西を中心に活動していることを紹介。その後、連続テレビ小説「まんぷく」(NHK)に出演し、方言指導も担当したことが大きな話題となった。
その三枝さんがなんと13年ぶりにサスペンスドラマに復帰し注目を集めている。しかも今回はわき役ではなく主役として不可解な連続事件に巻き込まれる温泉旅館の女将役を演じ、入浴シーンまで披露。
厚みを増した妖艶かつ貫録ある演技で視聴者を魅了しているのだ。
復帰作の名は「淡路島湯けむりサスペンス劇場」。ドラマ仕立てで淡路島の洲本温泉、南あわじ温泉郷の魅力を発信するPRムービーシリーズだ。今作への出演について三枝さんにお話を聞いた。
中将タカノリ(以下「中将」):18年ぶりのサスペンスドラマ出演はいかがでしたか?
三枝:ドラマ仕立てですが1話1分の超ショートという異例の作品なので、これまでにない緊張感がありました。女将らしい貫禄は保ちつつ、リズムよく歯切れのいい演技ができるよう努めました。
サスペンスドラマによく出ていた頃は30代でまだまだ演技が硬かったですね。あの頃のイメージを期待していただいた方もいるかも知れませんが、今回のようにシリアスとコミカルの両面性ある役柄は50代になった今だからこそ出来たのかなと思います。
中将:撮影を通して印象的だったことはありますか?
三枝:コロナ禍のことなので、撮影には時間的にも環境的にも大変な制約がありました。そんな中で懸命に立ち回って良いものを作ろうとするスタッフのみなさんの姿には感動を覚えました。
共演のみなさんとの交流もとても楽しかったです。田中孝史さんは同じ事務所なので安心感がありましたし、ますだおかだ・増田さんの演技には俳優一本の方とはまた違う新鮮さを感じました。クイーン淡路のお二人は初対面でしたがお話してみると、とても素直で可愛らしい子たちでした。また撮影を通して淡路島の産物や自然の魅力にも数多く触れることができました。
旅行はもちろん人に会ったりお話する機会が減っているので、お仕事しながらストレス解消になった気がします(笑)。
中将:温泉での入浴シーンには目を見張るものがありました。
三枝:いかにもサスペンスドラマですよね(笑)。お目汚しにならなければいいんですが…。
ちなみに、あのシーンの最後で田中さんにすーっと近づいていくのは、スケボーのようなコマ付きの台に乗って動いているんです。
入浴シーンであんな動きをするのはもちろん初めてだったので「こんな仕掛けがあるんだなぁ…」と感心しちゃいました。
中将:今作への出演をきっかけに本格的にサスペンスドラマに復帰ということはあるのでしょうか?
三枝:昔にくらべサスペンスドラマの作品数が減っているのでどうでしょうか。選ばれる側なので何とも言えませんが、そんなお話があれば嬉しいですね。「今ならこんな役ができるだろうな」と思うことはあります。
中将:お仕事の近況と今後への抱負をお聞かせください。
三枝:飲食店はコロナ禍の影響でお休みしているのですが、芸能活動のほうは俳優業に加え、ラジオMCや着物関係、情報バラエティーのYouTube番組など幅広いお仕事をさせていただいています。
最近、姉のように慕っていた叔母が亡くなってショックだったのですが、あらためて自分の人生や果たすべき役割について考える機会になりました。少しでも私を必要としてくれる方たちに貢献できるよう、一つ一つ誠実にお仕事に打ち込んでいきたいと思っています。とりあえず今はこの「淡路島湯けむりサスペンス劇場」をより多くの方にご覧いただけるよう、淡路島の観光に携わるみなさんに「作って良かった」と思っていただけるようPRに努めたいですね。
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三枝さんについて、今作の制作を担当した「ヒッツコーポレーション」プロデューサーの渋谷俊介さんにもお話を聞いた。
中将:「淡路島湯けむりサスペンス劇場」制作の経緯についてお聞かせください。
渋谷:「コロナ禍でも安心して旅行できる」と注目を集めていた淡路島温泉の魅力を伝えるために、PRとしてWebムービーを制作したいと依頼を受けました。
このWebムービーは全6話あるのですが、一話一話それぞれ、淡路島の魅力を題材にした事件が巻き起こります。それを三枝さん扮する女将に解決してもらう…でもその事件の真相は…というストーリーです。ありきたりなものよりも、関西らしく面白いWebムービーにすることで、まだ淡路島の魅力を知らない人へ「楽しいそうだな」「行ってみたいな」と思ってもらえるようにと模索した結果、今回の「淡路島湯けむりサスペンス劇場」が出来上がりました。まだご覧いただいていない方は、ぜひ三枝さんの素晴らしいの演技とともに淡路島の魅力を知っていただけると嬉しいです。
中将:三枝さんを起用された経緯についてお聞かせください。
渋谷:オーディションを開催し、40名ほどの中から選出されました。三枝さんは女将役候補としてオーディションの順番がトップバッターだったのですが、素晴らしい演技があまりに印象的で、その後2日間に渡りオーディションを続けたのですが、見事、監督の心を射止められました。他にはない女将の風格というか…もしかしたら本当に女将としてお店に立たれていることで醸成されたものだったのかもしれませんね。
中将:撮影を通した三枝さんの印象はいかがだったでしょうか?。
渋谷:サスペンスらしいシリアスな演技はもちろんですが、「真剣にやってるんだけど何故か面白い」というコミカルな演技がとても絶妙で印象的でした。今作はサスペンスでありギャグでもあるという、そのあたりがとても大事だったんですけど、それが本当にお上手だなと感心していました。撮影中も三枝さんの演技でスタッフが終始笑ってたりと、楽しい現場にしていただきました。
また、四方八方にさりげなく気を配られていて、様々な現場で必要とされる女優さんだなと思いました。個人的には、撮影の道中の移動をご一緒していたので、コーヒーをいただいたり紗々(チョコレート)をいただいたり、複式呼吸を教えていただいたり、もうお友達のように接していただきました。紗々は撮影中お腹が鳴らないように、さっと食べられるので、役者としての必需品だそうです。また着物の着付けもご自身で出来るので、スタイリストさんにも喜ばれていました。
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「淡路島湯けむりサスペンス劇場」は現在、全6話がYouTube上で公開中。久々のサスペンスドラマで水を得た魚のような名演を見せる三枝さんの魅力と、深遠な文化と山海の美味あふれる淡路島の魅力が多くの人に伝わるよう願いたい。
▽「淡路島湯けむりサスペンス劇場」
https://www.awaji-onsen.com/lp/
▽YouTubeチャンネル「淡路島温泉チャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCPR-TPwVnTgIH0-bEiIoVcQ
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【「三枝雄子(サエグサ ユウコ)」プロフィール】
俳優。1969年生まれ。兵庫県佐用町出身。大阪芸術大学短期大学部デザイン学科彫刻専攻卒業。グラフィックデザイナーを経て25歳で俳優デビュー。サスペンスドラマで存在感を発揮し「サスペンスドラマの名わき役」と評された。主な出演作に「父さんは森に隠れる」(NHK)、「土曜ワイド劇場『京都B級グルメ殺人メニュー』」(ABC)、「水戸黄門」(TBS)など。近年は俳優業に加えラジオMC、ライターなど幅広いジャンルで活躍している。