「もう猫は増やさない」と決めていたのに 兄弟の亡骸に寄り添う子猫に、涙を誘われた家族の決断

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

祖父母の介護も始まるし、自分の年齢のこともある。だから、もう猫は増やさないと決めていた家庭があります。埼玉県のM家です。すでに猫は11歳と4歳の猫と暮らしており、この子たちをちゃんと見送ることが自分たちの役目だと考えていました。

それなのに4年前のこと、朝大学に向かったはずの長男からLINEがお母さんに入ります。

「猫が倒れている。拾っても良い?」

お母さんがそのLINEを見た瞬間、長男は玄関から飛び込んできました。手には2匹の小さな子猫がいるではありませんか。柄は2匹ともキジトラで、生後3週間ぐらいでしょうか。1匹はぐったりとして動きません。もう1匹は長男が床に置いた瞬間に、カーテンによじ登るほど元気いっぱい。恐らく2匹は兄弟です。

「見て見ぬふりが出来なかった」

長男はそう言い子猫たちをお母さんに託すと、急いで大学へ登校しました。お母さんは困りました。ぐったりしている子はどう見ても亡くなっています。でも、もしかすると意識を失っているだけかもしれないと思い、どんどん冷たくなる体にバスタオルをまきつけ、かかりつけの動物病院へ車を走らせます。この時、元気な子も同じ段ボール箱へ。元気な子は鳴くことも暴れることもなく、静かに兄弟に寄り添っていました。

キジトラ子猫の動物病院での診断は「死亡」。一方、もう1匹の子の方は健康そのもの。

それでも兄弟が虹の橋のたもとに旅立ったと分かるのでしょう。亡骸が入れられた段ボールの中へ入り、病院に亡骸が引き渡されるまでずっとそばにいました。それはあたかも、離れがたいと言っているかのよう。その姿はM家の人たちの涙を誘いました。

さて、泣くのはおしまい。もしかすると親猫が近くにいたり、飼い猫だったかもしれない。数日は近所に聞いてまわりましたが、何の情報もありません。だったら…。遺された子をどうするか家族会議が開かれました。お父さんとお母さんはこの時、40代後半。猫が20年生きることを考えると、引き取るのは年齢的に厳しい。それに介護もあります。さてどうしたものか…。

悩みに悩み、遂に結論が出ます。可愛い盛りの子猫を目の前にし、お父さんは言ったんです。

「来ちゃったもんは仕方ない」

元気な子がM家の一員になった瞬間でした。名前は、これでもう本当に猫は終わりという意味で「末っ子」と名付けられます。

名前がついてからの末っ子くんのやんちゃっぷりは、目を見張るものがありました。亡くなった子の分まで生きようとしているのではないかと、お母さんは感じたそう。それぐらい元気だったんですって。

M家に来た時は生後3週間ほどですから、1日3回のご飯では間に合いません。そこでお母さんは、お祖父ちゃんお祖母ちゃんの介護の合間に帰宅し、末っ子くんにご飯をあげます。もういっぱい食べるもんですから、ご飯も2匹分食べようとしているのかな?と思ったほど。

お母さんがいない間は、先住猫の2匹にお願いです。初めて見る子猫に2匹ともおっかなびっくりだったそうですが、元気な子猫と一緒にいるとミドル世代の猫たちも気分が若返るみたい。

文字通りM家の「末っ子」で猫可愛がりされている末っ子くん。いつも自分が中心にいないと嫌な子になっちゃいました。お母さんが先住猫を撫でていると、遠くからでも走ってやってきます。

「なでなでなら、ぼくでしょ。はい、ぼくをなでましょう」

とお母さんと先住猫の間を割って入ってくるんです。こんな感じですから、時々先住猫に猫パンチを食らわされることもあります。でも、末っ子くんは気にしない。

「みんな、ぼくのことかわいいとおもっているだしー」

どこ吹く風です。

こんな末っ子くんですが、お父さんもお母さんも可愛くてたまりません。この子が最後の猫だと思うと、余計に可愛いんですって。

けど、なぜか「もう引き取らない」と言っているお家ほど、猫がやって来ちゃうんですよね。それは、責任をもって可愛がろうとする気持ちが猫にも伝わるからでしょうか。不思議ですね。

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