『ワクチン不足』の考えられる理由と解決方法 ワクチン配布数と接種数<前編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

東京に12日、4度目の緊急事態宣言が出されました。 

五輪・パラリンピックや夏休みを控え、更なる感染拡大を未然に防ぐために、予防的に出された緊急事態宣言、というニュアンスが強いわけですが、飲食店をはじめ、様々な事業者の方や国民の間に、経済的・精神的困難や政府への不信感が高じていることが、深く懸念されます。

そうした中、感染拡大抑制に有用であると考えられるワクチンの『供給不足問題』がクローズアップされていますが、果たして真実はどこにあるのか、データや各所からうかがったお話を基に考えてみたいと思います。なんであれ、状況を正しく分析・把握し、原因を突き止め、解決方法を考えることが、問題解決のためには必要であると考えるからです。前編と後編に分けて解説します。今回は前編。

目次
(1) 緊急事態宣言は必要?
(2) ワクチン不足についての検証
   ・ワクチン不足の理由と解決方法
   ・今後のワクチン供給の見通し
   ・主な都道府県への、国からの配送量と接種実績
   ・2回目の接種用に、取っておくべき分

(1)緊急事態宣言は必要? 

7月8日の東京都のモニタリング会議資料によると、7月7日公表時点で、東京都の新規感染報告者数と療養者数(人口10万人当たり)は、31.8人と38.5人で、ステージ4(基準は、25人以上と30人以上)に該当しますが、一方で、病床全体の使用率と重症者用病床使用率は、26.4%と39.6%で、ステージ3(基準は、両方とも50%以上)であり、医療逼迫が問題、と言われてきたことからすると、少なくとも直近の状況が、必ず緊急事態宣言を出さねばならない状況であるか、という点には疑問の余地が無いとはいえない、と思います。

ただし、今後重症者が増え、医療に負荷がかかってくるおそれもあり、特にワクチン接種の進んでいない40~50代の重症者が増えているといったことや、デルタ株への置き換わりが進んでいること(東京都のデルタ株陽性率は、3.6%(6月中旬)から20.7%(7月上旬)に上昇)なども、注視する必要があります。

日本より感染状況がかなり悪くても、規制の撤廃に舵を切る国もあります。例えば、日本よりも状況のかなり悪い英国(人口100万人当たりで比較すると、新規感染者数は、日14.4人、英429.6人、重症者数は、日3.4人、英6.1人(7月9日時点)。ただし、ワクチン接種率は、日18%、英51%(7月10日時点))では、そうした中でも、公共交通機関でのマスクの着用やイベントの入場人数の制限、飲食店の営業等の新型コロナウイルス対策の規制を、今月19日にほぼ撤廃することが、5日、ジョンソン首相から発表されました。

なお、デルタ株の流行で感染者数が増える中での制限撤廃については、英国内に強い批判もあり、新型コロナに対して『何が正しい方策であるか』は、世界はいまだ模索中です。

飲食店等をはじめとして、倒産・失業・売上減少など、コロナ渦で大変厳しい状況にある方々に対し、「感染拡大を抑えるために必要」ということだけで負荷をかけ続けることが許される状況ではもはやなく、相応の実効性ある公的対応を取る、感染防止策とワクチン接種で正常化の道を早急に探っていく、ということも、論を俟たないだろうと思います。

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