保護猫を引き取るきっかけは「愛犬の死」と「不思議な夢」 死ぬまでお腹いっぱい食べさせてあげるから

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

いつか動物愛護活動をしてみたい。そう思う方は案外多いのではないでしょうか。大阪府に住むHさんも、「いつかは」と思っていた一人。動物が可愛いという以前に、人間がどう生きるかを突き詰めて考えると、動物愛護にいくつくのだそう。

そう考えるようになったきっかけは、一緒に暮らしていたチワワのクウくんの来歴から。彼の母親は、繁殖場出身です。そこが倒産し、妊娠したまま払い下げられたため、一般住宅でクウくんたち兄弟は誕生しました。誕生した子犬の1匹を、Hさんが引き取ったのです。

人間のエゴで狭い場所に閉じ込められ、妊娠と出産を繰り返していたことを思うと胸が痛みます。それでも何もできません。規制を求める署名をするぐらいでした。

そんな折、Hさんの父親から連絡が。知り合いの家で猫が出産したから引き取ってほしいと。飼い猫と野良猫の子供なのだそう。Hさんはビックリしました。この直前に猫を引き取る夢を見ていたからです。その猫は、キジトラ。

会いに行くと、夢で見た通りのキジトラの男の子がいました。それが、今もH家で暮らすキジトラのトムくんです。すでにお爺ちゃんになっていたクウくんと一緒にH家で暮らすことになります。クウくんはというと、初めてみる猫におっかなびっくりだったそう。トムくんは遊んでほしいもんですから、よくじゃれついていたんですって。

そんな時間も長くは続きません。トムくんが2歳の時、クウくんが老衰で虹の橋のたもとへ。この時Hさんは、家族が1匹減るだけでこんなに家が広くなるのかと寂しく感じました。

クウくんが他界し数日経ったころ、またHさんは夢を見ました。そう、猫を引き取る夢です。今度は黒猫を引き取る夢でした。目が覚めたHさんは決意します

「そうだ。保護猫を引き取ろう」

動物愛護へ関心を持つきかっけとなった子が亡くなったということは、次の段階に進めということ。幸いトムくんと一緒に暮らすことで、猫と暮らす感覚は得られています。早速、里親探しの掲示板で猫を探し始めました。

ピンとくる子がいたので保護団体に連絡をすると、またまた驚きます。とても事前審査が厳しいのです。でも、それが逆にとても嬉しかったのだそう。

「命を迎えるって、そういうことだと思います。無責任な人間でないか見極めるには、大切なプロセスでしょう」

無事に審査をクリアし、黒猫がH家でに迎えられることに。生後約半年のこの子は「ちー」と名付けられ、H家の家族になりました。

いよいよ、夢で見たちーちゃんとの暮らしが始まりますが、トムくんとは全然違います。人間の家で誕生して、生まれたころから人間を知っているトムくんと、半年間野良猫生活を送ったちーちゃん。ちーちゃんは人間をあまり信用しません。

ですから、抱っこなんてもってのほか。避妊手術はなんとかできたものの、捕まえようとすると暴れるため、実は1年以上経った今も抜糸が出来ていないのです。獣医師は大丈夫だと言ってくれていますが、気になっています。

抱っこはさせてくれないちーちゃんですが、人間が嫌いなわけではありません。Hさんと色々とお喋りするのは大好きです。「にゃー」だけでなく、「ごはん」や「おはよう」とちゃんと分かる単語もあるほど。これだけで、お互いが通じ合えるのが不思議です。

保護猫を引き取った現在、Hさんは保護団体を通じ寄付という形で動物愛護に携わっています。仕事や家事のことを考えると、今はこれが精一杯。しかし、自分だけしかできない動物愛護の形もあるのだそう。

それは、トムくんとちーちゃんに、死ぬまでお腹いっぱいご飯を食べさせてあげること。飢えさせないことが、Hさんのできる最も身近な「動物愛護」なのです。Hさんは言います。

「全ての命が尊厳を持てる時代になってほしい」

その願いが叶う日は案外近いかも知れません。

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