芥川賞にノミネート(俺が)?? 友人に借りた本にお手製の“帯”つけ返却「こんな貸し借りしてみたい!」と話題

竹内 章 竹内 章

「芥川賞・直木賞・三島賞・山本賞・本屋大賞ノミネート作」の見出し脇に小さく「俺が」、「10億部突破」と銘打った下には、目立たぬよう「してほしい」。友達から借りた本につけた手作り帯がSNSで注目されています。「正直、このまま借りパクしようかな、と思いました」「ページをめくる手が、読み終わっても止まりません。病院を紹介しろ」と愛があふれる短評も絶妙です。本好きさんゆえの粋な計らい。やっぱり書籍は紙ですね。

同志社大4年で、社会学やメディア学を学ぶsora.F (@13237sora)さんが、「友達から借りた本、かなり良かったら勝手に帯つけて返してる」とツイートしたのは、社会学者岸政彦さんと小説家柴崎友香さんの初共著エッセイ「大阪」(河出書房新社)に付けた手作りの帯。「本当にありがとう」「良すぎ×良すぎ×良すぎ」と絶賛する一方、「TikTokフォロワー4人」という突っ込み必至の哀愁情報も。

 「大阪」は、大阪で生まれ育った柴崎さんと学生時代にやってきた岸さんという異なる視点からこの街を描いた作品。2人の語りは個人的なものでありながら、鮮やかに場所と人を活写します。この「大阪」を遊び心で包む帯の画像が話題になり、「貸した本がこうやって返ってきたらうれしい」「本好き+装丁好きの心が震える」などと13万超のいいねがつきました。版元の河出書房新社の広報アカウントも「こちらこそありがとうございます」「10億部突破(してほしい)!本ですよね」と引用リツイートしています。

 以前から、岸さんが大好きで「マンゴーと手榴弾」「断片的なものの社会学」などを読んでいたというsora.Fさん。興味のある分野以外にも視野を広げようと、友達と本を貸し借りしているそうです。sora.Fさんに聞きました。

 

―この本の持ち主は

「サークルの同級生です。音楽やファッション、アートなどカルチャーの知識が膨大で、毎日本を読んでいるような友達です」

―本の貸し借りは

「数カ月前からおすすめの本を貸し借りする仲でした。彼がすすめる本にハズレはないので全幅の信頼を寄せています」

―その彼がすすめた「大阪」はどうでしたか

「読むうちにある私自身が経験してきた大阪の記憶も鮮やかに蘇ってきました。私は団地育ちなのですが、同じ団地の友達と遊んでいた近くの狭い公園、同じ階の年配の人とのあいさつ、通っていた習字教室のおばちゃん、よく買い食いしていたお好み焼き屋さんなどの記憶が再生されました。大阪で暮らしたことのある方にはぜひ読んでいただきたい1冊です!」

―返却した際、どんなリアクションでしたか

「実際に流通している帯のデザインや頻繁に記されているフレーズなどをかなり分析して制作したのですが、返却時には友人は帯の存在に気づきませんでした。その日の夜に電話があり、『意味不明なことを書いているこの帯は何だ』と突っ込まれました」 

電子出版に押され気味ですが、お手製の帯を添えてのお返しができるのは紙書籍ならではです。面と向かうと照れて口にしにくいせりふも、これなら笑って受け止めてくれそう。帯を介した奥ゆかしいコミュニケーション、本好きの皆さん、いかがですか。

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