愛猫が原因不明の病で突然死 出会ったころから「なぜ」の連続だった日々 振り返るとまばゆい光に満ちた思い出

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

愛猫との別れは、その子がいくつであっても悲しいもの。それが突然のものだったら、残された家族の悲しみと後悔はいっそう大きくなります。

大阪府に住むF家のニャン太くんも、11歳で家族と突然の別れをしてしまった猫です。つい1週間前までは元気に見えました。しかし、なぜかご飯を食べられないように。動物病院で検査をしましたが異常なし。ご飯が食べられないため、栄養剤を点滴する処置だけ受けました。

異常がなかったにも関わらず、どんどんと衰弱していくニャン太くん。血液検査の数値もどんどん悪化していきます。あれよあれよといううちに、獣医師から手の施しようがないと告げられました。

匙を投げられ絶望の淵に立つお父さんとお母さんは、ニャン太くんをそっと撫でました。少しでも温もりが伝わるように。その時、ニャン太くんはそれまでと変わらず、ゴロゴロと喉を鳴らしてくれたのだそう。それはまるで「ありがとう」と言っているかのように。

ほどなくして、ニャン太くんは虹の橋のたもとに旅立ちました。

残された家族は茫然自失です。原因が分からないまま、大切なニャン太くんを見送らなければならない。お母さんはニャン太くんが体調を崩してから、つきっきりで看病していましたから、余計にショックが大きかったそう。一体何が悪かったのか……。「なぜ?」が頭を駆け巡ります。

思えば、ニャン太くんとの出会いも「なぜ?」の連続でした。2010年5月、お父さんが仕事を終えて自転車で帰宅する途中、植え込みから猫の鳴き声が……。見ると、植え込みとブロック塀の間に頭を挟まれた子猫がいるではありませんか。

「なぜ?どうやって?」

そう思いつつも、このまま見過ごすわけにもいきません。お父さんは必死に腕を伸ばすのですが、男性の太い腕では子猫のいる場所まで届きません。すると、通りがかった女性が、私の腕なら届くかもと子猫を救いあげてくれたのです。

今度はその様子を見ていた人が、段ボールをどこからともなく持ってきてくれ、子猫を入れてくれました。そして、その段ボールを「どうぞ」とお父さんに渡してくれたのです。

「なぜ?自分に?」

いつの間にか現場責任者にされていたお父さんは、ひとまず段ボールに入れられた子猫を連れて動物病院へ。家にはすでに猫が2匹いるのに猫を拾ったなんて、妻から叱られるだろうなと思いながら。

里親を探すつもりで自宅には連れて帰らず、子猫はお父さんの実家に預けられます。ですが、「ニャン太」と名付けられたこの子猫は可愛い。1週間もしないうちに情が沸き、F家の一員になります。

先住猫のニコくんとレオくんともすぐ仲良くなり、2匹の猫の弟分として可愛がられます。実はニコくんとレオくんは仲が悪かったのですが、ニャン太くんがいると「なぜ」か穏やかに過ごせるようになったとか。

F家はなかなか子宝に恵まれなかった夫婦だったのですが、ニャン太くんが4歳のころ長男が誕生。ニャン太くんは末っ子の座を奪われると感じたのか、最初のころ赤ちゃんの長男に警戒心バリバリだったとのこと。

それでも優しい子ですから、すぐに長男のお世話を焼き始めたそうです。添い寝をしたり、遊び相手をしたり。特にボール遊びは、ニャン太くんの役目だったそう。猫なのに「なぜ」か得意なんです。投げたボールを取ってきて、手のひらに乗せてくれるんですって。

2年前、ニコくんが15歳で旅立ってから少しニャン太くんは寂しそう。が、昨年の12月に新たに2匹の子猫が迎えられたのを喜んでいた矢先の永訣。「なぜ」こんなことになったのか、今も分かりません。

家族の悲しみと混乱はニャン太くんとの別れから数か月経ち、少し落ち着いてきています。しかし、ニャン太くんに似た子と出会うと目で追わずにはいられません。

猫は人間よりも寿命が短く、別れは深い悲しみを与えます。それでも、一緒に過ごす時間は幸せ。だからこれからも猫と暮らしていきたいと、F家のお父さんとお母さんは決然として言います。

そこに「なぜ」はありませんでした。

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