事故で母猫を失い保護された子猫 里親になった決め手は、長女の「妹や弟はいらない!猫が欲しい」

渡辺 陽 渡辺 陽

アルちゃん(3歳・メス)は、母猫やきょうだいたちと一緒に老夫婦にえさをもらって生きていた。しかし母猫が事故に遭った。母猫を失ったきょうだいはTNR(T=TRAP「つかまえる」N=NEUTER「不妊手術する」R=RETURN「元の場所に戻す」)を施されたが…。

母猫を事故で亡くした子猫たち

東京都足立区内に住む老夫婦の家の庭に、餌を求めて来ていた子猫がアルちゃんだった。もともとは黒猫の母猫がえさを求めて3きょうだいを連れて訪れていた。しかし、子猫が生後2か月くらいの時に、母猫が車に轢かれて死んでしまったのだという。その後も残されたきょうだい3匹で老夫婦の庭でえさをもらって暮らしていた。

しばらくしてからボランティアが3匹の不妊手術を行った。しかし、アルちゃんは兄弟の中でも一番人懐こくておっとりしていたので、誰かに危害を加えられる可能性があった。2018年3月、アルちゃんだけリリースをせずに、保護猫としてボランティアが預かった。

妹や弟はいらない!猫が欲しい

都内在住の角村さんは、高校生の頃から大型犬を飼っていたので、どちらかというと犬派だった。しかも、自身には記憶がないが、幼少時に外で水遊びをしている時に、隣の飼い猫に引っ掻かれて背中が血だらけになったことがあったので、両親は猫が大嫌いだった。

そんな角村さんの長女は大の猫好き(当時小学2年生)だった。「妹や弟はいらない!猫が欲しい」とせがまれた。長女にひたすら懇願され続けてついに根負けした。飼うのであれば、保護猫を飼いたいという思いは最初から家族全員一致していた。早速、保護猫の情報サイトを見てみた。

保護猫を迎えるということにいまいち実感が湧かず、とりあえずどんなものか一度見てみようと思った。4月22日、軽い気持ちで譲渡会に行ってみると、そこには前もってサイトで見て気になっていた子猫、みちるちゃん(現アルちゃん)がいた。

「初対面はとても印象的。閉じ込められていたゲージの入り口を開けると、のんびり、ゆっくりと歩いて出てきて、大きく伸びをしたんです。おっとり、マイペースすぎる姿に一目ぼれしました」

家族も祖父母もアルちゃんにぞっこん

5月4日、ボランティアがみちるちゃんを連れてきてくれた。名前は長女と相談してアルちゃんにした。アルちゃんは、キョロキョロと家中を探検した後、長女が空き箱で作った小さな家にこもったり、ピアノの上から下を眺めたり、緊張しているようだった。しかし、翌日にはソファーの上でお腹を見せて昼寝をするほどリラックスし、すぐに慣れた。

穏やかで、ちょっとビビりで慎重派。起きている時はずっと可愛い声で鳴いているお喋りな女の子だ。一緒に暮らして3年、今では鳴き声で何を言っているのか分かるようになったという。

猫嫌いの祖父母にアルちゃんを預けた時、祖父母は初めこそ嫌な顔をしていたが、迎えに行くとすっかりデレデレになっていた。今ではアルちゃんと後に迎えたウラちゃんの大ファン。祖父は、アルちゃんのためにキャットタワーを作って持ってきたこともある。

アルちゃんが来てから、アルちゃん中心の生活になった。特に長女は学校での作成物が全てアルちゃんモチーフに。図工の作品はもちろん、作文の主題も夏休みの自由研究もアルちゃん、新聞委員になったので新聞を作ったが、記事の内容もアルちゃんだった。“アルちゃん漬け”の毎日なのだという。

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