母乳にありつけないキジシロの子猫を保護 エプロンのポケットの中で、カンガルーのように育つ

渡辺 陽 渡辺 陽

タビーちゃん(9歳・メス)は、民家の敷地に住み着いた野良猫の母猫が産んだ子猫だった。他の兄弟姉妹に押しのけられ、あまりミルクを飲めなかったので、だんだん弱っていった。ずっと様子を見守っていた田沼さんの母親は、子猫を放っておくことができなかった。

ミルクにありつけない子猫

2011年7月、千葉県在住の田沼さんの実家の敷地に、野良の母猫と5匹の子猫が住み着いた。物置で出産したようだった。母猫は母屋の玄関先にゴロンと横になって授乳していたそうだ。授乳している様子を田沼さんの母親が見ていると、いつも1匹のキジシロが他の猫にはじき出されて、母乳にありつけていないようだった。

そのうち、きょうだいたちに比べて小さく、ガリガリになり、ヨタヨタ歩くようになり、田沼さんの母親は心配になった。猫嫌いの夫に頼み込んで「このままだと死んでしまうから元気になるまで面倒見させて!」とお願いし、保護することにしたという。

身体を洗うと湯が真っ赤に

いつものように母猫が子猫たちに授乳している時に、その子猫だけを抱き上げて保護。母猫も田沼さんの母親に慣れていたようで警戒しなかった。

「子猫の身体を洗うと洗面器に張った湯が真っ赤になり、本当にびっくりしたそうです。どこかけがをしているのでは?と体中をチェックしたそうですが、どうやら、ノミの糞で赤くなっていたようです」

ノミをきれいに取り除き、タオルにくるむと子猫は寝てしまった。

1~2日はほとんど何も食べなかったが、3日目からはミルクを飲んだり、ごはんを食べたりした。田沼さんの母親は、エプロンのポケットにタオルを入れてその中でカンガルーのように子猫を育てた。

大きくなってからはサンルームのようなところで飼っていたが、母猫がのぞきに来ていた。そのうち母猫と子猫1匹になり、田沼さんの母親は、「野良猫が生きていくのは大変なのだなと…、本当は親猫もその子猫も引き取りたかったけれど、飼えず、ごめんね」と涙を流したという。

普段はツン、でも頼る人は?

数年後、田沼さんの父親が脳出血のため寝たきりになってしまい、入院が長引いて母親が看病のため忙しくなったので、猫は田沼さんが引き取ることになった。2015年3月3日、ひな祭りの日に車で迎えに行きった。

タビーちゃんは3歳8カ月になっていた。

「もう大人の猫なのにとても小さくて、体重は1.8キロでした。人に慣れない感じで、野生が強いんじゃないかと思いました。でも顔がハチワレで、丸い顔にパッチリお目目でとてもかわいかったんです」

タビーちゃんは警戒心からか体を低くして移動し、隠れていることが多かった。抱っこをせがむこともなく、人に甘えることもなかった。性格はほぼツンだが、ひと月くらい経つと田沼さんと長女には心を開いた。

「夫にはなかなか慣れなかったのですが、タビーは具合が悪くなった時、ずっと夫のそばにいたんです(笑)寝る時も股のところで丸くなっていて、猫ベッドに連れていっても、すごい勢いで戻ってきてぴょん!とまた股のところに入ってしまいました。男(雄)の人を頼りにするんだなあと思いました」

愛娘タビーちゃん

タビーちゃんは、田沼さんのことをお母さんと思っているようだ。長女とは友達感覚、息子のことは下に見ていて、脅かしたりいじわるしたりする。夫は都合のいい人なんだという。

「初めはかわいそうだからと引き取りましたが、今やタビーのいない生活は考えられません。というかタビー中心の生活になっています(笑)。猫のしぐさや行動をみていると1日に何回かわいい、かわいいと言うか分からないくらい。1日に1人20回は言っているのでは」とすっかり“猫バカ”“タビーバカ”になっている様子。

長女は芸術系の大学で絵の勉強をしているが、受験勉強や辛い時にタビーちゃんがいなかったら「乗り越えられなかったかも。アニマルセラピーのようだ」と言っているという。デッサンの勉強のモデルにも猫はうってつけ。田沼家には何枚もタビーちゃんの絵があるという。

田沼さんにとって、タビーちゃんはかわいい末娘。「お風呂に入っている時は、心配なのか、私の時だけずっと浴室のドアの前で待っているんです。私が外出するととってもさみしそうな声で鳴くそうで、それを聞いてから外出しづらくなってしまいました」。夫はとてもかわいがっているが、タビーちゃんからの愛は少なめ(笑)おやつと遊びたい時だけスリスリする。

家族みんなを癒しているタビーちゃん。もうすぐ10歳だが「長く、長く生きて欲しい、健康でいてほしい!」と、田沼さんは願っている。

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