有森裕子さんも感激「絵に壁はない」子どもたちが描いたパラスポーツの絵でトラックをラッピング、全国を疾走

山中 羊子s 山中 羊子s

 8月24日開幕の「東京パラリンピック」を盛り上げようと、子どもたちが描いた障害者スポーツの絵をラッピングしたトラックがいま全国各地を走り回っています。これは2020年3月に始まった「FUN FUN FUNプロジェクト 2020-2021」の一環。公募で選ばれた103点の力作が30台のトラックを色彩豊かに飾り、道行く人を楽しませています。

子どもたちの絵画で障害者スポーツを応援

 子どもたちが描いたパラスポーツやパラアスリートの絵で障害者スポーツを応援しようという活動が始まったのは2020年3月のことでした。「FUN FUN FUN プロジェクト2020-2021」と名づけられたこの試みは、障害者スポーツを支援するNPO法人ASSC(アダプテッドスポーツサポートセンター)と、子どもたちの絵やメッセージを運送用トラックにラッピングし、交通安全の普及を目指す「こどもミュージアムプロジェクト協会」とのコラボ事業です。

 絵は小学生までの子どもたちを対象に公募されたもので、2020年9月から12月までの3カ月間で500点以上の応募があり、最優秀賞3点、優秀賞、佳作、入選など全部で103点の受賞作品が決定。この3月24日には大阪市中央公会堂で表彰式が開かれました。またトークショーも行われ、審査員も務めたバルセロナ五輪女子マラソン銀メダリスト、有森裕子さんも出席。パラスポーツの意義や魅力にふれました。

 最優秀賞を受賞した金園光里(ひかり)さん(未就学)らの作品からは、パラアスリートの躍動感があふれ、鮮やかな色づかいと力強さが訪れた人々を驚かせました。また光里さんの兄・瑛太さん(小学生)も同時に最優秀賞を受賞。父・泰正さんは「すごい、わが子ながらこんな才能があったんやと思いました。受賞の知らせを聞き、初めて子どもの絵を見た時は、えらい(上手い)もん描いたなと感心しました」と兄妹そろっての受賞を喜んでいました。

絵をきっかけに障害者スポーツへの関心度を高めたい!

 今回のプロジェクトを主催したASSCの浦久保康裕理事長も満足顔。「われわれの想像を超えるたくさんの絵が集まり本当に喜んでいます。これからも子どもたちの絵をきっかけに家族みんなでパラスポーツに関心を持ってもらいたい」と手応えを感じている様子でした。

 会場前にはラッピングトラック8台がスタンバイ。子どもたちの絵をトラック後部にラッピングし、運転手や後続のドライバーに交通安全のメッセージを届ける「こどもミュージアムプロジェクト」を続けてきた同プロジェクトの代表で、宮田運輸の社長でもある宮田博文さんは、トラックの出発式を前に「きょうがスタートです。ラッピングされた絵が日本中に元気を届け、多くのパラスポーツを知ってもらい、パラアスリートを応援するきっかけになれば」と意気込んでいました。

 審査員を務めた有森さんも感激の面持ちでした。「私はもともとスポーツより美術が好きだったんです」と笑顔で前置きしたあと「今回の絵はどの作品にも飛び出してくるようなパワーがあり、明るい色づかいからも溢れるエネルギーをもらいました」と語りました。

 さらに、スペシャルオリンピックス(知的障害者が参加するオリンピック)の理事長であり、日ごろから知的障害者とも交流のある有森さんは、健常である子どもたちが障害者スポーツを描くという試みについて「子どもさん自身は気づいていないかもしれないけれど、絵の審査をしていると(アスリートの気迫が)伝わってくるんです。まだまだスポーツには(障害者と健常者との)壁があるんですけど、絵による表現には壁がないんだと思いました」とも語ってくれました。

 子どもたちの絵を掲載したトラックは、いまも東北から九州まで日本各地を走り回っています。もしかして、目にする機会があるかもです。そのときはほんの束の間、東京パラリンピックに思いをはせてください。

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