「深夜特急」ファンなら必見!?旅情かきたてられまくり…世界の“ホテルラベル”を集めたサイトがエモすぎる

竹内 章 竹内 章

ネットの魅力は思いがけない世界との出会い。国内外のホテルラベルやタグラベルをカバーしたサイトがSNSで“発見”されました。モダンなデザイン、その地の魅力が詰まったイラストに旅情をかき立てられたのでしょうか、「週末に再度ゆっくり見よう」「ネットサーフィンという言葉を思い出す。こういうサイトを巡るのが楽しかったんだよなあ」「昨今はびこるイカガデシタカ記事の数億倍の情報密度、そして愛」と心ときめかせるユーザーが続出。私見ですが、沢木耕太郎さんの「深夜特急」に没頭した皆さん、必見です!

サイト「The world of HOTEL LABEL」は、誰もがあこがれるラッフルズホテル(シンガポール)など海外ホテルのラベルや日本のホテル・旅館のタグラベルなどを幅広く掲載。加えて絵葉書やパンフレットでホテル史にも触れています。「全デザインがほんとに最高...」とあるツイッターユーザーが3月下旬につぶやくと、「なにこれ最高!」「あぁ、すばらしい」「よよよ良すぎる」と息をのむ人が続出。1万超のいいねが寄せられました。このサイトを運営する三枝浩さんに聞きました。

三枝さんによると、海外のホテルラベルの発行の歴史の始まりは20世紀初頭。ほとんどが高級ホテルで、トランクに貼ることが旅行者のステータスの証になりました。今でこそそうした習慣はほとんどなくなりましたが、デザインは色あせることなく、コレクターはこぞって逸品を求めます。一方、日本では戦前はどのホテルもラベルを発行しましたが、戦後になると交通手段の発達、旅行の大衆化によってタグ式に変わり、独特のタグラベルが生まれました。

サイトは、インド、インドネシアなどアジアを中心にカバーしていますが、特に目を引くのが北欧のノルウェー。黄の外観や赤の大屋根でホテルを描く大胆な配色は、描写力や構成力も相まってアート作品ともいえそうです。中国東北部に建国された旧満州国に展開された満鉄ホテルチェ-ンのヤマトホテルも網羅。歴史に消えた当時の宿の風情をしのぶことができます。神戸の旧オリエンタルホテルなど、今はなきホテルの歴史を貴重なパンフレットでたどる解説ページもあります。 

―圧巻の情報量です。

「日本のタグラベルは2500枚ほど。海外のラベルはその10倍近く所有しています。サイトを開いたのは2009年で、当時は主に日本のラベルをアップしていました。国のタイトルだけ作りながら、手をつけられないまま10年たってしまいました。英国のトラストハウスホテルズについては、運よくほとんどが手に入りました。同じ系列ならラベルデザインが同じという点で興味深いです」

―ラベルとの出合いは。

「2007年頃、ヤフオクで、旅館票集と手書きで書かれたスクラップブックを入手しました。そこには、日本の旅館、ドイツのホテルなど、その人が旅したホテルで得たラベルが貼ってありました。その中で、初期のホテルニューグランド(1927年開業の横浜の老舗ホテル)がありそれが始まりでしたね」

―ノルウェーのカラフルなラベルは絵画のようです。

「昔の日本の旅館ラベルはせいぜい名前だけですが、欧州は絵画的なデザインですね。ラベルは本来宣伝手段のはずですが、ラベルそのものの魅力を描くのが主流になっている初期の海外ものはやはり見入りますね」

―コレクションだけでなく、ホテル史の記述もあります。

「集めるだけではなく、そのラベルの由来、元のことを知りたくなります。ホテル史の書籍を読み、ラベルと結びつけることができました。歴史の話にはこうしたラベルの話題は登場しません。ホテルの歴史を知り、当時を想像し、著名な人達が宿として留まった場所に行ってみると、感慨もひとしおです」

―ホテルラベルが廃れてしまったのが残念です。

「ホテルマンにお尋ねしても、ピンとこない様子ですね。ホテルの歴史を記録してほしいという願いを込め、ニューグランドや軽井沢万平ホテル、奈良ホテルなどに集めたラベルをパネルにして無償提供しています。喜んでいただいているようです」

―SNSで注目されました。

「完成できていないとことが、複雑な思いです。次に手をつけるとしたら、フランス、イタリア、アメリカを考えています。ラベルをきっかけにその地をネットで調べるだけでも旅した気分になれます。私が覚えた憧れや感動を共有してもらえればうれしいです」

三枝さんのコレクションの中には、歳月を感じさせないきれいな状態で香水の匂いが残るラベルもあるそうです。手にした人が大切に保管したのでしょう。旅の思い出を形にしたいのは今も昔も変わりないはず。この素敵な風習が復活してほしいですね。

 The world of HOTEL LABELのサイトはこちら→ http://www.hotel-label.com/

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