レンタカーと寝台列車を使い、14日間でアメリカ横断の旅をした夫婦のコミックエッセイが話題です。ネット上には「コロナの今だからこの本で旅が体感できた」「久々の旅気分が味わえてワクワク」「コロナ後の旅のイメージトレーニングができた」などの感想が並びます。
「ウルトラクイズ」「なるほど!ザ・ワールド」に憧れて…
アメリカ西海岸のロサンゼルスからアメリカ最南端サザンモストポイントまで約4536Kmの距離をレンタカーと寝台列車「サンセットリミテッド号」で移動したのは漫画家の山本ありさんご夫婦。
山本さんは子どもの頃にテレビで見た「アメリカ横断ウルトラクイズ」や「なるほど!ザ・ワールド」の影響で、アメリカ横断が夢でした。一方、夫は映画や文学などで知った、アメリカ文化の古典的なテーマ「ロードトリップ(移動する)」を体感してみたかったといいます。
行きたい理由は違えど、アメリカ横断への熱い思いは人一倍の2人。ですが、夫は日本国内でも運転するのは年に2、3回程度、海外での運転も初めて。一方、山本さんはペーパードライバー。英語力は日常会話レベル。このスペックでアメリカ横断ができることに勇気づけられる人もいるかもしれません。
空港に着いたら…スーツケースがない!
2人の旅はロサンゼルス空港到着直後、山本さんのスーツケースが行方不明になるロストバゲージで幕を開けます。クラクションの洗礼を受けながらロス市内を車で移動。スーツケースが届いていないか期待しながら初日の宿、モーテルに到着するも「届いてないよ」。初っ端から手に汗握ります。
文豪ヘミングウェイ愛猫の子孫とご対面
ど迫力のドジャー・スタジアムでメジャーリーグの試合を観戦し、7回裏の野球ファン愛唱歌「Take Me Out to the Ball Game(私を野球に連れてって)」の大合唱に感動。
信号のない荒野の一本道ではドライバーズハイになり、3時間270kmの距離をノンストップ。寝台列車では行列レベルのグルメを3食堪能したり、ジャズ発祥の街ニューオリンズでは本場のライブに感動したり。
文豪ヘミングウェイが晩年を過ごした邸宅にも訪れます。50匹近くの猫たちが自由気ままに暮らす優雅な猫屋敷には猫のために作った豪華な水飲み場があり、中には文豪のベッドで爆睡する猫ちゃんも。
ヘミングウェイには「幸運の猫」と呼ばれる6本指の愛猫がいましたが、その子孫との対面も果たします。「猫欲満たされた」と満足そうな山本さん。猫好きさんには外せないスポットかもしれません。
旅の途中、夫のひと言が沁みます。
「観光地を巡ったり、おいしいレストランを調べて何軒もハシゴするのも楽しいけど 時間をかけてその国の空気や文化を感じる… これがアメリカ横断の醍醐味だよね」
旅費やお役立ちグッズも公開
お役立ちコラムでは、横断旅に便利なグッズやレンタカー予約のアドバイス、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの楽しみ方などを紹介。旅費や現地で役立ったサイトなども公開しており、より具体的な計画が立てられそうです。
著者「次の旅のメモ、始めています」
山本さんが旅をしたのは2018年秋のこと。旅の記録を1冊にまとめたらまた新たな旅に出ようと思っていた矢先、世界中が新型コロナウイルス感染拡大に襲われます。今は「自由に旅ができるのは、世界が平和な証」と感じる毎日といいます。山本さんに聞きました。
ーーコロナ禍の今、どんな人たちに読んで欲しいですか。
「非日常を味わいたいと思っている方にぜひ読んでいただきたいです。もちろん『旅行に行きたい!』と、うずうずしている方にも読んでいただきたいです」
ーーアメリカ横断を夢見る人たちにアドバイスを。
「時間がある今こそ、宿泊したいホテルや現地ツアー、観光地、名物の食べ物などを調べて、自分なりの旅程を作るとよいと思います。アメリカ横断はある程度スケジューリングして行ったほうがよいかと…想像以上に広いので。ちなみに私も次に旅に行きたい国の観光地やレストランなどメモしています。うふふ」
▽「アメリカ横断 我ら夫婦ふたり旅」山本あり著、産業編集センター、1300円(税抜き)