腕の中に入ってきた弱々しい子猫 「蝶よ、花よ」と育てられ、我が強いワガママ猫に

渡辺 陽 渡辺 陽

コハルちゃん(7歳・メス)は、キャッテリー(猫の飼育と繁殖を行う場所)にいた。兵庫県に住むNさんは、猫を飼いたいと思ってキャッテリーを訪れたが、キャッテリーの自宅兼事務所に漂う悪臭や、今日中に契約しないといけないという条件など、なんとなく腑に落ちない感じがして不安になった。

 

キャッテリーで子猫が腕の中に

2014年2月末、兵庫県に住むNさん夫妻は、関西のとあるキャッテリーを訪れた。キャッテリーとは、ショーに出せる猫など、血統のいい猫を産ませて育てるブリーダーのような所で、高く売れない猫はペットショップに流れるという。

Nさん夫妻は、いつかペットを飼いたいと夫婦で話していた。人間の平均寿命 − 室内飼育猫の寿命 − 身体的・金銭的余裕= そろそろ飼い始めなければならないということになり、猫を飼うことにしたそうだ。

Nさんは、キャッテリーの自宅でもある一軒家の玄関に入った途端、あまりの悪臭に思わず息を止めた。通された部屋に3匹の子猫が連れてこられて、その中から選ぶという流れになっていた。

「オーナー夫妻はお世辞にも感じがいいとは言えず、家中に悪臭が漂い、正直なところ印象は良くなかったんです。キャッテリーとの連絡は夫任せにしていたので、その日に決めて契約まですることも知らず、え?もう決めてしまうの?持ち帰ってちゃんと考えへんの?という感じでした」

Nさんは、「このキャッテリー、ほんまに大丈夫なんかな…」と不安になった。すると、Nさんがテーブルの上に置いた両腕の中に、1匹の子猫が入ってきてちょこんと座った。

「単なる偶然かもしれないのですが、私が選ばれたと思い、『ウチに来る?』と聞きました」。返事は無かったが、話が終わるまでずっとそのまま座っていた。

子猫はおとなしくて弱々しい感じがした。他の2匹は部屋中を走り回り、追いかけっこをしていたが、腕の中の子猫は倍の体格差がある猫についていけず、時には突き飛ばされ、まるで小さな置物のようだった。

「もしかしたら怖くて私の腕の中に入ったのかもしれません」

弱々しく、元気がなかった原因は猫風邪

1週間後、月齢約100日になった子猫を迎えに行った。キャッテリーのオーナーは、「1回目のワクチンのついでにお腹の虫も駆虫した」と話した。Nさんは、「虫?なぜキャッテリーにいたのに虫?」と、心の中で繰り返した。

誕生日が11月末なので、その頃の季語から名前を探しました。ほんわかした名前にしたかったので、小春日和にちなんでコハルちゃんと名付けた。

コハルちゃんは猫風邪をひいていて、そのせいで元気がなかったのだと分かった。お腹にいた虫に栄養を取られていたので、生後3カ月で平均体重の約半分の600gしかなかった。Nさんは、風邪の治療と駆虫のため、2カ月以上にもわたり動物病院通いをすることになった。

軟便体質で、病院を変えて各種検査を受けたが、確定診断には至っていない。それ以外は吐き癖があるくらいで元気にしているという。

おっとりさんだが、猫は嫌い

コハルちゃんは、5歳になるまではひとりっ子状態で、「蝶よ、花よ」と育てられ、我が強い猫になった。基本的にはおっとりしていて、運動音痴。ただ、後から迎えた千歳ちゃんには手厳しい。

「何度か保護団体から子猫がトライアルに来ましたが、2週間の期限では仲良くなれず失敗の繰り返し。少し我儘に育ててしまったかもしれません。母性本能はゼロです」

コハルちゃんを迎えて家族の会話が増え、雰囲気も明るくなった。すべて猫優先の生活。旅行もしなくなり、家具などの配置も猫の生活に合わせているという。

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