コロナ禍で気になることがある。スポーツとマスクの関係だ。競技の際にマスク着用は可能なのか。競技中は難しいが、その前後では着用を徹底するのか。さらに気になるのが「水とマスクの相性」。競泳での対策はどうなっているのか?政府のエライ人がコロナ禍の長期化に対して「いつまでマスクやるの?」と愚痴をこぼしたと報じられたが、この時代、プールでもマスクは必要なのである。ということで、「プール用マスク」を開発した水泳用品メーカーの「フットマーク株式会社」(本社・東京都)の担当者に話を聞いた。
スイミングクラブでは実際に泳ぐ時間よりも、指導者の話を聞く時間、順番を待つ時間が多くの割合を占め、そこではマスクをしていない状況で少なからず会話も生まれる。コミュニケーションをとりながらも安心して水泳に取り組めるようなアイテムが必要とされていたが、シャワーを浴び、プールサイドに足を踏み入れてからは、なかなか対策が取ることが難しい現状があった。そこで飛沫対策として開発されたプール用マスクは、装着することでプール内での飛沫の拡散を軽減。感染予防効果が期待できるという。
同社では「待ち時間や指導者の話を聞く際、プールサイド、シャワー室などではマスクで鼻口部分を覆い、泳ぐ時は首に掛け外して使用します。最大100センチ伸縮するスパイラルコードがゆるやかなフィット感と、子ども1人でも着脱が簡単に行える仕様になっています」と説明した。
とはいえ、やはり泳ぐ時はマスクを外すことになる。息継ぎの負担になることもその要因だ。同社広報室の吉河祐子さんは当サイトの取材に対して「本製品のコンセプトは『誰もが、安全に、簡単に』であり、本体素材については柔らかいものを使用しています。泳ぐ時に装着していると、息継ぎ時にマスク本体が呼吸の妨げになる可能性があり、安全面を考慮してこのような仕様にしました。さらに、泳いでいる時に首にかけたマスクが、顔の方に上がってこない仕様になっています」と解説した。
泳ぐ時はマスクを外すということで、個人差はあるが、口から唾液が水中に出ることは避けられない。万一、無症状でコロナ感染している人が唾液を水中に出したとしても問題のない対策がプールでは講じられているのだろうか。
吉河さんは「本製品によって無症状の感染者が人から人への飛沫感染の可能性を低減できるように、無症状の感染者が吐き出す飛沫はマスクによって下方向に落ち、落ちた飛沫(ウイルス)はプール水によって不活化し、マスク本体に付着した飛沫もプール水によって不活化する効果が期待できます」と説明。一般社団法人日本スイミングクラブ協会では、塩素消毒と併せて、適正な湿度(50-70%)を保つことでプール施設内は感染リスクが低いとしている。
現時点で、7月には東京五輪が予定されている。五輪だけでなく、競泳の国内外の競技大会でも、こうしたマスクが導入される可能性はあるのか。ボウリングなどではマスク着用で競技をしているが、さすがにマスクをした状態で泳ぐことは難しいだろうか。
吉河さんは「競技会において、競技直前までマスク着用をルール化していますが、レース直前はキャップで耳まで覆っていたり、ゴーグルもしていたりと一般のマスクの着用には工夫が必要かと思います。アップ会場や競技終了直後などマスクをしていない場面も多くみられます」と指摘。その上で「本製品のコンセプトは『誰もが、安全に、簡単に』でもあるので水に関するあらゆる場面で着用いただけるとより安心できる環境になると考えています」とした。
サイズは子どもから大人までを対象にS、M、Lの3種類、3色(税込550円)。既に大手スポーツクラブのプール施設で採用が決まっており、当面はスポーツクラブなどの法人、教育機関、官公庁などに提案していくという。個人向けの販売は5月頃を予定している。