ゴミを漁って生きていたダブルキャリアの猫を保護 猫のためにアパートの一室を借りてお世話

渡辺 陽 渡辺 陽

大分県に住むゆうみんさんが保護した猫のなかで忘れられない猫がいる。エイズと白血病のダブルキャリア、にゃんちゃん(オス、当時推定3歳)だ。ゴミ捨て場で残飯を漁っていたにゃんちゃんを見た時、容貌からキャリアかもしれないと思ったが、まさかのダブルキャリアだった。

 

ダブルキャリアと知って愕然

ゆうみんさんは、2012年の春先、アパートのゴミ捨て場の生ゴミを漁っているキジトラの成猫を度々見かけるようになった。痩せ細って毛並みの悪い姿を見て以来、いてもたっても居られず、保護する決心をした。アパートの大家さんに、「ゴミを漁りをしている野良猫がいるので、慣れさせて保護したいと思っています。慣れるように餌やりをさせてください。猫のトイレの世話も毎日見回りをしてきちんとします。保護するまでは、アパートまわりの花壇や中庭の草取りは私がします」とお願いして、餌やりの許可をもらい、実際、餌やりを始めた。保護できたのはお盆前だった。

保護してすぐに動物病院に連れて行って検診してもらったところ、ダブルキャリアと判明。「その姿からエイズキャリアだろうとは思っていましたが、白血病にも感染していると聞いて、愕然としました。でも、保護したからには幸せにしてあげたい、ダブルキャリアならなおさら幸せな余生を過ごしてほしいと思いました」。名前は最初に見かけた時に「にゃんちゃん」と呼びかけたので、「にゃん」にした。

子猫とダブルキャリアの猫

ゆうみんさんは、にゃんちゃんの幸せのために自分にできることは何だろうかと考えた。当時3匹の猫を飼っていたゆうみんさんは、成猫同士だから、先住のちびりんたちとにゃんちゃんが仲良くできないかもしれない。万が一ケンカになったら、ちびりんたちが感染してしまうリスクもあると思い悩んだ。ゆうみんさんは、にゃんちゃんのために、近くにアパートをもう一部屋借りて、そこで世話を始め、二つの家を行ったり来たりすることにした。

2016年12月26日、ゆうみんさんは年越しの準備のため買い物に行こうとした。駐車場で自分の車の下に子猫がいるのを発見し、保護した。あずきちゃんという名前にした。どちらの家で子猫のあずきちゃんの世話をするべきか、ゆうみんさんは悩んだ。

「他の猫よりにゃんの方が体調を崩しやすいので、当時はにゃん中心の生活になっていました。にゃんの部屋で暮らす時間の方が長く、あずきもまだ子猫なのでケアが必要です。獣医師に相談して、あずきには猫白血病ウィルス感染予防ができる5種ワクチンを接種して、にゃんと一緒のアパートで世話をすることにしたのです」

あずきちゃんが1歳になるまでは、同じ部屋では過ごさせないようにした。時々、お互いの存在を認識させるため、あずきちゃんを透明パネルを取り付けたケージに入れてから、必ずケージ越しに対面させた。

あずきちゃんが1歳になり、3回目の5種ワクチン接種を完了してからは、主治医と相談しながら徐々に2匹を会わせた。あずきちゃんには毎年欠かさず5種ワクチン接種して、徹底的に感染予防を施した。にゃんちゃんはとてもあずきちゃんを可愛がり、2匹は一緒のベッドで寝たり、キャットタワーの最上階で日向ぼっこをしたりした。

にゃんちゃんとあずきちゃんの絆

にゃんちゃんは、保護から6年後、リンパ腫でこの世を去った。保護時の推定年齢は3歳だったので、わずか9歳でこの世を去ったことになる。にゃんちゃんと暮らした6年間は、病気との闘いだった。繰り返す歯肉炎、口内炎による前抜歯。耳の奥の腫瘍摘出。慢性腎不全。保護6年目の夏に、腹部リンパ腫発症。抗がん剤治療しか方法はないが、慢性腎不全のにゃんにはリスクが高く、効果があるかどうか分からないと言われた。

「保護してからずっと、体調を崩すたびに何度も入院し、腎不全による脱水予防の皮下補液のために、毎日身体に針を刺し続けてきたにゃんにこれ以上、辛い治療はさせたくありませんでした」

幸いリンパ腫による痛みはないようで、痩せてはきたが穏やかに暮らしていた。「にゃんにとって、あずきの存在は大きかったと思います。私が仕事や子供達の家に帰るため留守にしている間、寂しい思いをしなくて済むと思いました」

実際、本当に2匹は仲良しで、いつもくっついていた。

にゃんちゃんが亡くなる日も、ゆうみんさんに抱かれたにゃんちゃんが息を引き取る瞬間まで、あずきちゃんはそばで香箱座りをして、じっとにゃんちゃんのことを見つめていた。にゃんちゃんが最後に大きく息をして静かに息を引き取ると、あずきちゃんはそっとにゃんちゃんに近づいて匂いを嗅ぎ、顔や身体を舐めていた。

にゃんちゃんは2018年12月23日の朝4時過ぎに息を引き取ったが、午後の葬儀の時間までの間、あずきちゃんはにゃんちゃんの側から離れなかった。

にゃんちゃんはエイズや白血病を発症しなかったが、ゆうみんさんは、念のためあずきちゃんのウィルス再検査をした。結果は陰性だった。現在、あずきちゃんは、ちびりんたちが暮らす家で、先住猫たちとほどよい距離を保ちながら穏やかに暮らしているという。

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