芸歴20年超えの女優・福田麻由子、「天才子役」と言われつづけ…そのコンプレックスにさよならできた理由とは?

石井 隼人 石井 隼人
福田麻由子、天才子役も26歳(撮影:石井隼人)
福田麻由子、天才子役も26歳(撮影:石井隼人)

葛藤を抱いていた中で出会ったのが、大学時代に是枝裕和のもとで学んだ宮崎彩監督の長編デビュー作『グッドバイ』。離れて暮らす父親への思いを日に日に強めていく主人公・さくらを演じた。実はこの作品、3年前に撮影されたもの。当初は公開のめどすら立っていなかったが、「映画を作りたい!」という思いだけを抱く20代前半のスタッフたちが集い、完成にこぎつけた情熱的背景を持つ一作だ。

「みんな何かの武器を持っているわけでもないし、大手の会社に所属しているわけでもない。この映画を作りたいという熱い気持ちひとつでやっていました。よく“気持ちだけではダメだ”と言われることがあるけれど、私はこの作品を通して“そんなことはないぞ!”というものを目の当たりにしました。そして自分と同世代の仲間たちに負けてはいられないと、奮い立たされました」。

さくらは福田を想定して描かれたキャラクター。女優業を長く続けた福田の実績が、役柄のイメージを膨らませる一助になったのは事実だ。「宮崎監督は私にはない力強さでゼロから企画をスタートさせ、無事に完成させました。監督と年代の近い私はそこにはまだ敵わないところもあるけれど、別のルートで歩んできた私が力を合わせたからこそ生み出すことができたとも思います。恵まれた環境にいるからこそ、変に自分に足りないモノはなんだとかマイナス面にばかり目がいってがんじがらめになっていたけれど、子役時代に学んだ貴重な経験は何物にも代えがたいものだと実感しました」。

コンプレックスにグッドバイはできたが、恵まれた環境に甘んじる気はない。「事務所の先輩の作品に出演させていただくことが多々あって、もちろんありがたいことです。でもその支えに甘んじて恵まれた環境を“当たり前だ”と受け入れたら、大事な筋力が衰える。前を見なくても歩けてしまう環境にいるからこそ、自分の目でちゃんと見ながら歩かなければいけないと肝に銘じています」。天才子役という肩書きにピリオドを打った一人の若手女優は、自意識をしっかり持って気持ちも新たに第二章のページをめくっている。

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