「コロナがなければ、関東のあの大学に進学できたかもしれないのに」翻弄される受験生と家族たち

長岡 杏果 長岡 杏果

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、大学受験シーズンが佳境を迎えています。2月25日からは国公立大学の2次試験が始まりました。昨年からコロナ禍が受験生に与える影響は大きなものでしたが、今年はさらに過酷な状況に置かれている受験生も少なくありません。

今回取材を受けてくれた福井県在住のAさん(40代、保育士)には、今年大学受験に挑む高校3年生の息子Bさんがいます。Bさんは関東にある国立大学への進学を目指し、毎日勉強に励んでいました。しかしコロナ禍における環境が彼の進学への道筋を大きく変えてしまいます。

2020年4月に発令された緊急事態宣言による影響

2020年まで行なわれていた「大学入試センター試験」が2021年より「大学入学共通テスト」へと変更になりました。これまで出題されていた問題と傾向が変わることから、今年の受験生はその対策も行う必要がありました。

しかし2020年4月に緊急事態宣言が発令され、学校は休校、もちろん学習塾も休校となり誰もが不安や戸惑いを抱える中、とくに学習面で大きな影響を受けたのは受験生です。

Bさんにとって一番辛かったことは孤独との闘いだったそうです。突然起こった環境の変化に戸惑うBさんをそっと見守っていたAさんもまた戸惑いの中にいたと話してくれました。

新型コロナウイルスの第三波による影響

緊急事態宣言が解除された後、少しずつ感染も落ち着いてきましたが、11月下旬になると日本全土に新型コロナウイルスの第三波が到来しました。

この時期は志望校を検討し、受験科目を絞っていく学生も多くいます。しかし関東の一部の大学ではコロナ禍の中リモート授業を継続している大学があることや、そもそも関東への進学は感染や環境に対するリスクが大きいのではないかとさまざま意見を耳にし、Bさんは進路について迷いが生じてきたのです。

志望校の二次試験中止の発表

Aさんは親としてコロナ感染は心配だけど、したいことがあるならばとBさんの気持ちを尊重することにしました。

Bさんはかねてより志望していた関東の大学を受験することに決めました。

私立大学も関東の大学に絞り込み、受験に向けてコロナに感染しないように細心の注意を払いながら2021年1月16日、17日の大学入学共通テストの日を無事迎えることができました。

そして二次試験に向けてさらに頑張ろうとしていた矢先、志望校の二次試験中止が発表されました。理由は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を鑑みてのことでした。

Bさんは共通テストの結果だけで合否が判定されることに不安を感じ、結果的に違う大学を受験することにしたのです。

受験には親も同伴を求められ…職場からは自宅待機の指示が

これまで誰もが経験したことのない新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、大学側も厳しい選択を迫られています。またその選択の影響を受け、自分の進路を変えざるを得ない学生もいます。

ニュースで報道されているこの現状は、当事者にならなければ本当の苦悩がわからないのかもしれません。

また私立大学の受験のために緊急事態宣言下の地域へ行かなければならないBさん。Bさんの通う高校からは、受験のために緊急事態宣言下の都府県へ行く場合は親も同伴することを勧められているそうです。

Aさんは一緒に受験に同伴した結果、職場からは1週間の自宅待機を余儀なくされたと同時に、同僚からの心無い言葉にずっと胸を痛めています。

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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、受験生やその家族を取り巻く状況は想像以上に過酷なものになっています。

コロナ禍と一口に言っても、置かれている立場や状況によっては悩んでいることや問題となっていることは異なります。そうした現状を知ることが人に寄り添うきっかけになるのかもしれません。

受験生の皆さん、そして受験生を支えるご家族の皆さんがこのつらい時期を乗り越え、桜咲く季節を笑顔で迎えることができるよう願っています。

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