河内弁や船場ことば…大阪弁を巧みに使いこなす「おちょやん」 一体どこが違うの?

桑田 萌 桑田 萌

「やぃわれ、こんのドアホ!」キツめの大阪弁に大阪人の筆者でも思わず驚いてしまう、現在放送中のNHK連続テレビ小説『おちょやん』。主人公の竹井千代は大阪府の南河内で生まれた。この地域では、大阪弁の中でも「河内弁」が使われている。

では、河内弁は「一般的な大阪弁」と何が違うのだろうか。

「河内大辞典 やぃわれ!」(富田林河内弁研究会、03年)を監修した大阪樟蔭女子大学学芸学部国文学科の田原広史教授によると、大阪弁は大きく3つに分類できるという。摂津、泉州、そして河内だ。

摂津弁は大阪府の中心部〜北部で使用される。商売の街・船場で話される「船場ことば」が含まれていて、これは『おちょやん』の道頓堀編でもみられる。泉州弁は南西部の言葉だ。そして河内弁は、大阪府の東部=河内地方で話される。

では河内弁にはどんな言葉があるのか。『おちょやん』の千代の言葉から引用してみたい。

「やぃわれ 竹井千代!(中略)いい加減にさらせ!あかんたれ!」
(第23回より)

訳:「おいお前、竹井千代!いい加減にしろ!まぬけ(とんま)!

「河内大辞典 やぃわれ!」によると、「やぃわれ」は河内弁の枕詞だと記されている(最近では聞かなくなったらしい)。また、「〜する」を河内では「〜しよる」、また別の「〜さらす」という言葉を使ったりすることがある。

「お母ちゃんのこと、忘りゃーえん」(第2回より)

訳:「お母ちゃんのこと、忘れられない

田原教授によると、河内弁にはろれつが回っていないように聞こえる音の「省略」が多いという。このこの「忘りゃーえん」は、「忘られへん」がさらになまったものだと考えられる。他の省略の例として、「もらった」を「モータ」と言うこともあるそう。

「ええんけ?」(第2回より)

訳:「いいのか(いいの)?

一般的な大阪弁では語尾に「か」とつけるが、河内では「け」をつけることが多い。原型は「かえ」。他にも、「行かへん」を「行かいん」のように否定の「へん」を「いん」にしたり、「出して」のサ行を「イ」と読み「ダイテ」と話したりすることも特徴。 

過去の朝ドラにも出てきた?いろんな大阪弁

田原教授によると、船場を含む摂津よりも、泉州や河内の方が訛りは強いという。その理由は、商売が盛んな船場ではお客様を相手に話すことが多く、丁寧に話す傾向があるため、と田原教授は話す。

例えば『おちょやん』では、道頓堀を舞台に移してからは船場ことばが目立つ。「〜してはる」などの丁寧な敬語がみられる。船場を舞台にした『あさが来た』(2015年)でもそうだった。 

一方、都市部から離れた泉州のことばは、過去に岸和田市を舞台にした『カーネーション』(2011年)で使われていた。主人公は朝に娘を起こすときに「起きり(=起きなさい)」、「〜しちゃーる(=〜している)」と言うなど、より特徴的な大阪弁で話していた。

『おちょやん』では、道頓堀や京都など、さまざまな舞台が登場する。地域は変わるものの、千代は自分の感情を出すときは自然と河内弁を話す。こうした言葉の違いも、朝ドラを楽しむポイントの一つだ。

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