お正月「餅」での窒息事故に要注意 万が一のどに詰まったときの応急処置は…

ドクター備忘録

尾原 徹司 尾原 徹司

 お正月といえば「餅」です。雑煮をはじめ、餅を食べる機会がぐっと多くなります。そこで気をつけたいのが餅を喉(のど)に詰まらせる窒息事故です。高齢者だけでなく、小さなお子さんなども注意が必要です。せっかくのお正月を台無しにしないためにも、その対策を考えておきましょう。

餅による窒息事故が増える1月

 消費者庁によれば、平成30年から令和元年までの2年間を分析したところ、餅による窒息死亡事故の43%が餅を食べる機会が多い1月に発生しているといいます。特に正月三が日に集中しているそうです。加えて、男性の死亡者数は女性の2.6倍になるとか。

 また、厚生労働省の人口動態調査によると「不慮の事故」による死因のうち、食物が原因となった窒息による65歳以上の高齢者の死亡者数は年間3500人以上といいます。中でも、80歳以上の死亡者数は2500人以上にのぼるとか。それだけに、餅の喉詰めだけでなく、高齢者の皆さんは食物などが誤って喉頭と気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)にも注意してほしいと思います。

 高齢者だけでなく、小さなお子さんがいるご家庭も要注意です。子どもは生後5~6カ月頃から手にしたものを口にもっていくことが増え、食べ物やおもちゃなどで窒息事故を起こしがちです。

餅を食べる時に注意したいこと

 最近は食文化も多様化し、餅をあまり食べたことのない若者も増えていると聞きます。それだけに、お正月に食べる雑煮などの餅が、久しぶりの餅だったりすることが多く、食べ慣れていないので、急に飲み込んだりして喉を詰まらせることがあります。年齢問わず、注意が必要なのです。そこで、餅を食べる際には以下に気をつけて、喉に詰めないように防止してください。

(1)餅の大きさを考えよう!
 大きな餅を飲み込んでしまったら大変です。そこで、高齢者や小さなお子さんがおられるご家庭は餅を小さくカットし、食べやすい大きさにするのも予防策の一つです。

(2)喉に潤いを!餅は流し込まないで!
 餅を食べる前に、お茶や汁物などを飲み、喉に潤いを与えてから餅を食べるのも予防策の一つです。ただし、間違っても、よく噛まないでお茶などで餅を流し込むことのないように注意してください。これは逆効果です。

(3)口いっぱいに餅を頬張らないで!
 一口の量を加減して、無理なく食べられる量を口に入れましょう。たくさん口に頬張るのは危険です。

(4)ゆっくり、よく噛みましょう!
 よく噛まずに餅を飲み込むのは危険です。

(5)周りが見守りましょう!
 高齢者や小さなお子さんがいるご家庭はできるかぎり、高齢者や小さなお子さんが餅を食べる際には周りで様子を見守りましょう。

喉に餅が詰まった時の応急処置は?

 万が一、餅を飲み込んでしまい、喉に詰まってしまった時は、命にかかわることがあります。一刻も早い応急処置が必要です。

 食道にものが詰まった時は、正常に呼吸できているかどうかを確認。声を出せず、うなずくぐらいが精いっぱいであれば「窒息」の可能性が高いので、即、救急車を呼びましょう。

 詰まった直後から言葉が出なくなったり、激しくせき込んだりする時は気道に入ってしまっている可能性があります。顔色が紫になってきたら危険です。意識をなくすこともあり、こちらもすぐに救急車を呼びましょう。

 救急車が来るまでの間、詰まった餅を吐き出させるための応急処置をしてください。意識がある場合、次の応急処理法を試みましょう。

(1)「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」

 患者の後ろからウエストあたりに手を回し、ぐっと引き寄せるように持ち上げます。ただし、妊婦や幼児には腹部突き上げ法はNGです。妊婦や幼児には次の「背部叩打(はいぶこうだ)法」を試みてください。

(2)「背部叩打法」

 背後から片手であごを支えながら、背中をたたきます。意識がない場合は、気道を確保し、呼吸をしやすい体勢にしてあげてください。口の中の餅が見えるようなら、指や箸などで取ることを試みてください。ただし、口の中に指を入れて取ろうとする際に、噛まれる可能性がありますので、タオルやガーゼなどで保護をしましょう。

 餅の喉詰めは、決して他人事ではありません。誰でもなる可能性があります。注意して餅を召し上がり、楽しいお正月をお迎えください。

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