真紅のドレス…実はアルミ製のリングで編まれています!? 「女性の武装と装飾」がテーマ、美大生の卒制に注目

中将 タカノリ 中将 タカノリ

金沢美術工芸大学の学生、希宮(のぞみや @1_saboten)さんが卒業制作で作った「ドレス」がSNS上で大きな注目を集めている。

鮮やかな真紅で、遠目にはニットドレスに見えるが、近づいて見るとなんと素材はアルミのマルカン(丸形の金具)。

その重量は10kgにもなるそうだ。

SNSユーザー達から「最高…!現物はどこ行ったら見れますか…!」「遠目から見ると美しいドレスだが近づいてみると強そうな鎖帷子になる…めちゃくちゃすげえ」「現代のチェインメイルドレス、と言う風情がとてもカッコいいです(°▽°)槍でもナイフでもある程度防刃してくれそうですね。」など数多の称賛を浴びるこのドレスはアーティストとして、また女性としての希宮さんの想いが込められているようだ。

希宮さんにお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):見ただけで大変な力作であることがわかりますが、このドレスを制作するにいたった経緯をお聞かせください。

希宮:私はコンセプトについて次のように説明しました。

「テーマは女性の武装と装飾です。一昨年話題になった『新宿駅の構内で女性ばかりにわざとぶつかる人』の動画に関連して、『髪を染めたりパンクな格好をするようになったら全く被害に遭わなくなった』という報告が数多く上がりました。さながら武装です。

70年代のウーマンリブでは、ミニスカートが女性の性解放の旗印になりました、逆に最近では韓国フェミニストを中心に社会的に強要された装飾の破棄の動きもあります。フェミニズムについて語る時、装飾の話題は良くも悪くも共にあります。このドレスの持つ、強さ、しなやかさ、あるいは重さ、冷たさがこういった社会での女性の装飾の意味を考えるきっかけのひとつになればいいと思います。そして何よりその姿、戦いが美しいものであれと願います。」

髪を染めたり派手な格好をしたら全く被害に合わなくなったというのは私自身も経験した事です。髪を緑にした時、京都駅ロータリーや梅田繁華街の歩きやすさに愕然としました。女性は男性に比べて化粧をしろ、ストッキングを履け、窮屈な服に歩きにくい靴、細かい身嗜み規定等ルッキズムによる社会的強要を多く受けています。嫌々する装飾は辛く虚しいものです。それでも着飾ること、美しくありたいと願う事自体は女性に限らず超自然的な欲求だと思うんです。

家族以外の前では全身を黒い布で覆うイスラム教圏の女性だって、下に凄く鮮やかな色のドレスを着て美大生もびっくりの派手髪だったりします。彼女達を見ているとむしろ周囲の目や社会的慣習から解き放たれた時、装飾はもっと加速し楽しく美しいものになるのでは無いかと期待出来ます。空虚でない確かな美しさは必ず存在します。それは強要されるものではなく、きっとそれぞれの中にあります。私は美しさの第一要素は気高さにあるのではないかと思います。装飾にまつわる問いを見る人に投げかけ、また勇気付ける作品になっているといいなと思います。

中将:まだまだ根深く存在する性差の問題について、美という観点から一石を投じたというわけですね。制作にあたりこだわった点、ご苦労された点についてお聞かせください。

希宮:こだわった点は裾のフリルです。重さを見せないように半ば執念で立てました。コロナ禍で本来春のはずの教育実習が制作期間にずれ込んできたことがとにかく痛手でした。
遅れを取り戻すために先輩や後輩を内職で雇い、針金からマルカンを作ってもらったり編むのを手伝ってもらったりしました。マルカン作りで腱鞘炎になった先輩にいよいよ頭が上がらないです。

中将:やはり大変なご苦労があったわけですね…!甲斐あって作品には好意的なコメントが多数寄せられていますが、反響へのご感想をお聞かせください。

希宮:大学の講評会では現物が目の前にあると皆現物が気になってしまって、コンセプトについてほぼ全く言及されませんでした。コンセプトに対しての反応をたくさん頂けたのがとても嬉しいです!

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▽希宮(のぞみや)さん関連イベント

「金沢美術工芸大学 卒業・修了制作展」
期間:2月24日~3月1日
会場:21世紀美術館 市民ギャラリーA・B
石川県金沢市広阪1-2-1
入場料:無料

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▽希宮さん公式ショップ

希宮のお店:https://nozomiya.booth.pm
※売上は今回制作したドレスの東京と大阪での展示費用に活かされる

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コロナ禍の影響で規模縮小になるかと思われた「金沢美術工芸大学 卒業・修了制作展」だが、ステイホームの結果、学生たちの作品制作が大いに捗り、逆に大作揃いになったということだ。希宮さんはじめ学部卒業生約150人の超ボリュームの展示なので、観る人にきっとさまざまな気付きや感動を与えてくれるに違いない。展示は2月24日から3月1日まで。ご興味のある方はぜひ足を運んでいただきたい。

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