食事の後に急に走ったり激しい運動をすると、左わき腹が痛くなる経験は皆さんにもあると思います。以前は急激な酸素消費によって横隔膜がけいれんするから、という説もありましたが、実は本当の原因は「血液」と「脾臓」にありました。
脾臓は左のわき腹、やや背中側に位置する、握り拳ほどの大きさでスポンジ状の柔らかい臓器です。主な役割は、リンパ球を産生したり、赤血球を壊して鉄分を取り出すことです。赤血球の寿命は約3カ月、古くなった赤血球は脾臓で壊され、取り出した鉄分はリサイクルして新たな血を作る材料として骨髄に送られます。そしてもう一つ、脾臓には血液を備蓄しておく貯蔵タンクの役割りもあります。筋肉や内臓が急に血液を必要とする時に、脾臓に貯めておいた血液を送り込むのです。
筋肉が血液を必要とする時とは、急な運動をした時。胃腸が血液を必要とする時とは、食べ物が胃腸で消化される時です。食後、消化管への血液供給量が増えると、脾臓は収縮して貯めておいた血液を放出しますが、そこで同時に運動を始めると、筋肉への血液供給も必要になり、脾臓はさらに急激に収縮します。その時の痛みがまさに「それ」なのです。
心臓から送り出される血液の量は安静時は毎分5リットルですが、運動時には毎分25リットルにまで増え、その80%が筋肉へと供給されます。食後は安静にするのが一番ですが、準備運動をして徐々に運動の強度を上げていけば、急激な脾臓の収縮は起こりにくいので、覚えておいてください。
食後の運動で脇腹が痛くなる仕組み、実はこれまで諸説があり、なかなか決着しなかったのですが、最近になって統一された見解が、今回ご説明した内容です。