レトロテレビ風の超小型メディアプレイヤー「まめTV」が、話題を呼んでいる。11月に東京ビッグサイトで行われたアートイベント・デザインフェスで実演販売された十数台は完売。ネットなどでの委託販売分も、毎回〝秒殺〟で買い主がつく人気だ。
高さ4.2センチ、幅3.3センチの超手のひらサイズ。昭和の四本足テレビデザインが、郷愁を誘う。ブラウン管…ではなく、0.95インチの有機ELディスプレイを内蔵した優れもの。マイクロSDの動画・音声を再生でき、リモコンにも対応している。
「まめTV」の生産工房が、神戸市灘区にあった。区民の台所・水道筋商店街の中心に位置する灘中央市場。空店舗をリフォームした「C-SPACE灘」で生産されている。52歳の会社員・ぐる☆さん@guru_hoshiが、模型好きの仲間と3年ほど前から作り始めた。
ぐる☆さんは「おもちゃみたいなものを造りたくて、いろんな人が笑顔になってくれたらいいね…みたいな感じがあって」ときっかけを振り返る。現在は生産を引き継ぎ、一人で「まめTV」を作っている。最初は工作キットとして販売していたが、完成品を売り出したところ人気に火がついた。
「仕事にしたいわけではなく、あくまで趣味でやったネタとして」(ぐる☆さん)生産し始めた「まめTV」。思わぬところから注目を浴びた。ドールハウス(ミニチュアの家)のインテリアとして国内外の展示会で紹介され、海外の要人も購入したという。米企業の協力で機能が追加されるなど、ワールドワイドな展開を見せている。
本職との兼ね合いもあり大量生産はできないが、今まで「50~100台くらいの間」の完成品を世に送り出した。仕事のかたわら、週3回はC-SPACE灘にいるというぐる☆さん。組み立てや塗装もできる〝秘密基地〟を2019年、パソコン通信で知り合った30年来の友人3人と灘中央市場内に立ち上げた。
灘中央市場には、防災空地と呼ばれる火災の延焼を防ぐ多目的な空き地スペースがあり、多彩なイベントが行われている。電子工作の同好の士を募るぐる☆さんは、工房を交流スペースにし、同市場とともに盛り上げていきたいと語る。
「ここからものが生み出せたら。夜中の0時に『抵抗(器)1本足らんから進まへん…』となったら、ここに来たらあるで~、ハンダ付けして帰りな、みたいなノリだったら。趣味でやっていることを強調してくれたらうれしい。道楽でやっているので、儲かる必要もない」と気負いがなかった。