丸10年経ちました…「いまいち萌えない娘」アルバイト募集の告知から誕生「存続の危機」と「炎上回避術」

金井 かおる 金井 かおる

 「右のキャラクターがいまいちいけてない(萌えていない)理由を3つあげなさい。すらすら答えがわかった方は…趣味で培った知識や経験を活用するチャンスです」

 これは2010年12月、神戸新聞社がアルバイトの求人募集を行った際のネット向けの告知案内です。注目を集めたのが添えられたイラスト。のちに「いまもえさん」「いまもえ姐さん」などの愛称で呼ばれる「いまいち萌えない娘」です。地道な活動を続け、2020年12月で丸10年を迎えます。「ここまで長く続くとは思っていなかったです」と言う“中の人”に話を聞きました。

ゴール先延ばし、いつの間にか10年

 ――10年も経ったことに驚きました。

 「あくまで公式の活動として、なのですが何度も『あー、3カ月先は何の予定もないやん。そろそろ潮時かな』と思っていると、新しいお仕事をいただいたり、目標ができたりして『あそこまでは何とか信用を崩さないように頑張ろう』とゴールを先延ばしにしているうちにいつの間にか10年、という感じです」

 ――「神戸新聞社のマスコットキャラ」と思われている人も多いと思います。

 「黙認キャラ、放任キャラというのが適当だと思います。今でも誤解されている方もおられるようなのですが『例の問題』は新聞社の入社試験ではありません。アルバイトの採用試験でもありません。新聞紙面にも載ってませんので(笑)。ほんとにネット向け単発チラシのつもりで出したものですから」

 ――ずっと疑問だったんですが、「娘」の読み方は「こ」ですか? それとも「むすめ」?

 「よく聞かれるのですが、どっちでもいい、と答えることにしております。私の場合ですが『むすめ』と発音することがほとんどです。小説本の出版の際、本のタイトルとしては読みがなを1つに決めなければならなかったので、ライトノベル的に『こ』と付けています」

存続の危機は「3度ほど」

 ――この10年で存続の危機は?

 「3度ほど『あー、こりゃ絶対に死んだわ』と思うことがありました。その度、理由は違いますがネットの皆さんにご援助いただいたり、ふだんは放任主義のはずの上司に助けてもらったりして何とか延命することができました」

 ――ツイッターの企業アカウントではしばしば“中の人”の投稿をめぐり炎上が起こります。心掛ける「炎上回避術」はありますか?

 「エイプリルフールで『萌えてしまって申し訳ありません』という謝罪会見の動画をアップしてご好評いただきました。エイプリルフールですから嘘になりますけど(笑)。萌えキャラ業界の中では謝罪のエキスパートみたいになってしまいましたし、本当の謝罪をしないためには? をついつい考えてしまうことがありました」

 「まず、ツイッターは自分が思うよりもたくさんの人が読んでいる、それも共感してくれる人ばかりではないことを意識する。次に、意見的なことを書くときは、熱くなっているなら時間をおいて冷ますこと。多くの人に理解してもらいたいならば、できる限り言葉を選ぶこと。最後に、例えば『自分へのご褒美に焼き肉食べました』って写真をアップしたら『こんな時間に飯テロするな』と怒る人もいますよね。だいたいは『お約束』のツッコミですが、何をツイートしても不快に思う人がおられることは心のどこかに留めておいたほうが良いのでは」

映画や小説化、食品コラボも

 ――この10年で「これはデカい仕事だったな」と感慨深い仕事は?

 「二次元キャラクターならば誰もが夢見ることではあると思いますが、当初からアニメ出演を目指して活動しておりました。運よく東映アニメーションさんに拾っていただいて、劇場公開もされたアニメ『ロボットガールズZ』(2014年)に出演させていただきました。神戸出身の声優・寿美菜子さんに声を演じていただいて、スピンオフのドラマCDにまで出演したりもしました。アニメのスタッフの皆さんには、かなり変なキャラクターそのものの特性や、それを楽しむファンの皆さんについてもよくご理解いただいた上でご活用いただいたことに心より感謝しております」

 ――この10年で印象に残る活動を教えてください。

 「神戸市ご出身の人気ライトノベル作家、森田季節先生に『小説 いまいち萌えない娘』をご執筆いただけたこともラッキーだったと言うしかありません。全国の書店さんやアニメ関連ショップで手に取っていただくことができ、初版は瞬く間に完売。アコガレの重版出来もして、森田先生のご実家のある神戸市垂水区の書店さんなどで森田先生のサイン会を開いて大盛況だったことも良い思い出です」

 「メディアだけでなく食品とのコラボレーションでは、大吟醸酒、六甲山系の天然水、青いようかんが発売されました。あと兵庫県西部は日本でも屈指のそうめんの産地ですが、しっかりとした製麵メーカーさんに『播州いまもえひやむぎ』(現在は販売終了)を製造販売していただき『第1回アニものづくりアワード』では地方創生賞を頂戴することができました」

 ――交流の深いキャラクターは?

 「同じ兵庫県内で活動する萌えキャラさんはイベントなどでのリアルの交流や情報交換をよく行っています。また、東北ずん子ちゃん、北乃カムイちゃん、先ほど故郷の惑星に帰郷したニパ子ちゃんとは、お互いに刺激しあう良いライバルでもありますし、時にはコラボで共闘する戦友だと勝手に思っています」

 ――今後は?

 「『新聞社の』という肩書きはちょっと横に置いといて、今後はもっと人と人をつなぐ役割ができたら、と思います。クリエイターさんと何か課題を抱えておられる自治体さんや企業さんをマッチングさせるようなことや、その広報についてもキャラクターの使命ですので、楽しくやっていけたら、と思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

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