ミロ販売休止の背景を流通アナリストが解説 「バズると在庫コントロール難しい」

北村 泰介 北村 泰介

 鉄分豊富で貧血を解消する飲み物として女性に注目され、「ミロ活」という造語がSNSで話題になった麦芽飲料「ネスレ ミロ」が販売休止となった。ネスレ日本(神戸市)が「安定した供給の継続が困難になったため」との理由で8日に3商品の販売を休止すると発表。販売再開は来年3月以降の見通しという。流通アナリストの渡辺広明氏は一夜明けた9日、当サイトの取材に対して「SNS欠品」と今回の事態に至った背景を指摘した。

 「強い子のミロ~♪」。オイルショックのあった1973年に「ミロ」が発売されるや、テレビCMでこのフレーズがお茶の間で拡散した。ミロの粉末を牛乳で溶かして飲むスタイルで、その味はココアのようでちょっと違う、独特の麦芽の香ばしさが新鮮だった。記者も小中学生の頃によく飲んだ記憶はあるが、成人してからは縁遠くなり、時は流れてコロナ禍の時代に、この懐かしい飲み物が話題になっていることを知った。

 今年7月、ツイッターで「鉄分が平均の1/7しかない私でも、ミロ飲んだら平均値になりました」との投稿がきっかけとなり、貧血に悩む女性を中心にSNSでミロに関する情報が拡散されたという。女性に不足しがちな鉄分やカルシウムの吸収を助けるビタミンDなどをミロで摂取する日々の活動を指す「ミロ活」という言葉もSNSから生まれた。子どもだけでなく、成人女性の需要が急増したことが今回のブームの特徴だった。

 ブロガーのはあちゅうさんらがSNSで「ミロ活」を行っていると公表していることなどを背景に、12月1日に放送されたTBS系「グッとラック!」でも特集。同番組でバイオリニスト・木嶋真優さんが「ミロを知らない」と明かすと、他の出演者から「ミロを避けて大人になる方が難しい」という声があがった。SNSに端を発し、テレビの地上波でも特集が組まれた1週間後、ネスレ日本から「前年比で約7倍(数量ベース)のご注文が続き、供給計画をはるかに上回ったため、再度、販売休止せざるを得なくなりました」と発表された。

 対象製品は「ネスレ ミロ オリジナル 240g」、「ネスレ ミロ オリジナル700g」(一部チャネル限定品) 「ネスレ ミロ オリジナル スティック5本」の3商品。中でも「240g」は需要が供給を大幅に上回る状況が続いたため、9月末から一時販売を休止し、11月16日から出荷を再開したところだった。1袋が通常価格378円(税込)の「240g」は、発表のあった8日時点のネット通販サイトでは1200円と約3倍の高値が付いていた。

 販売停止の報道を受け、ツイッターでは「なんで急にミロ人気になったの?あと一袋買っておけばよかった…」「なんですぐに流行りに乗るのかなぁ」「毎日飲めていたはずの子どもたちの分が無くなってしまったんですかね」などといった投稿が続いた。

 この動きを受け、渡辺氏は当サイトに「新商品で特にですが、SNSでバズった商品の在庫コントロールは難しく、SNS欠品が起こってしまう」と指摘。また、同氏は「ただし、今回のような既存商品では珍しく、原料をシンガポールから輸入しているため、長期の欠品になってしまっている」と解説した。

 ミロは世界30カ国以上で販売されており、マレーシアをはじめとするアジア諸国では国民的な飲料として日常的に愛飲されている。ネスレ日本は「今後、できる限り早期に販売を再開できるよう尽力いたしますが、原料をシンガポールから輸入している製品であり、十分な供給体制を整えるのに時間を要します」と説明している。

 発売開始から47年後、女性を中心としたブームが日本で広がったミロ。コロナ禍の冬を越え、来年3月以降とされる「ミロ復活の春」は来るか。

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