獣医師に聞く、野良猫に関する大きな誤解 捨てられたら「生き残れるのはほんの一部」

渡辺 陽 渡辺 陽

公園や町に猫がいる風景。なんだかのどかでいいなと思われるかもしれません。しかし、猫は過酷な自然の中で、自力で生きていくことができる動物なのでしょうか。大阪府で猫の不妊手術専門のクリニック「ハッピータビークリニック」を運営する橋本恵莉子獣医師に話を聞きました。

野良猫は本当に幸せなの?

塀の上で気持ち良さそうにお昼寝している一匹の野良猫。それを見た子供が、「あっ!猫さんだ」と言い、お母さんが「ホントだ!気持ち良さそうにお昼寝しているね」と言っています。

どこにでもありそうな風景ですが、この野良猫は本当に心地よく暮らしているのでしょうか。たまたま猫を見た日は晴れていて、気持ちのいい気候だったのかもしれません。しかし、雨の日も冷たい北風が吹く日も真夏の暑さの中でも猫は生きていかなければなりません。

もともとは飼い猫だった野良猫

野良猫は、もともとは飼い主に捨てられたり、ふらっと家から外に出た時に道に迷って帰れなくなったりした猫なのだそうです。

そんな猫たちに、「外での本来の居場所はない」と橋本獣医師は言います。

食べ物はなく、寝る場所もない。それでも生きていくために必死でゴミを漁ることを覚え、時には花壇でトイレをして、ガレージで眠るしかないのです。交通事故や悪い人に虐待される危険にも常にさらされています。

「飼い猫が外に捨てられたら、生き残れるのはほんの一部です」と、続ける橋本獣医師。

野良猫を増やさないためにできること

野良猫は、ただ必死で生きているだけなのに、花壇にフンをされた人やごみ箱を荒らされた人は「迷惑だ」と思ってしまいます。

野良猫に過酷な生活を強いている原因は、もともとは人間にあるのです。

では、野良猫を増やさないために私たちに何ができるのでしょうか。

橋本獣医師は、「新たな野良猫を生み出さないために、飼い猫を捨てないこと、望まない命を産ませないために飼い猫に不妊手術を受けさせること、地域猫活動を応援または見守ること、野良猫は野生動物ではないということを広めることが大事です」と言います。

野良猫を見かけたら、野良猫は野生動物ではない。もともとは飼い猫だったということを思い出してみてください。

◆橋本恵莉子(はしもと・えりこ)Happy Tabby Clinic院長。大阪府立大学農学部獣医学科卒業。大阪ねこの会の一斉不妊手術に参加。保護猫シェルターにて感染症対策セミナー講演、松原市役所にて市民向け地域猫セミナー講演するなど精力的に活動。

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