娘を通わせている保育園では、保護者会活動があり、会費の集金も役員が行っています。例年であれば、年に2回の集金がありますが、今年はコロナの影響を鑑みて集金は1回とすることとしました。集金は、園児1人ごとに対してとなるので、兄弟がいる家庭は必然的に負担額が大きくなります。
そのため、今年度に限っては、集金の案内に「集金の提出、支払いの回数などはご相談いただいて構いません」という一言を付け加えました。正直、金額だけみれば、共働きの家庭であれば、大したものではないかもしれません。しかし、私自身シングルマザーで、コロナの影響で経済的に苦しい家庭や、社会情勢の翻弄されやすいひとり親家庭のことを考えると、集金の金額すら大きな影響があるのではないかと感じました。そこで、ちょうど役員だったこともあり勇気を出して提案してみたのです。
両親揃っていることが前提
しかし、夫婦そろった家庭のお母さんたちは、集金を1回にすることや配慮の一文を付け加えることに対して、「大きな額でもないのにそこまでする必要がある?」「この額を払えない人がいるの?」と言った意見や反応が多く、大きなギャップを感じました。
実際、集金をしてみたところ期日や支払い回数について相談してくる人はいませんでしたが、期日に間に合わない人は数名いました。その中にはシングルマザーで集金に間に合わせるのが難しかったが、相談するのも気が引けてしまったと言っている人もいました。
それぞれの地域や通っている保育園などにもよると思いますが、いまだに夫婦そろっていることを前提に多くの話が進んでいますし、金銭的なこともひとり親家庭が存在することを前提に話が進むことはなかなかありません。当事者と第三者には認識や感覚、理解などにおいて違いがあると、この集金の件を通して改めて感じました。
シングルマザーの現状
2016(平成28)年度の厚生労働省の調査によると、日本の母子世帯数は推計約123万2000世帯あるといわれています。父子世帯は18万700世帯で、圧倒的に母子世帯数が多いことがわかります。この結果は30年前の調査と比較すると、1.5倍増加しています。母子世帯になった理由の多くが離婚、次いで未婚、死別となっています。また、30年と比べて、離婚が大幅に増加し、未婚の母も増加していることがわかりました。
メディアでも取り上げられている母子世帯の貧困率は、平成28年の厚生労働省の調査時点で50.8%にのぼっています。この貧困率とは、その国の平均的生活水準、文化水準と比べて困窮している状態をあらわし、具体的には年間世帯収入の半分未満の家庭を指します。日本のシングルマザーの貧困率は世界で見ても高い数値で、もっとも貧困率が低いデンマークでは9.3%と一桁台です。
では、なぜシングルマザーは貧困になりやすいのでしょうか。まず1つに、正規雇用者が少ないことが挙げられます。アルバイトやパート、派遣などで仕事をしている人が多く、非正規雇用では収入が低くなります。他にも長時間働くことができなかったり、養育費を受け取ることができていなかったり、子どもの体調などにより仕事を休んでしまうことが多いからだと考えられます。
親の貧困は連鎖するといわれています。貧困により、質の高い教育を受けることができなかったり、習い事をすることができなかったり、子どもに経験を積ませることができず、その子どもの子どもも貧困に陥るという連鎖が起きるのです。子どもの将来のため、貧困の連鎖を止めるためにも、シングルマザーとその子どもたちが、満足のいく生活を送れるようになるよう、さらに制度を整えていく必要がありそうです。