郵便局のレターパック…こんな形に折って立体にすれば、容積が最大に!? 「ピローボックス型」試算が話題

川上 隆宏 川上 隆宏

A4ファイルサイズの専用封筒に荷物を詰めて、全国一律料金で送れる郵便局のレターパック。厚みのあるものを入れることもできますが、封筒をどんな形にすればものがいっぱい入れられてお得なのだろうか…と漠然と思ったことはありませんか。実はまくらのような「ピローボックス型」に折って立体にすると、容積を最大限に活用できるそうですよ! 実際の試算結果がTwitterに投稿され、話題になっています。

試算したのは、筑波大学システム情報系教授の三谷純さんです。レターパックには郵便受けに配達するため厚さに「3センチ以内」という制限を設けている「レターパックライト」と、対面配達のため厚さ制限のない「レターパックプラス」の2種類があるといいます。厚さ制限がない方を使う際に、容積が最大にできる「お得な形」とはどのようなものになるのか、理論値を計算して調べてみたといいます。

断面の形が「ひし形」「長方形」「円」になる形と、全体がまくらのような形になる「ピローボックス型」の4種類で試算してみると、「ピローボックス型」が「最強」という結果に。最も小さかった「ひし形」が3555立方センチメートルだった一方、「ピローボックス型」は4290立方センチメートルで、折り方を変えるだけで1.2倍の容量になることが分かりました。

また、立体でよく見かける形状としてテトラパックのような4面体がありますが、それと比較しても「ピローボックス型」のほうが容積が多いことも分かりました。

三谷さんはそれぞれの折り方をCGで再現しているほか、実際にレターパックプラスの封筒でつくってみたかのようなイメージ画像も数々公開。「実物でやる勇気はまだない」としていますが、確かにこんな状態のレターパックを届けたら、郵便局の人にも驚かれてしまいそうです…。

   ◇   ◇

三谷さんにお話を聞きました。

―なぜこのようなことを調べてみようと思われたのでしょう。

「私自身は曲線で折る折り紙に興味を持っています。最初はレターパックではなくて、ピローボックスの形に興味を持っていて、どのような折り線であれば体積が最大になるかを研究していました。ピローボックスは、日ごろ見かける紙製パッケージの中で、曲線での折り目を持つという点で、とても珍しい形をしています。Twitter上で、ピローボックスの形を紹介したところ、『レターパックでも作れる』という話が出てきたので、今回のような計算をしてみることにしました」

―いろいろな形で容積を比較されていますが、ピローボックス型が最大容量となることは、あらかじめ予想されていたのでしょうか。

「実は、計算してみるまで分かりませんでした。私自身も結果を見比べて、とても面白いと思いました」

―ちなみに、ピローボックス型の体積はどのように求めたのでしょうか。公式のようなものがあったりしますか?

「体積を求めるための公式はなくて、コンピュータサイエンスの分野でいう『数値積分』という方法で数値計算を行っています。数学の分野で見るような式を用いるのではなくて、ピローボックスの形を薄く輪切りにして、その薄切り状態にしたものの体積をプログラムで計算して足し合わせて結果を出します」

―ピローボックス型について折れ線は「2次ベジェ曲線で最適化」したとのことですが…こちらもなにやら難しそうです。

「2次ベジェ曲線というのは、コンピュータで使う文字の形を表現するのに使われている、身近な曲線です。最適な曲線の算出は、少しずつ形を変えて最も体積の大きくなる状態を探索する…というもので、ある意味、コンピュータによる力任せで求めたものです。いずれも理工系の大学生であれば理解できる内容だと思います」

―ちなみに、ピローボックス型は円筒(断面型が円になっている状態のもの)と、とても似ている気がします。

「円筒の場合は断面積は大きいのですが、そのぶん、側面のへこみ具合が大きくて、トータルで考えると効率が悪いです。ピローボックス型は、断面積を稼ぎつつ、へこみ具合を減らす、ちょうどよい形といえます。ちなみに、A4サイズではなくて、縦に長い封筒であれば、円筒の方が効率がよくなります。A4サイズの縦横の比率が、とても大事になってきます」

    ◇   ◇

その後の投稿では、「がんばればレターパックで作れる形のバリエーション」として、さまざまな立体の形も作成しています。曲線が波打つようになったり、凹凸ができたり…飛行機のように見えたり、遺跡から出土した不思議なもののように見えてきます。

―ここまでくるともはや私たちの知っていたレターパックとは別物の世界です。このような折り方のインスピレーションはどこからくるのでしょう。

「日ごろから、折り紙に興味を持っていて、なにか珍しい形を作ってみたいと考えています。1つ形ができれば、あちこちを少しずつ変えることで、また違った形を生み出すことができます。今回は、ピローボックス型を出発点に、いろいろな形を作り出すことができました」

―数多くのCG画像を作られていますが、ご自身で作られているのでしょうか。

「もちろん私一人で作っています。このようなことばかりしていますから、幾何学的な形をコンピュータで扱うのには慣れています。普通のノートPCで、1つ数十分くらいで作ります。実際に紙で折るのも、楽しくやっています」

―みなさんから寄せられたコメントを見ると、レターパックには重さの制限があるので、容積を最大限活用しようと思っても難しいと感じた人もいたようです。また、配達証のシールが剥がれやすい形だと受け付けを断られてしまうのでは、との指摘もありました。

「このような折り方をしたら、郵便配達の方にご不便をおかけするような気がするので、あくまで数学的にものごとをとらえるきっかけとして楽しんでもらえればと思います。ピローボックス型以外であれば、体積を求める計算は高校数学の範囲でできますので、楽しい教材の1つとしてとらえてもらえればうれしいです」

   ◇   ◇

三谷さんはコンピュータグラフィックを専門にされていますが、幾何学的な観点から折り紙の研究に取り組まれています。折り紙設計用のソフトウェアを開発、進化させていくことで生まれる不思議な造形たち…美しさもさることながら、これらが1枚の紙を折ることでできていることに、ただただ驚かされます。気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。

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