知ってる?いまさら聞けない「EV」「HV」「PHEV」の違い…それぞれのメリットとデメリット

小嶋 あきら 小嶋 あきら

電気自動車は実は新しい技術ではない?

 田舎の道を、クルマを押しながら歩く二人の若者。そのシーンが続いた後に、「クルマは、ガソリンで走るのです」というナレーション。「そうか、ガス欠だったのか」と、ここでクスリと笑うというのを狙っていたのです。そう、いまから50年ほど前に流れていた石油会社のテレビコマーシャルですね。

 クルマはガソリンで走るもの。対して電気で走るのは新しい技術。そう思われがちですが、実は電気自動車の歴史はガソリンエンジンのものよりも古く、すでに1830年代には誕生していたといわれます。

 電気自動車というと博覧会などのイベント会場や遊園地の敷地内をゆっくり走っているイメージが強く、モーターはエンジンに比べてあまりパワフルでないもの、というようにも思われがちですが、実はモーターというのはエンジンに勝るとも劣らないパワーを持っています。実際、たとえば新幹線はモーターで走っていますが、あの大きさのものをエンジンで、あの速さで走らせるのはほぼ現実的ではないですよね。それなのにこれまで電気自動車があまり注目されてこなかったのは、バッテリーの問題です。電車はパンタグラフを通して外から電気をもらうことができますが、自動車の場合そうはいきません。大きな電力で長い距離を走れるほどたくさんの電気を蓄えることができて、しかもそこそこ軽いバッテリーがこれまで無かったのですね。

 これまで一般的だった鉛バッテリーは、電気を貯められる量があまり多くなく、しかも重いです。しかし近年、ニッケル水素バッテリーや、さらに多くの電気を蓄えられるうえに軽量なリチウムイオンバッテリーが開発されました。その技術革新のおかげでEV(Electric Vehicle)の実用性が見直され、いま市場に普及し始めているのですね。

EV(電気自動車)とは?

 いまの一般的な分類では「EV」は「バッテリーを積んでモーターの力で走る自動車」ということになっています。エンジンで走るクルマに対して、そのメリットは、排気ガスを出さない、音が静か、発進加速がいい、燃費などのランニングコストが安くて経済的、比較的メンテナンスのスパンが長くて済む、といったところです。さらにエンジン車だと、ブレーキをかけた時に運動エネルギーを熱として捨てていたのですが、このエネルギーを電力として回収する「回生ブレーキ」という技術などによって、よりエネルギー効率が良くなっています。

 反対にデメリットは、比較的航続距離が短い、充電に時間がかかる、といったところでしょうか。

 パーキングエリアやコンビニなど、充電できる設備は現在急速に増えつつあります。ガソリンスタンドの設備のように大がかりな工事の必要がなく、また現在は設置に対する公的な補助金もあるので、今後ますます充実するでしょう。

 また、一戸建ての場合はガレージに充電設備を設置すれば自宅で充電できます。集合住宅の場合でも可能ですが、設備の設置に理事会の承認を得るなどの手続きが必要になると思われます。特に立体式駐車場などの場合は若干ハードルが高くなるかもしれません。

 水素を使って発電する、トヨタMIRAIのような燃料電池自動車(FCV)もこのEVに分類されます。

HV(ハイブリッド車)とは?

 EVとエンジン車のいいとこ取りを狙ったのがハイブリッド車(HV)です。トヨタのプリウスがその先駆けになりました。文字通り、エンジンとモーターを両方とも備えていて、速度や走行状態に応じてモーターとエンジンの力を組み合わせて走ることができます。

 メリットはEVのように充電する必要がなくガソリンスタンドで給油できること、EVと同じく回生ブレーキが使えるなど効率が良いので燃費が良くなることです。

 デメリットは、構造が複雑で車両価格が高くなること、エンジンの余力で充電しているのでたとえば高速道路を連続で走るような場面ではあまり燃費がよくならないこと、エンジン車と変わらないメンテナンススパンに加えてバッテリーの交換時期が来るとその費用もかかってくること、ですね。

PHEV(プラグインハイブリッド車)とは?

 ハイブリッド車なのだけど充電もできるクルマ、それがプラグインハイブリッド(PHEVまたはPHV)です。電気だけで走れる距離を長くしたハイブリッドカーで、通常はEVとして振る舞いつつ、バッテリーの残量が足りなくなるとエンジンで補うようになっています。

 また、日産のeパワーのように動力用ではなく発電専用のエンジンを積んだEVも、PHEVの一種として分類される場合があります。

いわゆるエコカーを選ぶとしたら

 走行中にCO2(二酸化炭素)を出さない、もしくは少ないことから、一般に地球に優しいとされているこれらのクルマですが、ガソリン車に比べて製造過程で発生するCO2は多く、トータルでのCO2排出量は、およそ10万キロほど走ったとしてほぼ同じくらい、という試算もあります。また、特にエコロジーやエコノミーの面以外のEVの特性、純粋にパワーや走行性能の部分でのEVの可能性を追求した、トミー・カイラZZ(GLMという京都の自動車メーカーが開発)といった個性的なモデルもあります。

 EVなどのエコカーが本当にエコなのか、という議論は一部にありますが、そんななかヨーロッパやアメリカの一部では、いずれエンジン車の新車販売が禁止になる、というニュースもありました。まだまだ先の話ですが、これからのクルマはEVやHV、PHEVなどにシフトしていくという流れは変わらないでしょう。それぞれの方式ごとにメリットやデメリットはありますが、どれもまだまだ伸びしろは多そうです。

 充電できる設備や水素ステーションの整備など、これから先のインフラ整備の見通しなども見据えて、乗り換えの際には検討してみるのもいいかもしれません。

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