コミックス「鬼滅の刃」書店で売り切れ続出 製紙会社「紙への回帰、大いに期待」

金井 かおる 金井 かおる

 公開から17日間で宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」を抜き、国内興収歴代10位となったアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」。メガヒットになると同時に、全国の書店に広がるのが「鬼滅の刃 売り切れ現象」です。書店や製紙会社、出版社に話を聞きました。

「生まれて初めて本の予約した」

 ジャンプコミックス「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴・著、集英社)は現在、1巻から22巻までが刊行されます。ツイッターで「鬼滅の刃 書店」と検索すると、紙のコミックスを手に入れようと奮闘する人たちのつぶやきがあふれていました。

 「1巻から読みたいのにない」「鬼滅全滅」「どこも売り切れ」「書店めぐり無駄足になるかな」「続きが書店にない」「店頭に入荷未定の文字」「あると噂を聞いて行ったらもう売り切れてた」等。中には、「生まれて初めて本の予約した」というつぶやきもありました。

入り口に「在庫状況お知らせボード」

 「一時、落ち着いていましたが、映画公開とともに再燃しています」

 教えてくれたのは兵庫県内の書店スタッフ。原作を読まず映画館に足を運んだ人たちが作品のファンとなり、「漫画でも読みたい」「紙のコミックスでそろえたい」と探し求めているそうです。

 神戸ハーバーランドにある「大垣書店神戸ハーバーランドumie店」では、店の入り口に在庫状況を知らせるボードを掲げています。6日現在の在庫は、3巻と最新刊22巻のみ。注文を受けても入荷までには時間がかかるそうで、「かなりお待ちいただいております」(担当者)。

 出版取次大手トーハン(東京都新宿区)が10月27日に発表したコミックス部門の週間ベストセラーでは、1位から10位までを「鬼滅の刃」が独占しました。

製紙会社「近年では最高レベル」

 コミックスの用紙を生産・販売する製紙会社にはどのような影響が出ているのでしょうか。製紙会社大手の王子製紙(東京都中央区)の担当者に話を聞きました。

 ――「鬼滅の刃」がブームです。コミックス用紙への影響を教えてください。

 「テレビ放映の影響で、2019年9月ごろより重版対応が増加し、コミック用紙は大きく売上を伸ばしています。現在は、ほぼ全巻で重版対応となり、コミック用紙の注文数量としては近年では最高レベルとなっています。今後もしばらくこの状況が続く見込みです」

 ――決算にも影響はありそうですか?

 「コロナ禍で、印刷用紙全体では売り上げが落ち込んでおりますが、コミック用紙の好調により落ち込み幅が多少カバーされていることは間違いありません。ただし、印刷用紙全体に占めるコミック用紙の割合は、決算に明らかな影響を与えるまで高くはないため、今回の売り上げ増による決算影響は軽微と考えています」

 ――社会的ブームについて業界としては?

 「社会現象になるほどの大ヒット作品が登場し、出版業界、ひいては紙媒体にも良い影響が出ているのは喜ばしいことです。本作をきっかけに、他のコミック作品にも好影響が生まれ、日本のコミック文化が発展することを願っています。また同時にデジタル化が進む出版業界において、紙のコミック本への回帰も大いに期待したいです」

集英社「最大限の増刷体制」

 コミックスを発行する集英社(東京都千代田区)は9月、電子版を含むコミックス累計発行部数が1億部を突破することが決まったと発表しました。その後の状況について6日、広報担当者に電話取材すると、「品薄状態は続いているが、増刷体制は最大限で行っています」との回答でした。

 12月4日に最終巻23巻の発売を控える同作品。まだまだ鬼滅ブームの勢いは止まりそうにありません。

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