猛暑の中、保護した子猫は感謝の気持ちを伝える猫だった 寝る前に必ず飼い主を“グルーミング”

渡辺 陽 渡辺 陽

兵庫県に住む伊藤さんは、連日猛暑が続いた夏のある日、猫の鳴き声を耳にした。当時、すでに猫を3匹飼っていて、それ以上飼うことはできなかった。しかし、弱ってさまよう子猫を見たら、放っておくことができず保護した。

 

猛暑の中、連日聞こえてきた猫の鳴き声

2015年8月、伊藤さんは、外で猫が弱々しく鳴く声を耳にした。35度くらいの猛暑が1週間以上続いていたが、毎日鳴き声がしたので、ずっと気になっていた。猫を探しに行くと、子猫が鳴きながら歩き回っている様子が見えた。

当時、ペット不可のアパートに住んでいたのだが、2001年に保護したへそちゃんと、2002年にへそちゃんが出産した2匹の猫がいた。

「親子猫3匹を飼っていて、私の年齢のことも考えると、いくらかわいそうだと思っても、子猫を保護して飼うのは無理でした。ご近所の方が保護してくれるのを、ただただ願っていました」

ある日、猫の鳴き声がしなくなり…交通事故にでも遭ったのかと心配していたら、翌日再び鳴き声がして ホッとしたという。

これ以上放っておけない

2015年9月、思いきって子猫に近づいて見ると、人懐っこくて足にまとわりついてきて、ごはんをあげると喜んで食べた。痩せていて、これ以上猛暑の中放っておくことはできない。命に関わると思い、伊藤さんは保護する決心をした。子猫は用意したキャリーケースに簡単に入ってくれた。

「私が責任を持って、子猫を最後まで世話しようと覚悟しました」

名前はここちゃんにした。小さく軽く、栄養不足だった。保護した夜は一晩中顔や頭をなめてきた。感謝の気持ちを表してくれたように思えた。

動物病院に行くと、ノミがいっぱいついていて、生後3カ月くらいだと言われた。人間には甘えるが、母猫に育てられなかったのか、猫との接し方が分からず、先住猫を追いかけ回していた。伊藤さんは先住猫を守るために隔離すると、あの手この手で先住猫の部屋に入ってくる寂しがり屋で、ひとりぼっちになるのを凄く嫌がった。生後3カ月まで外で生活して、辛い目にあったからなのかもしれない。玄関を開けても、出たら捨てられると思うのか、絶対に外には出ないという。

充実した猫との暮らし

月日が経ち、ここちゃんはへそちゃん(享年20歳)の子供しっぽちゃん(18歳)と暮らしている。年齢差がありすぎて…しっぽちゃんはゆっくり過ごしたいが、ここちゃんは遊んで欲しくてちょっかいを出す。

ここちゃんは、熟睡していても、人間が起きると慌てて起きてくる。「寝ていたら失礼にあたる」とでも思っているようだ。毎日寝る前に必ず伊藤さんの顔や手をなめて、感謝の気持ちを伝えてから寝る。そして保護してから、ほとんど鳴かなくなったという。

「猛暑の中で鳴いていたのは、助けて!という命の叫びだったと思います。受け止められて良かったです」

伊藤さんは2020年1月に定年退職し、ペット可の理想の物件に引っ越した。

「2001年に保護したへそちゃんが恩返ししてくれていると肌で感じました。全て思いのままに物事が進み、へそちゃんが見守って導いてくれているのが分かりました。保護された猫は自分の食いぶちの分幸せを運んでくれると聞いたことがあるのですが、現実に体験して感動しました 感謝の気持ちでいっぱいです」

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