一目惚れした保護猫は「触れない猫」だった 1年がかりで警戒心を解き、触れる確率50%まで進歩

渡辺 陽 渡辺 陽

りんちゃんは野良猫が産んだ子猫で、保護された時は生後5カ月になっていた。猫カフェでりんちゃんに会った西井さんは、人なれしていないことは知っていたが、どうしてもりんちゃんを迎えたいと思った。1年かけてやっと触れるようになり、いまではすっかり家族の一員になっている。

22年間共に暮らした愛猫を亡くして

愛知県に住む西井さんは、2018年4月、愛猫を亡くして空虚感に耐え切れず、いろんな表情の猫が見たいと思いネットで里親を募集している猫を眺めて寂しさを紛らわせていた。22年間も一緒に暮らした愛猫を失った悲しさを埋めるため、次の猫を迎えたい気持ちがあったが、夫はもう二度と猫は飼わないと言うほど落ち込んでいた。

2018年4月、譲渡サイトで猫カフェが里親募集していた猫に目が留まった 。 野良猫で、生後5カ月くらいの時にエサやりボランティアの依頼でボランティアが捕獲、猫カフェに来たという。激しく威嚇してきた姉妹はTNRをして、西井さんが見初めた猫だけ大人しかったのでカフェデビューした。

なかなか懐いてくれないが、一目惚れした猫

2018年4月、西井さんは猫に会うために猫カフェに行ってみた。猫は近づくだけで逃げたので、夫には警戒心が強すぎてダメだと言われた。しかし、西井さんは、次に飼うならこんな猫がいいとイメージにぴったりだったので、一目惚れしてしまった。

「どうしてもその猫が気になったので、何度かカフェに通い、少しずつ人なれしてきた様子を見て、これなら大丈夫だと家族を説得しました」

2018年5月、カフェのスタッフが車で猫を連れて来てくれた。ケージの中では触れたが、部屋に出すと家庭内野良状態。窓際でカーテンの裏に隠れてしまい、外の猫が来るのを待っているようにも見えた。触れるようになるまでにはかなり時間がかかったという。

猫が来る前にいろいろ名前を考えていたが、凛としているので「りんちゃん」にした。

りんちゃんは、とにかく臆病で神経質、人間の手を極端に怖がる。亡くなった猫は抱っこ大好きだったので、西井さんは、「触れない猫」を迎えてしまったことに最初は寂しさもあった。家族が「まだ早い」と反対するのを押し切って迎えたので、西井さんは、絶対にみんなに好かれる子になって欲しいという願い、猫の飼い方を1から学び直したり、Instagramを始めてフォロワーからアドバイスをしてもらったりして、りんちゃんのペースに合わせて少しずつなれる練習をした。

りんちゃんは、人が近づくと机の下に避難する習慣があったので、少しずつ近づいて一緒に潜って猫じゃらしでお尻をトントンと軽く触れるなどした。1年くらい経つと、机の下でなら50%くらいの確立で触れるようになった。

りんちゃんの「伝える力」

りんちゃんは、大きな目でじっと人の顔を見つめて気持ちを伝える。りんちゃんの気持ちを読み取ってあげたいと家族みんなが感じているので、「りんちゃんがこう言ってるよ」と通訳しながら会話がはずむという。西井さんは、どうしたらりんちゃんの警戒心を取り除けるだろうかとりんちゃんのことばかり考えるようになった。

「これは前の子とは違う感情です。りんには『伝える力』があると感じています。それほど鳴くわけではないのですが、じっと見つめられると、何を言いたいのか分かるんです」

りんちゃんはカメラ嫌いだが、雛人形を出した時、これは自分のものだと思ったのかベストポジションでポージングしてくれた。「どうせまた撮るんでしょ」という表情だったが、写真展に応募して採用されたそうだ。

西井さんは、先代の猫を亡くしてから約1ヵ月でりんちゃんを迎えた。「人によっては、早過ぎると思われる方もいるでしょう。でも、荒療治ですが、亡くなった猫の穴を埋めてくれるのは猫しかいないと思っています。悲しんでいる間にも毎日毎日、命は失われています。1匹でも多くの猫に家族が見つかればいいと願っています」

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ペットロスの人に次の子を迎える後ろめたさを感じないでほしいという思いから、西井さんがInstagramで同志を募って作った動画はこちら。

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