京都の世界遺産の寺、拝観料を苦渋の値上げ 境内広く文化財維持やコロナ対策に苦労も

浅井 佳穂 浅井 佳穂

 世界遺産の醍醐寺(京都市伏見区)がこの秋、拝観料を改定しました。料金表をよく見ると、一部の時期は値上げになるようです。その理由を醍醐寺の僧侶に聞くと、広大な境内や文化財を維持するための苦渋の決断であったことが分かりました。

 醍醐寺は、京都市東部にあります。平安時代の874(貞観16)年に、聖宝という僧侶が山上に小さなお堂を開いたことが起源とされています。現在では、山上の「上醍醐」と、麓の「下醍醐」に多くのお堂が建っています。

 醍醐寺は、これまで通常期と春秋期の二つの料金体系を持っていました。通常期は麓にある三宝院の庭園、伽藍(がらん)、霊宝館の3カ所を拝観できて800円ですが、訪れる人が多い春秋期は同じ条件で1500円にしていました。それを今回、一部見直したと言います。

 -拝観料は今回どのように変えましたか。

 醍醐寺の仲田順英統括本部長 「10月15日からの改定では『秋期』の設定を見直しました。3月20日から5月の大型連休までの『春期』、それ以外の時期を『通常期』としました」

 「改定後の通常期は三宝院庭園と伽藍(がらん)の2カ所で1000円となります。霊宝館への入館には別途500円以上の文化財維持寄付金をお願いします」

 昨年秋と今年秋では同額

 -値上げのように見えますが?

 「昨年秋の場合は、秋期の設定を設けていたので3カ所で1500円でした。昨秋と今秋では値段は同じです。」

 -秋期以外の時期はやはり値上げでは?

 「そうですね。秋以外では値上げに見えると思います。ですが、それはコロナ対策でもあるんです」

 -拝観料設定でコロナ対策とはどういうことですか?

 「今回の改定では、霊宝館を三宝院庭園や伽藍とは別の料金設定にしました。霊宝館で密にならない程度の入館者数を考えると、250人が一つの目安になります。250人を超えそうになると入館制限する場合も出てくるかもしれません。3カ所の拝観券を持っているのに霊宝館が見られない。せっかく来られた方に、そんな嫌な思いをさせる訳にはいきません。なので2カ所と霊宝館を別にしました。あくまでも来てくださる方の目線に立って考えた結果です」

 -そのほかにどのようなコロナ対策を?

 「従来していたことですが、三宝院の伽藍は障子を開けて換気を良くしています。霊宝館には、拝観者の体温を非接触で測る大型装置を導入しました。ほかにも、感染リスクの高い現金のやりとりは1カ所に集約するなどの対策を取っています」

 文化財は7万5千点以上

 醍醐寺の境内は200万坪と言われており、甲子園球場170個分に相当します。その広大な面積に、応仁の乱などの戦火を免れた京都府最古の五重塔(国宝)や平安後期建築の金堂(国宝)をはじめ90以上の建物が点在します。さらに奈良から明治時代に及ぶ古文書・経典を含む「醍醐寺文書聖教」など7万5千点以上の国宝・重要文化財の維持管理もしています。

 -拝観料収入はやはり重要ですか?

 「醍醐寺は長きにわたって皇室や貴族、将軍などの崇敬を集め、多くの寄進を受けてきました。そうした経緯もあり、普通のお寺と違って檀家(だんか)は多くなく、大型の墓地もないのです。法要でのお布施や拝観料は重要な収入の柱なのです」

 -拝観者は減っていますか?

 「減っています。しかし、コロナ禍の前から外国人の参拝者は少なく、国内の方ばかりだったので、インバウンドの減少による影響は少ないです」

 -醍醐寺は西国三十三所の札所でもあり、バスツアーなどでの参拝者が多いイメージあります。

 「現在バスツアーはほとんどありません。お参りの方が例年の8割程度だといいのですが、例年の6割程度だと伽藍や文化財の維持が苦しくなってきます」

 「多くの人にお参りに来てもらいたいとは思います。しかし、感染予防策も万全にしていかないといけない。今回の拝観料改定はそうした考えに立っています。ぜひとも安全にお参りしていただきたいと思っています」

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